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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】太陽コロナを実験室から探る

2022年03月01日

ポイント

  • *太陽コロナに存在する多価イオンを実験室で生成した
  • *フレアなど特に活動的な領域に存在するイオンの極端紫外スペクトルを測定
  • *「ひので」などの太陽観測衛星による太陽コロナの研究手法を評価した

概要

中村信行教授(レーザー新世代研究センター)らの研究グループは、太陽コロナ(上層大気)に存在する特殊なイオンを実験室で生成することに成功しました。このイオンのスペクトルを調べることで、太陽観測衛星による太陽コロナ研究のうち、特に電子密度を調べる手法を評価することができます。
研究グループは、アルゴン(Ar)原子が持つ18個の電子のうち、13個を剥がしたAr13+という特殊なイオン(多価イオン)を実験室の小型装置で生成し、その極端紫外(X線に近い波長を持つ紫外線)スペクトルを測定しました。このイオンは太陽コロナ、特にその中でもエネルギーが爆発的に解放されるフレア(太陽面爆発)が発生する活動領域に存在します。太陽観測衛星「ひので」では、このイオンの発するスペクトルから電子密度などの重要な情報を読み取ります。そのため、実験室でこのイオンのスペクトルの性質を評価することにより、フレアを含む太陽コロナの活動的な領域を正しく解析できるようになると期待されます。
本研究の成果は米科学誌「The Astrophysical Journal」に掲載されました。

今後の期待

測定した多価イオンのスペクトルを太陽観測衛星「ひので」を用いて観測することで、フレアを含む太陽コロナの活動的な領域を解読することが可能になります。特に、未だ原因が特定されていない加熱現象の原因究明に有用な電子密度などのデータが得られると期待されます。
今後、Ca XV(カルシウムの20個の電子のうち14個の電子を剥がしたCa14+イオン)など更に高温の領域に有用なイオンのスペクトルを調べ、より広い温度範囲におけるモデルの評価を行います。

Tokyo-EBITにおいて取得したAr XIVスペクトル

Tokyo-EBITにおいて取得したAr XIVスペクトル

(論文情報)
雑誌名:「The Astrophysical Journal」
論文タイトル:Electron Density Dependence of Extreme Ultraviolet Line Intensity Ratios in Ar XIV
著者:Nobuyuki Nakamura, Naoki Numadate, Yasutaka Kono, Izumi Murakami (NIFS), Daiji Kato (NIFS), Hiroyuki A. Sakaue (NIFS), Hirohisa Hara (NAOJ)
DOI番号:10.3847/1538-4357/ac1c6f

(外部資金情報)
本研究は、科学研究費補助金基盤研究(A) 19H00665の助成を受けて行われました。

詳細はPDFでご確認ください。