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学長室から:大学案内

平成28年度 大学院修了式

2017年3月24日
福田 喬

情報理工学研究科および情報システム学研究科修了生の皆さん、修士並びに博士の学位取得おめでとうございます。
ご来賓の本学同窓会目黒会 野々村欽造 会長、並びに本学名誉教授の先生方、そして列席の役員、副学長、各部局長、さらに教職員、在校生とともに、修士論文あるいは博士論文のための研究に取り組まれた努力と成果に心から敬意を表します。
また、参列されているご家族、ご友人、ご関係の皆様に心よりお慶び申しあげます。

本日、修士号を授与された方は、情報理工学研究科が351名、情報システム学研究科が95名の合計446名です。博士号を授与された方は、情報理工学研究科が16名、情報システム学研究科が9名の合計25名です。なお、本学では、博士号学位授与を6月、9月、12月の各期でも行っており、今年度(平成28年度)課程博士号を授与された方はトータルで46名となります。また、博士号授与については、課程に在籍せずに学位申請論文を本学に提出し、審査を経て学位が授与される、課程修了によらない学位申請、通称、論文博士申請、というシステムもあり、今年度は1名の方がこの論文博士学位を授与されています。
したがって、本学に大学院が開設されて以来の累計をお示ししますと、修士号を授与された方は12,831名、博士号を授与された方は、課程博士898名、論文博士138名、合計1,036名となっています。

ところで、今年度修士号を取得された446名の中には37名の留学生の方が、博士号を取得された46名の中には8名の留学生の方が、それぞれいらっしゃいます。言葉はもちろんのこと、文化や制度、習慣や常識など様々な面で大きく異なる環境の下で研究に取り組まれるのは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて学位を取得されたことに対して、皆さんを称えたいと思います。
さらに、今年度の学位取得者の中には、修士で1名の、博士で13名の社会人の方がいらっしゃいます。社会に出られた後に学位取得を目指して大学院に戻ろうと決断された理由はいろいろであろうと思いますが、社会人としての立場を維持しつつ学位研究を完遂されて、見事に学位を取得されたそのご努力に敬服するとともに、改めてお祝い申し上げます。

ところで、以下、少し忠告めいた言葉も続けさせてください。
まず、先ほど皆さんにお渡しした修士や博士の学位記は研究者、開発技術者のリーダーたる品質保証書です。皆さんの資質・能力・成果に基づく厳しい審査の下で、それを認め授与いたしました。しかしです。学位記には保証期間や有効期間は書いてありません。皆さんの学位記は、実質的には、現時点での品質保証書であって、永遠に保証できるとは限らないのです。
皆さんが学位研究を通じてあげられた研究成果は、今後、時の試練を経て、いっそう輝き続けるもの、あるいは陳腐化していくものに分かれると思います。しかし、成果そのものが時とともに陳腐化したとしても、それを作り上げる過程で傾けた努力や体験した悩みや成し遂げたときの喜びは皆さんの人格を磨いてきたはずです。これからの人生で直面する苦しいときや追いかけるべき課題を見失ったときには研究論文の完成に費やした研鑽の日々を思いだして、チャレンジする強い意志と信念を呼び戻していただきたいと思います。学位記は、ある意味、その呼び戻しのためのお守りのようなものであって、専門を深く穿ち、他人が成し得なかった独創的な仕事を成し遂げたという誇りと自信を呼び戻して、力強い推進力を生み出すためのものと思ってください。そして、常に学位再審査を受けるつもりで、切磋琢磨に努めてください。

学位研究に全霊を注いでこられたこれまでの年月、みなさんは研究室を中心に、指導教員や多くの先輩・後輩・友人に囲まれて、成果を上げてきたのではないでしょうか。もちろん回りの力というより、自らの力のみで優れた成果を上げてきたと言いきれる人もいるかもしれません。しかし、研究室という環境の、例えば太陽の光を受けることによって、お月さまのように輝いていたという人が、多いのではないでしょうか。いくら美しくても月は自ら輝くことはできないのです。したがって、最初は、月のように太陽の光を受けて輝くことを体験し、いつか恒星のように自ら輝くことを目指して、大学院における研鑽を積み、そしてついに、自力で輝く力を学位授与という形で認められたというのが、多くの場合ではないでしょうか。これからは臆することなく、自ら輝き、その光で社会全体をよきものに変える力としていただきたいと思います。それがみなさんに課された使命に他なりません。

