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学長室から:大学案内

平成29年度 学域(学部)入学式

2017年4月6日
福田 喬

皆さん、おはようございます。

電気通信大学へのご入学、誠におめでとうございます。

来賓の学園活動後援会会長をお引き受けいただいている長友貴樹調布市長、本学同窓会目黒会の野々村欽造会長、そして列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎致します。

ご家族の皆様のお慶びもひとしおのことと心からお祝いを申し上げます。会場の都合で、スクリーン越しのご挨拶となりますことをお許しください。

このところ、ようやく春らしい天候となり、キャンパス正門のさくらも満開近く、植え込みの中の色とりどりの花々もちょうど開花の時期で、皆さんの入学に合わせてくれたかのようです。

これらの花々は、調布市のボランティアグループの皆様が1年中お世話してくださっています。その地元調布市と本学は友好協力協定を結んでおり、市や市民の皆様といろいろな交流があります。皆さんの保護者の方に会員となっていただき、皆さんの大学での活動を支援していただいている「学園活動後援会」の会長を調布市長にお願いしているのもその一環です。皆さんも、地元調布市の方々との交流に積極的に参加してください。

さて、今年の情報理工学域への新入学生数は745名で、情報理工学部3年生への特別編入学生数は37名です。合わせて782名の方々を本日お迎えしました。その782名のうち93名の方が女性で、女子学生比率は11.9%となります。残念ながら、昨年度の値より少し低い値となってしまいました。もっともっと女子学生比率を高める必要があり、2~30%程度にまではなってほしいと望んでいます。それは、私たちの社会は、ますます科学技術を基盤とする傾向を強めていることから、科学技術に関する所有知の多寡が、日常生活や職業生活の質に大きく影響を与えると考えられるからであり、また、均整の取れた産業社会の発展のためにも理工学分野における女性の活躍が欠かせないからです。

782名の入学者の中には、また、27名の留学生の方、17名の社会人の方がいらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っています。

ところで、ここで本学の大学名称について少し述べさせてください。それは本学のルーツに由来しているからです。

話はずいぶんと遡りますが、1912年に、北大西洋でイギリスの大型客船タイタニック号が痛ましい海難事故に遭いました。皆さんも聞いたことがおありと思います。世界では、この海難事故を契機として、海上交通の安全確保のために特定船舶に無線通信設備の設置を義務付けようとする動きが起こります。日本もそれに呼応して、無線通信士のしっかりした育成をということで、1918年に現在の東京都港区に養成機関を創設しました。それが、社団法人電信協会による「無線電信講習所」です。その後、この講習所は逓信省、今の総務省に相当しますが、そこの所管となって官立となり、次いで文部省へ移管され、1949年の国立学校設置法施行により「電気通信大学」の名で新制大学として開学しました。これが本学の来歴です。
すなわち、大学名称の「電気通信」はそのルーツとなる無線通信士養成機関の名称の「無線電信」を引き継いだものです。ですから、当然のことながら、地名を含んでいません。これは、学部を持つ国立大学の中で唯一のものです。

この開学時の趣旨を引き継いだ大学名称ゆえに、本学は電気と通信の分野に特化した大学と思われがちですが、開学後すこししてから迎える高度経済成長とそれと歩を同じくする高度情報化社会の進展に合わせて、専攻分野の整備・拡充がなされ、今では、情報・電気・通信を中核としつつ、物理工学、材料科学、生命科学、光科学、さらにエレクトロニクス、ロボティクス、メディアなど、理工学の基礎から応用まで、いわゆる情報理工学の広い分野で教育と研究を行っています。

このような歴史を踏まえて、本学の創立記念日は前身の無線電信講習所創設日の12月8日となっています。そして、来年2018年には創立100周年を迎えることになります。

本学は、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」を根本理念としています。そして、その理念の下で、「人類の持続的発展のためには、前世紀型の物質文明から脱却して人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる社会とする必要があり、そのためには『人と人』、『人と自然』、『人と社会』、『人と人工物』の間の相互のコミュニケーションを基軸とするイノベーションが不可欠である」と認識しその実現を目標としています。そして本学は、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学技術体系を、「さまざまな事象を、広い意味のコミュニケーション、この広い意味のコミュニケーションとは情報やエネルギーやものを介した相互作用と言い換えることもできますが、そういった広義のコミュニケーションの視点から様々な事象を捉え、関連する個別の学問、要素技術を総合的に適用して問題解決を図る」との立場から「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を行うことを宣言しています。

ところで、ここで言うイノベーションとは、20世紀の初めごろ、オーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターという人が初めて定義した言葉です。日本では、1958年の経済白書で取り上げられ、「技術革新」と訳されています。でも今考えるとこの訳語は少なからず狭い表現となっていて、今は、革新とか、刷新とか、新機軸といった広い意味で理解されており、経済発展の要となる用語の一つとなっています。
そこで、皆さんは、そういったイノベ―ションを生み出す人材に最も必要とされる資質は何だと思いますか。少し前、Harvard Business School(ハーバード経営大学院)の研究者が、これこそイノベーションだと認められる革新的な製品やサービスを開発した人約100人にインタビューして調べたところ、最も必要とされる資質は「イノベーションに取り組む勇気」であるという結論になったそうです。「イノベーションを生み出すのに必要なのはイノベーションに取組む勇気だ」とは分かったようで分からない話ですが、「リスクをとる勇気」と言い換えると分かり易いのではないでしょうか。
リスクとは危険そのものですから、リスクをとると失敗するかもしれないという不安に駆られるのは当然ですが、物事を成功に導くには、そんな不安を乗り越える勇気が必要だということです。野球でバッターボックスに立った時、空振りを恐れてバットを振らなければ、ホームランはおろかヒットさえも決して打つことはできないというのは自明でしょう。

