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学長室から:大学案内

平成31年度 大学院入学式

2019年4月4日
福田 喬

皆さん、こんにちは。

天の配剤とも思える先週後半からの寒気団のお陰でしょうか、キャンパス内の桜は、皆さんを祝うために、満開を維持して待っていてくれました。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。
ご来賓の本学同窓会目黒会の 野々村欽造 会長、列席の役員、副学長、各部局長、並びに、全教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎いたします。
ご家族の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

本日はここに、大学院情報理工学研究科博士前期課程への入学者545名と、博士後期課程への入学者49名、総勢594名の皆さんをお迎えしております。
その中には、博士前期課程で95名、博士後期課程で18名、他大学を卒業あるいは修了して、本学へ来てくださった方がいらっしゃいます。本学の大学院を選んでくださったことを、大変嬉しく思います。
また、博士前期・後期併せて、留学生の方が58名、社会人の方が11名いらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を、期待しています。

ここで、本学大学院情報理工学研究科のことについて、一言、付け加えておきます。それは、この4月から研究科に新しい専攻が一つ増えて、これまで4専攻だったものが、5専攻体制となったという話です。
その新しい専攻は、「共同サステイナビリティ研究専攻」と称し、本学電気通信大学と、東京農工大学、東京外国語大学の、西東京3国立大学が連携して立ち上げた博士後期課程のみの共同専攻で、文理各分野におけるユニークで卓越した3大学の協働により、貧困、紛争、食糧、さらに、資源、エネルギー、環境など、重篤で様々な地球規模の課題の解決に貢献する学際的で越境的な研究を推進すると共に、自身の専門性に軸足を置きつつ、他分野の研究成果も取り入れ、地球規模の課題を分野横断的に捉えてイノベーションを生み出すことが出来る実務的な博士人材を養成することを、目的としています。
少なくとも国内では、他に類を見ない文理協働型の博士人材育成システムであり、大いに期待されており、その期待に応え得る高度人材を、養成していきたいと思っています。

次に、一般的な話を。
博士前期課程では、これまでの学士課程での蓄積の上に、さらに基礎的な知識を補い、研究のために必要な技術を身につけるなど、専門家として独り立ちできるように体系的な教育が行われます。
博士後期課程では、前期課程までに修得した、または、実務的な研究開発現場で獲得した、知識や技量を基盤として、新たに自ら研究計画を構想し、それを遂行することが中心となります。そして、研究の成果を論文にまとめ、学術誌などを通じて、国際的に発信していくことになります。

このように、大学院では、前期課程でも後期課程でも、各自が「自らの研究テーマ」を持ち、それを育てる必要があります。これは具体的には、「問いの発見」ということです。研究において最も苦しいのは、実はこの部分かもしれません。そして、この「自分の研究テーマ」を、どのような観点から、どのように攻略するかを、寝ても覚めても考え続けることが、大学院の日々の生活の基本となるでしょう。

ところで、我が国は、3年前の2016年に、第5期科学技術基本計画でもってSociety 5.0を標榜し、持続可能な世界規模の開発目標、SDGsの解決に貢献することや、SDGsの地域における実践である、「地域循環共生圏」を創造していくことを謳っています。そしてさらには、成熟社会が直面する、高齢化、人口減少、インフラの老朽化など、課題先進国となっている我が国こそ、これらの課題を克服すること、「多様性を内包する持続可能な社会」を実現することを目指して、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる、サイバーセキュリティ、IoTシステム、ビッグデータ解析、AI等の、基盤技術の強化と、個別システムにおいて新たな価値創出の柱となり得る、ロボット技術、センサ、アクチュエータ、バイオ、さらに、ナノテク、光・量子等の、コア技術の強化を取り上げています。

こうしてみると、本学は、これら基盤技術、コア技術のほとんど総てをカバーしていることになり、これから学位研究に取り組もうとされている皆さんに、社会が求めているいろいろな分野を提供することのできる状況にあると自負しております。
社会における課題をさまざまな角度からよく分析して、自分は何にとり組むべきかをしっかりと見つけ出し、それを育てていってください。

研究テーマを攻略するためには、領域を絞って、必要となる知識を獲得していくことも必要なことですが、未知の世界の開拓においては、あまり的をしぼりすぎる学習には限界があるように思います。的を絞ることは一見無駄がなく効率的に見えるかも知れませんが、専門の枠を超えるような大きな独創の芽を摘むことになるかもしれないのです。自らが専攻している分野のみならず、他の分野の学識をも豊かにすることによって、既存の枠組みではとらえられなかった視角が与えられ、独創的な攻略法にたどり着く可能性があることを、忘れないでください。そして、皆さんの後に道ができるような、独創的な研究をぜひ実現してください。

更に、皆さんには、課程修了後に、社会のリーダーとなっていただかなくてはなりません。そのためには、中心的役割を担い始める十年ほど先の社会の中にあって必要とされる、リーダーとしての知識体系や考え方、それらを在学中に準備しておいてください。すなわち、世界で活躍する際に必要となる、語学力、リテラシーなど、また、プロジェクトを立ち上げてそれを推進する際に必要となる、説得力、企画力、発信力、感化力などをです。

ところで、本学は、1918年に、現在の東京都港区に創設された無線通信士の養成機関、「無線電信講習所」がルーツとなっています。この講習所は、設立から30年近くの間は私立でしたが、その後、逓信省、今の総務省へ無償譲渡されて官立化し、次いで文部省へ移管され、1949年に、「電気通信大学」の名で大学として再出発しました。すなわち、本学の名称にある「電気通信」は、ルーツである無線通信士養成機関の名称の「無線電信」を引き継いだものです。

このように、1918年創設の機関をルーツとしていることから、昨年2018年に本学は、創立100周年記念の式典と祝賀会を、産学官の各界から大勢の出席を得て、盛大に執り行いました。そして今年2019年は、いよいよ次の節目に向けて出帆する年です。が、それがなんと、新しい元号、「令和」の時代が、始まる年でもあります。

そこで結びとして 申し述べたいと思います。
本学は、新元号「令和」の時代が始まるこの記念すべき年、新しく迎えた594名の皆さんの参加を得て、Society 5.0の実現を通じたSDGs解決への貢献、及び、課題先進国となっている我が国の諸課題の克服を目指し、次なる節目に向けて出帆いたします。

以上、皆様の大学院入学をお祝いすると共に、明日を担う皆さんの活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶とさせていただきます。

重ねて、電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。

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