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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】IoTの課題解決に新通信方式 ―省電力で伝送データ量を増大―

2021年07月09日

先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センターは、IoT(モノのインターネット)の課題を解決するパケット型インデックス変調方式による新通信技術を開発しました。
端末のバッテリー消費量を増大させることなく伝送可能なデータ量を増大させ、安価な端末を用いた場合でもインデックスの誤検出を抑圧できるもので、特許出願を行いました。

ポイント

  • 近年注目されている省電力広域ネットワーク(LPWAN: Low Power Wide Area Network)の一種であるLoRaWAN(Long Range Wide Area Network)の標準化規格を変更することなく、伝送可能なデータ量を増大させる伝送方式です。
  • Society 5.0において重要な役割を担うLPWANにおいて、複雑な処理を行えない安価な端末(EN: End Node)を用いた場合でもより多くのデータを伝送できるようになります。
  • 送信したい情報ビット系列に基づき、パケットを送信する時間スロットおよび周波数チャネルを設定するパケット型インデックス変調※1 (PLIM: Packet-Level Index Modulation)という方式を考案することで、伝送可能な伝送データ量を最大30%程度増大できることを確認しました。
  • 実用化に際して問題となるENとゲートウェイ(GW: GateWay)間で生じるクロックの同期ずれをGW側で補償することにより、時間スロットインデックスの誤検出を抑圧する方法を提案しました。
  • ※1 インデックス変調:信号自体ではなく、どの伝送媒体(アンテナやサブキャリアなど)を利用するかで情報を表現する変調方式

概要

IoTシステムでは、観測対象となる環境の変化などの現象を伝えるために長距離伝送が求められます。またあらゆる場所にIoT端末を配置する必要があることからバッテリー駆動が求められるため省電力で動作することが不可欠です。
この条件を満たす通信規格として、省電力広域ネットワーク(LPWAN: Low Power Wide Area Network)が知られています。なかでもLPWAN規格の一種であるLoRaWAN(Long Range Wide Area Network)は、導入コストの低さなどから広く使われています。
ところでLoRaWANでは、各端末(EN: End Node)が自律分散的にパケットをゲートウェイ(GW: GateWay)に送信するため、複数のENが通信チャネルの空きを事前に感知するキャリアセンスに失敗し、同時にパケットを送信した場合には,GWにおいてパケット衝突が発生し、パケット配信率(PDR: Packet Delivery Rate)の低下を導くという問題がありました。また、各ENにはパケットを送信できる時間比率(DC: Duty Cycle)が決められているので、伝送データ量を増大させたくとも単純に送信パケットを増やすことは難しい、などの課題がありました。
その一方、ENの機能やバッテリー容量は限られているため,伝送容量を増やすために複雑な方法は採用できません。そのため、各ENにおいてバッテリーを可能な限り消費せず、伝送データ量を増大させる送信方法を検討する必要がありました。
今回、LoRaWAN の各ENが送信するパケットの時間間隔が一般的に大きいことや、複数の周波数チャネルを用いた通信が可能であるという特徴に着目して,パケット型インデックス変調(PLIM: Packet-Level Index Modulation)という方式を提案しました。これは、これまでパケットとして伝送を行っていたデータ量に加えて、送信データ系列に基づき周波数チャネルと時間スロットの組み合わせ(インデックス)を選択しパケットを送信することで、より多くのデータを伝送しようとする手法です。また時間領域で擬似ランダムな情報ビット系列に基づき時間スロットを決定するため、周期的な送信に起因するパケット衝突を避けることが可能となります。
本方式により、高度な機能を持たない安価なENを使用しつつ、既存の標準化技術を変更することなく伝送データ量を増大することを可能としました。
同技術を開発したのは、電気通信大学先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター安達宏一准教授、藤井威生教授、靏見康平氏(大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻博士前期課程1年)、角田真一朗氏(大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻博士前期課程1年)、蕪木碧仁氏(大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻博士前期課程2年)らで、特許出願を行いました。

特許

出願番号(出願日):特願2020-197256(2020年11月27日)
出願番号(出願日):特願 2021-84513 (2021年5月19日)

提案クロックドリフト推定&補償法による効果

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