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学長室から:大学案内

平成26年度 学部入学式

2014年4月4日
福田 喬

電気通信大学へのご入学、誠におめでとうございます。来賓の学園活動後援会会長の長友貴樹調布市長、本学同窓会目黒会の安田耕平会長、そして列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎致します。

ご家族の皆様のお慶びもひとしおのことと心からお祝いを申し上げます。会場の都合で、スクリーン越しのご挨拶となりますことをお許しください。

本日は雨模様の天気ではありますが、桜の花は昨日までの雨にもめげず皆さんを待っていてくれたようですし、正門を入られたら、歓迎の噴水とともに、植え込みの中の色とりどりの花々が皆さんを迎えてくれたことと思います。これらの花々は、調布市のボランティアグループの皆様が1年中お世話してくださっています。
その地元調布市と本学は友好協力協定を結んでおり、市や市民の皆様といろいろな交流があります。皆さんのご父兄に会員となっていただき、皆さんの大学での活動を支援していただいている「学園活動後援会」の会長を調布市長にお願いしているのもその一環です。皆さんも、地元調布の皆さんとの交流に積極的に参加してください。

また、正面の植え込みを少し注意深く見ていただくと、まだ背の低い2本の植木があるのに気付かれると思います。それらはニュートンのリンゴの木です。ニュートンが思索中にリンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したという逸話は有名で、そのことからイギリス・ウールスソープにあるニュートンの生家の庭のリンゴの木が接ぎ木されて、科学の振興・啓発のために世界各地に分譲されています。本学でもそれを譲り受けて先月末に植樹したところです。3年から4年後には実をつけるだろうということですので、皆さんが在学されている間に実をつけたニュートンの木を目にすることができるかもしれません。どうか大事にしてください。
ただ、この木は、収穫前に実を落としてしまう品種だそうです。ですからリンゴの実が落ちるのを見て、という話が生まれたようです。実が落ちない品種だったら万有引力の法則の発見はどうなっていたのでしょうか。

ニュートンと言えば、皆さんがこれから少し苦労するかもしれない微分積分学の確立に大きく貢献した人でもあります。微積の授業に苦労したり行き詰ったりしたとき、このニュートンのリンゴの木を眺め思索にふけってはいかがでしょう。

さて、今年の学部入学者は総勢823名で、そのうち女性が109名です。女子学生比率は13.2%となります。本学は他の工学系学部と同様に永らく女子学生比率は低い値にとどまっていて、1つの学年の女子入学者が100名を超えたのは昨年が初めてでした。今年はそれに続いてのことでほっとしています。
ただし、もっともっと女子学生比率を高める必要があると考えています。それは、私たちの社会は、ますます科学技術を基盤とする傾向を強めているからであり、科学技術に関する所有知の多寡が、日常生活や職業生活の質に大きく影響を与えると考えられるからです。専攻分野に性別による大きな差があると、社会も、様々な局面で影響を受けることになり、持続的発展を図る上で決して好ましいことではありません。近い将来には本学における女子学生比率を20%程度にまで上げたいと望んでいます。

ところで、ここで本学の大学名称について少し述べさせてください。それは本学のルーツに由来しているからです。

話はずいぶんと遡りますが、1912年(大正元年)に、北大西洋でイギリス客船タイタニック号が痛ましい海難事故に遭いました。皆さんも聞いたことがおありと思います。世界では、この海難事故を契機として、海上交通の安全確保の重要性が認識され、特定船舶に無線通信設備の設置を義務付けようとする動きが起こります。日本も少し遅れてその動きに呼応し、1918年(大正7年)12月8日に現在の東京都港区に無線通信士の養成機関を創設しました。それが、社団法人電信協会による「無線電信講習所」です。その後、この講習所は逓信省所管となって官立化し、次いで文部省へ移管され、1949年(昭和24年)の国立学校設置法施行により「電気通信大学」の名で新制大学として開学しました。これが本学の来歴です。すなわち、大学名称の「電気通信」はそのルーツとなる無線通信士養成機関の名称の「無線電信」を引き継いだものです。ですから、当然のことながら、地名を含んでいません。これは、学部を持つ国立大学の中で唯一のものです。

この開学時の趣旨を引き継いだ大学名称ゆえに、本学は電気・通信の分野に特化した大学と思われがちですが、開学後の高度経済成長と、それと歩を同じくする高度情報化社会の進展に合わせて専攻分野の拡充がなされ、今では、情報・電気・通信を中核としつつ、物理工学、材料科学、生命科学、光科学、エレクトロニクス、ロボティクス、機械工学、メディアなど、理工学の基礎から応用まで、広範な分野で教育と研究を行っているのはご存知のことと思います。