米国の教師であり、社会哲学者であり、技術者・発明家でもあったチャールズ・ケタリングという人が言っています。「失敗する事を恥ずべきではなく、その原因を明らかにする為にあらゆる失敗を分析すべきである。失敗するという事はこの世で重要な教育科目の一つなのだ。」と。 また、ハーバード大学卒の喜劇俳優として有名なジャック・レモンは、「失敗自体が妨げになることはほとんどない。問題なのは失敗することへの恐れである。」と言っています。

皆さんのような若者の最大の特権は失敗しても許されるということです。学生の間こそ、失敗を恐れず、リスクをあえてとる勇気を身に付け、いろいろなことに挑戦してください。それが、将来、イノベーションを生み出す仕事をするための、人材となるための基盤になると思います。

本学では、いろいろなことへのチャレンジを志向する人向けに、「UECグローバルリーダー育成プログラム」という学域・修士一貫教育コースを開設しています。このプログラムではコース学生となるための条件がありますが、それをクリアした人に対して、通常よりも半年ほど早くに研究室配属や卒業研究着手を認め、学部卒業までに生まれる半年程のギャップ期間を利用して、短期留学やアカデミックインターンシップなどへのチャレンジができるオフキャンパス研修(学外研修)を組込んだ弾力的なカリキュラムを提供しています。これによって、基礎学力の上に深い専門知識と創造力を身に付け、幅広い視野と世界の人々と交流できるコミュニケーション能力を持ち、もってグローバル化の時代を牽引し未来を切り開いて行くことのできる逞しい人材を育成しようとするものです。この「UECグローバルリーダー育成プログラム」の詳しい説明はオリエンテーションの場でなされると思いますので、よく検討して多くの人がトライしてくださることを期待しています。

ところで、本学電気通信大学の英語名称は、The University of Electro-Communications です。頭文字からなるUECを略称としています。先ほどの「UECグローバルリーダー育成プログラム」の「UEC」もこの意味です。
そしてこの頭文字に合わせて、Unique & Exciting Campusというスローガンを私たちは作っています。「電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな、Uniqueな、若者が集い、楽しくてわくわくする、Excitingな、新しい知と個性を育てる学園、Campus、を目指します」という意味です。 覚えておいてください。

さて、本学は、冒頭申しましたように、来年2018年に創立100年を迎えます。この記念すべき節目の年に向けて数年前から、記念シンポジウム等の冠イベントの開催や記念募金の設立、記念誌や記念式典の準備等を進めて参りました。なかでも大きな事業の一つは、この調布キャンパスの隣にある小島町地区を再開発して100周年キャンパスを整備したことです。そこには職員宿舎と、学外の企業・機関に入居してもらい共同研究を通じて「新しい価値を共創する」場となることを目指す共同研究棟、さらに男女合わせて400室の学生宿舎を建設しました。特にこの学生宿舎は、留学生と日本人学生が混住するタイプであり、安心して勉学に打ち込める生活の拠点となると同時に、グローバル化を進めるコミュニケーションづくりの場となることを願っています。

このキャンパスには「UEC Port」というニックネームが付いています。このUEC Portとは、大学のスローガンを組み入れた「Unique & Exciting Campusの港」を意味し、電気通信大学を訪れる全ての人々にとっての玄関であると共に、大学が目指す、人と人、人と自然、人と社会、人と人工物が創り出す豊かな総合コミュニケーション科学の発着点の場であり続けたいという思いを込めて命名したものです。
更なる飛躍を目指す拠点としてこのUEC Portを活用して、教育研究の質をより一層高め、社会から信頼される大学として、人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる持続発展可能な社会の実現にむけた役割を果たしてゆく所存です。
本日ご臨席のご家族やご関係の皆様におかれては、引き続き、本学へのご支援、ご協力を頂けますようお願い申し上げます。

最後に、本学にはおよそ400名の教員とおよそ150名の職員、そして、皆さんを含めておよそ5,000名の学生がいます。在学中に、いろいろな人と出会って生まれる人間関係は、将来きっと皆さんの人生を彩り深いものにすることでしょう。勉強や研究の場でつながりを持つ人のみならず、課外活動やその他のいろいろな出会いを大切にし、自ら進んで人間関係を広げ深めていって欲しいと思います。そして、スローガンUnique & Exciting Campusを合言葉に、充実した楽しい学園生活を送ってください。

以上、782名の皆さんのご入学をお祝いするとともに、失敗を恐れずいろいろなことに果敢に挑戦する逞しい人材として成長されることを祈念し、私の歓迎の挨拶とさせて頂きます。

本日は、誠におめでとうございます。

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