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学長室から:大学案内

第21号 科学的ということ

2011年04月15日

「3.11」の大地震を引き金に、史上最大規模の大津波が発生し、それによる原子力発電所の事故、そのために起こった電力不足などの一連の危機は、多くの人命を奪い、財産を奪い、自然を破壊し、社会経済活動をマヒさせ、未だに多くの人々が安全を脅かされ不安の中で過ごしていらっしゃいます。
このような状況に陥ると、科学技術の無力さに悔しい思いを抱く人も多いことと思います。本学のように、科学技術にかかわる人材の育成と知の創造を使命とする大学は、謙虚に反省し、科学技術における教育研究のあり方を見直す必要もあるような気がします。
一方、人類の発展、文明の発展は科学技術の進歩に負うところが極めて大きく、今ここで科学技術を捨て去ることはできません。むしろ、科学技術を真に有用なものにするため、なお一層の発展を期することこそ、科学技術者の責務だと思います。

ところで、この度の震災、現在進行中の危機的状況を深刻にしている一つの要因は、科学技術文明の中にありながら、「科学的」な判断、行動が必ずしも十分ではないことにあるような気がします。「科学的」とは、どういうことでしょうか?私は、われわれ一人ひとりが、常に以下のようなことを意識しているかどうかだと思っています。

  1. 科学は万能ではない。科学的に説明できないことはたくさんある。
  2. 現在の科学は、多くの場合、限られた条件の範囲のことだけを対象としている。
  3. 事実(データ)に基づいて実証されていることだけが信頼できる。
  4. 一般に、ものごとや現象は、多数のパラメータあるいは要因が複雑に影響しあっているが、それらの全てのかかわりを説明できる科学は確立されていない。
  5. 人が作ったもの(人工物)あるいは技術は、想定された限られた条件の範囲でしか正常かつ有効に機能しない。
  6. 人は、経験したことのないことには極めて弱い。考えが及ばないし、考えようとしない。
  7. しかし、われわれが頼れる行動規範は科学的な知見に基づくしかない。占いやご神託などに頼るわけにはいかない。

宮古市鍬ケ崎地区角力浜町内会は、防潮堤を作らず、そのため日頃「津波が来たらいかに速やかに安全な場所に避難するか」という方針で、避難路や誘導標識などを整備し、実践的な訓練を行っていた。今回の津波では、約110名の住民のうち犠牲者は一人だけであったと報じられています。これこそ、本当に科学的な態度なのだと思いました。

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