このような理由から、本学の創立記念日は前身の無線電信講習所創設日の12月8日となっています。そして、昨年2013年(平成25年)には創立95周年を祝い、4年後の2018年(平成30年)には創立100周年を迎えることになります。 本学は、その創立100周年までに目指すべき大学像を「UECビジョン2018 ~100周年に向けた挑戦~」として掲げています。このビジョンの根幹を成す考え方は、「人類の持続的発展のためには、20世紀型の物質文明から脱却して人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる社会とする必要があり、そのためには『人と人』、『人と自然』、『人と社会』、『人と人工物』のコミュニケーションを基軸とするイノベーションが不可欠である」との認識に基づいています。本学は、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学技術体系を、「さまざまな事象を広い意味のコミュニケーションの視点から捉え、関連する個別の学問、要素技術を総合的に適用して問題解決を図る」との立場から「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を行うことを宣言しています。

ところで、ここで言うイノベーションとは、革新とか、刷新とか、新機軸といった意味ですが、皆さんは、そういったイノベ―ションを生み出す人材に最も必要とされるものは何だと思いますか。少し前、Harvard Business School(ハーバード経営大学院)の先生がこれこそイノベーションだと認められる革新的な製品やサービスを開発した人約100人にインタビューして調べたところ、最も必要とされる資質は「イノベーションに取り組む勇気」であるという結論になったそうです。そしてその勇気は「リスクをとる勇気」にも通じているとのことです。

リスクとは危険そのものですから、リスクをとると失敗するかもしれないという不安に駆られるのが常ですが、そんな不安を乗り越える勇気が必要ということです。野球でバッターボックスに立った時、空振りを恐れてバットを振らなければ、ホームランはおろかヒットさえも決して打つことはできないというのは自明でしょう。

皆さんのような若者の最大の特権は失敗しても許されるということです。学生の間にこそ、失敗を恐れず、リスクをあえてとる勇気を身に付け、いろいろなことに挑戦してください。

本学では、いろいろなことへのチャレンジを志向する人向けに、今年度から「UECグローバルリーダー育成プログラム」という学部・修士一貫教育コースを開始します。このプログラムではコース学生となるための条件がありますが、それをクリアした人に対して、通常よりも半年ほど早く研究室配属や卒業研究着手を認め、学部卒業までに生まれる半年程のギャップ期間を利用して、短期留学やアカデミックインターンシップなどへのチャレンジができるオフキャンパス研修(学外研修)を組込んだ弾力的なカリキュラムを提供することになっています。これによって、基礎学力の上に深い専門知識と創造力を身に付け、幅広い視野と世界の人々と交流できるコミュニケーション能力を持ち、グローバル化の時代を牽引し未来を切り開いて行くことのできる逞しい人材を育成しようとするものです。この学部・修士一貫コースの詳しい説明はオリエンテーションなどでなされると思いますので、よく検討して多くの人がトライしてくださることを期待しています。

話は変わりますが、昨年度文部科学省は、世界水準の優れた研究大学群を増強して我が国全体の研究力強化を図ることを目的とした「研究大学強化促進事業」を創設しました。そして全国の国公私立大学および大学共同利用研究機関、合わせて約780の大学・研究機関から、研究力に関する客観的指標に基づいて19大学と3研究機関を集中的に支援する対象として選びました。本学は、その19大学の1つに選ばれて、世界トップレベルとなることが期待できる大学の一つであるとの評価を受け、今後複数年に渡って特別経費による支援を受けることになっています。本学は今、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化と、その研究力を背景とした教育力の強化に取り組んでいます。

ところで、これまで幾度か「UEC」という略称を使ってきましたが、この「UEC」とは、本学の大学名称の英語表記、The University of Electro-Communications、の頭文字からなる略称です。しかしそれだけではなくて、UECビジョン2018を一口で表すキャチフレーズの頭文字ともなっています。

そのキャッチフレーズは、

Unique & Exciting Campus

です。

電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな(Unique)若者が集い、楽しくてわくわくする(Exciting)新しい知と個性を育てる学園(Campus)を目指していますという意味です。ぜひ覚えておいてください。そして、このUnique & Exciting Campusを合言葉に、充実した楽しい学園生活を送ってください。

最後に、重ねて皆さんのご入学をお祝いし、私の歓迎の言葉と致します。

ありがとうございました。

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