ところで、皆さんは、高度で先端的な専門性の高い研究の成果を、修士論文や博士論文としてまとめられました。すでにその分野の専門家です。しかし、ある意味では、先端的ではあるが、狭い専門領域の中での仕事である場合が多いと思われます。したがって、皆さんのこれからの社会での役割を考えたとき、これまで取り組んできた専門領域から飛び出す柔軟性と果敢な勇気を持てるかどうかが、鍵のように思います。当然の事ですが、世の中で解決が望まれている問題・課題は、学問の領域とは無関係に存在します。学問の発展のために解決すべき問題や課題があるのではありません。
一般的に、しばらく大学等での研究生活をエンジョイした者は、ややもすると自分の専門や学問分野にこだわりがちになりますが、実世界の現象は、それが自然現象であれ社会現象であれ、一つの学問分野でまかないきれるほど単純ではありません。したがって、ある問題・課題を解決しようとする場合、解決のためのアクションやプロセスにはなんらの制限も設けるべきではありません。ところが、人は、ある専門分野に秀でれば秀でるほど、専門性を持つことそれ自身がその専門分野を超えるということに対して障害となる可能性があります。 このことは、ある種の箴言として心に留めておいてもらえると嬉しいです。
ここでもう一度、学位の意味を考えてみましょう。学位は、その根拠となった学位論文が扱う課題に対する知識や、扱った課題に関する解決の結果だけを問うものではありません。根拠となった学位論文を一番の評価資料としてはいますが、一般的な意味での課題解決能力、それを、評価し保証したものと考えるべきです。したがって、学位を持つ人、とくに最高学位の博士号を持つ人は、自分が経験したことのない新しい課題にも取り組んでいける能力を有しているとみなすべきです。
すなわち、博士号の授与にあたっては、何ができるか又はできたかではなく、課題にどう取り組むかをプランする能力とそれを遂行してゴールに到達する能力が評価されているのだと理解してください。その意味からも、本日修士号をとって社会に出られる方は、そのうちに、博士号をとるために本学に戻ってこられることを期待しております。

さて、本日の博士後期課程の学位記授与の後で、「スーパー連携大学院コンソーシアムによるイノベーション修士サーティフィケート」の授与がありました。このことについて、すこし説明をしておきます。
スーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学、北海道から九州まで広域に分布する6大学ですが、それが連携して推進しているイノベーション修士、イノベーション博士を養成する特別プログラムのことです。連携している各大学の大学院生の中から、学位取得に挑戦して修士又は博士になったら、企業や行政機関などアカデミア以外の広い分野で活躍することを志す人を、プログラム受講生として募集し、志願する学生の中から志の高い人を審査した上で受け入れるというプログラムです。
このプログラムには、連携大学だけでなく連携する企業や行政機関等の協力を得て、幅広い知見を得るためのカリキュラムが用意されています。受講生はそれを履修して単位を取得し、一定以上の成績を収めなければなりません。また、学位論文のための研究は、産業界や大学以外の研究機関との共同研究として行われるものでなければなりませんし、その審査は、在籍大学の教員以外に他大学の教員や産業界の専門家を含む委員会で行われることになります。
そして学生は、在籍する各大学での審査と、スーパー連携大学院での審査の両方に合格すると、各大学から授与される修士号、博士号のほかに、イノベーション修士サーティフィケート、イノベーション博士サーティフィケートが授与されることになります。これらサーティフィケートは、実社会で創造的能力を発揮し活躍できる人材であるとの保証書であり、もって、現代社会が必要としているイノベ―ションの創出、それを担う人材の育成という機能を、このプログラムは担っています。
本日はそのイノベーション修士の資格を得た3名の方に、それを証明する「イノベーション修士サーティフィケート」を授与した訳です。本学はこのスーパー連携大学院プログラムを更に高度化し、実社会での人材ニーズに応えてゆきたいと考えています。

最後に、来年のことを述べておきます。
ご存知のように、電気通信大学は、来年2018年に、創立100周年を迎えることになります。この記念すべき節目において来し方を振り返るとともに、次の節目に向けてその存在価値をさらに高めるべく、いろいろな視点に基づく機能強化のための改革に取り組んでいます。先ごろ竣工した100周年キャンパス整備事業もそうですし、大学の財政基盤をより強固にして、学生諸君への奨学金や国際交流支援などを充実させたいとするUEC基金もそうです。
また、100周年とは独立ですが、大学と卒業生の絆をさらに強固にするために、生涯メイルシステムも起動しています。このシステムは、卒業生・修了生・退職教職員のすべてにUEC生涯メイルアドレスを無料で提供するもので、生涯にわたり、様々な電通大関連情報の配信や、恩師、同窓生、友人などからの連絡を、受け取ることができるメイル転送サービスです。大学を去られる前に、ぜひ、生涯メイルへの登録を済ませておいて頂けるようお願いいたします。
先のUEC基金への募金にもぜひご協力ください。ただ、学生時代に貸与型奨学金を受けていて、その返済が始まるので寄付は無理だという方もおいででしょう。そのような場合には、UEC基金への呼びかけ活動に、ぜひご協力いただきたく、お願いいたします。

電気通信大学は、新しいスタートラインに立つ皆さんをこれからも応援していきます。卒業後も、ときに母校を訪ね、電気通信大学を人生の基軸の一つとして、多くの友人や教職員と語らい、また、同窓会活動の場、生涯の学習の場として、積極的に活用してください。そして、母校を温かく見守り、今後も、本学の教育研究活動の強化発展に向け、ご支援いただけますようお願いいたします。

では、100周年を迎える来年2018年の記念式典で皆さんと再会して、皆さんの活躍、電通大の発展、社会の持続的振興を共に喜び合えることを期待し、私のお祝いのことばとさせて頂きます。

本日は、修士並びに博士の学位取得、誠におめでとうございます。

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