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学長室から:大学案内

平成27年度 大学院入学式

2015年4月6日
福田 喬

皆さん、こんにちは。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。ご来賓の本学同窓会目黒会の野々村欽造会長、列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎いたします。

ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

さて、皆さんをお迎えする今日は昨日と違って天気になりました。昨日は春雨が時雨れる一日でしたが、桜の花はそれにもめげず皆さんを待っていてくれたようですし、正門を入られたら、歓迎の噴水とともに、植え込みの中の色とりどりの花々が皆さんを迎えてくれたことと思います。

ところで、本日お迎えしたのは、情報理工学研究科博士前期課程への入学者382名、同研究科博士後期課程への入学者25名、情報システム学研究科博士前期課程への入学者105名、同研究科博士後期課程への入学者13名の皆さんです。両研究科を合わせますと、博士前期課程487名、博士後期課程38名の合計525名となります。また、それらの中には、留学生の方が54名、社会人の方が12名いらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っております。

本学は、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」を根本理念としています。そして、その理念のもとで、創立100周年、それは3年後の2018年に迎えることになりますが、それまでに目指すべき大学像を「UECビジョン2018 ~100周年に向けた挑戦~」として掲げています。ビジョンの根幹を成す考え方は、「人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる持続発展可能な社会の実現には、人、自然、社会、人工物に関する正しい理解の下、それらの間の、もの、エネルギー、情報の交換を含む適正な相互作用に基づく価値の創造、イノベーションが不可欠である」との認識に基づいています。本学は、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学技術体系を、「さまざまな事象を広義のコミュニケーションの視点から捉え、関連する個別の学問、要素技術を総合的に適用して問題解決を図る」との立場から「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を行うことを宣言しています。

ところで、最近注目を集めているものとして「モノのインターネット(Internet of Things、略してIoT)」という言葉をお聞きになったかと思います。IoTに相当する概念はすでに1990年代にあったそうですが、クラウドやソーシャル、ビッグデータなどに続く重要なトレンドとして今再浮上してきています。

IoTの概念の詳しい説明はここでは省きますが、簡単に言えば、いろいろなモノに通信機能を持たせて、インターネットなどに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、環境遠隔計測などを行おうとするものです。私は、本学がビジョンの中で提唱している「総合コミュニケーション科学」は、このIoTの概念をもすっぽりと包含してしまっていて、本学のコア・コンピタンスは、最新の時流をも従えてしまうような誇るべき普遍性を有していると思います。

ところで、技術開発におけるスタイルには、大きく分けて2つあると言われています。「継続発展型」と先ほどから述べている「イノベーション型」です。

前者の「継続発展型」については、製造業などがそれだけに基づく技術開発だけに頼っていると、例えば半導体製造や液晶製造などのように、厳しい消耗戦に突入してしまうと言われており、産業の根幹的で継続的な振興を支える研究開発は「イノベーション型」でなければならないと指摘されています。

このイノベーションという事柄に関して、Harvard Business School の Clayton M. Christensen 達が「イノベータのDNA」という分析本を著しています。革新的な製品やサービスを開発した100名近いイノベータにインタビューしそれをまとめたもので、イノベータがイノベーションを生み出していくのに必要とされるスキルが述べられています。

それによると、まず「5つの基本的なスキル」が必要で、1つ目は「質問力」、それは、現状に異議を唱えることも含めて、質問によって物事の探究に情熱を燃やすためのスキルです。次に「観察力」、観察を通して新しいやり方のもとになる洞察やアイデアを得るためのスキルです。3つ目は「ネットワーク力」または「人脈力」、多様な背景や考え方をもつ人たちとの幅広いネットワークを通じて、アイデアをみつけたり試したりするためのスキルです。4つ目は「実験力」で、将来成功する方法について手がかりを得るには実験に勝る方法はないからです。そして最後5番目のスキルは「関連づけて思考する力」で、一見無関係に思える物事を結びつけて独創的なアイデアを生み出して行くというスキルです。そしてこの最後の「関連づけ思考」を誘発するために、イノベータは前に述べた4つのスキル、「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」を駆使して、イノベーティブなアイデアのもととなる在庫を増やしているのだとその本では分析しています。

Christensenらの著書には、イノベータがこうした行動をとれるのは、次に言うところの「イノベーションに取り組む勇気」を持っているからにほかならないとも述べられています。
その勇気とは、まず、「現状に異議を唱える勇気」、現状を変えたいという意思と言っても良いかもしれません。そしてもう一つが「リスクをとる勇気」です。失敗するかもしれないという危険性を認識した上で自らの責任で果敢にリスクをとるということであり、スマート・リスクとも言われています。

現状を変えたいという意思を常に持ち、「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」を駆使していろいろなアイデアを蓄積し、あえてリスクをとる勇気を発揮できる者がイノベータとなり得る、ということのようです。

皆さんの多くは、現時点では、ご自身の素材としての価値を十分には認識できていないかもしれません。が、皆さんは確実に社会のリーダーとなる人材です、いや、社会のリーダーとなって頂かなくてはなりません。どうか社会の中で中心的役割を担い始める十年先に、リーダーとして必要とされる知識体系や考え方を、在学中に準備しておいてください。そのためにも、高い専門性獲得は当然のことながら、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる語学力、リテラシー、説得力、企画力、発信力、感化力などの人間力を涵養し、身につける必要があります。加えて、先に述べたイノベータになるための5つのスキルとスマート・リスクをとる勇気を獲得してください。これらこそが大学院で身につけるべき高度な教養というもので、専門性を太く高くするための欠くことのできない重要要素だと思います。大いに研鑽してください。

ところで、本学は、多数の大学、企業、行政組織が参画する産学官連携の組織であるスーパー連携大学院コンソーシアムに加盟しており、そのコンソーシアムが提供するスーパー連携大学院プログラムに参加しています。このスーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学、北海道から九州まで広域に分布する6大学ですが、それが連携して推進しているイノベーション博士を養成するプログラムで、カリキュラムの構築・実施からプログラム修了生のキャリアパスまで、コンソーシアム正会員である大学、企業、行政がそれぞれ対等な立場で共同参画して創り上げているプログラムです。その目的は、国際社会においてリーダーシップを発揮し、イノベーションによる価値の創造を担うことができる「志」の高い博士を育成することにあり、博士前期課程および後期課程を含む5年一貫の教育プログラムです。5年一貫ですが、後期課程からの編入履修のルートも用意されています。現在、正会員6大学から併せて9名の学生が後期課程履修生となっていて、企業との共同研究に基づく博士学位研究に取り組んでいます。
この式典の後に開かれる大学院オリエンテーションの場で詳しい説明がされると思いますので、よく検討していただいて多くの方がこのスーパー連携大学院プログラムにトライされることを期待しています。

話は変わりますが、本学は、2013年に文部科学省が創設した「研究大学強化促進事業」において、支援対象19大学の1つに選ばれて、世界トップレベルとなることが期待できる大学の一つであるとの評価を受け、複数年に渡って特別経費による支援を受けることになりました。本学は今、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化と、その研究力を背景とした教育力の強化に取り組んでいます。

その場合、大学の研究活動は、皆さんのような大学院生の力によってかなりの部分、支えられています。電気通信大学の大学院を選んでくださったのですから、本学の存在価値を高めることが、皆さんのためでもあることを認識して、大学院生としての本分に邁進してください。
前期課程に入られた皆さんも、次は後期課程への進学にぜひ挑戦してくださることを願っております。

さて、冒頭に申しましたように、本学は創立100周年までに目指すべき大学像を「UECビジョン2018」と名付けたビジョン中で打ち出していますが、それを一口であらわすスローガンを

Unique & Exciting Campus 

としています。

電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな、Uniqueな、若者が集い、楽しくてわくわくする、魅力あふれる、Excitingな、環境で学び、新しい価値を生み出し、世界を驚かすような輝く個性が育つ学園、Campusにしたいという願いを表すスローガンです。

このスローガンの頭字語UECは本学の英文名称のそれと同一です。今後は、このスローガンとともに、UEC Tokyo というだけで世界中から電気通信大学のことだと分かってもらえる大学にしたいと思っています。
本日ご臨席のご家族やご関係の皆様におかれては、引き続き、本学へのご支援、応援を頂けますようお願い申し上げます。

以上、525名の皆様の大学院ご入学をお祝いするとともに、明日を担う皆様のご活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。

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