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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】光周波数コムとバンドルファイバによる2次元分光法を用いた任意形状の高精度な瞬時3次元計測を実現

2022年03月30日

ポイント

  • *光周波数コムを用いた瞬時3次元計測手法とバンドルファイバによる2次元分光法を組み合わせることで、任意の3次元情報を高精度かつ瞬時に取得することに成功した
  • *奥行方向に約3メートルの構造を持つ物体に対してサブマイクロメートルオーダーの高精度瞬時計測を実現
  • *6桁の広いダイナミックレンジ(精度/範囲)計測と高効率化に成功

概要

美濃島薫教授、加藤峰士特任助教(基盤理工学専攻)らの研究グループは、光周波数コムを用いた瞬時3次元計測手法に対して、シングルモードファイバとマルチモードファイバで構成したバンドルファイバによる2次元分光法を新たに採用することで、任意の3次元形状を瞬時、かつ高精度に計測できることを実証しました。実験では約3メートルの構造をサブマイクロメートル(0.1μm単位、マイクロは100万分の1)の不確かさで計測することに成功し、従来手法では困難であった6桁もの広いダイナミックレンジ計測に成功しています。
研究グループはこれまで、時間とともに光周波数が変化するチャープパルスを光源とした光周波数コムによる3次元計測手法を提案し、サブマイクロメートルの不確かさを持つ3次元計測を実現していました。しかし、検出系の制限により、超短パルスには一度に保存されていた3次元情報のうち2次元情報しか瞬時に検出できないといった課題がありました。
今回、超短パルスの分光情報を取得する光学系に、新たに端面配列の異なるバンドルファイバを導入することで、2次元平面上の異なる空間点の奥行き情報を同時検出することに成功し、さらにファイバの本数を増やすことでより多くの多点計測が可能になりました。また、これまでも広ダイナミックレンジ計測を確認していましたが、同様の性能を今回の瞬時3次元計測においても達成できることを示しました。奥行きに長さがある高アスペクト比物体を計測した結果、約3メートル離れた平面構造に対して、同時にサブマイクロオーダーの高精度な瞬時3次元計測を実現しました。また、マルチモードファイバの導入により、高効率化も示しました。これにより、被測定物の高速3次元形状計測や単発現象のイメージングなどへの応用が期待されます。
研究成果はアメリカ光学会(OPTICA)発行の論文誌「Optics Express」に掲載されました。

今後の期待

これまでにチャープパルスを光源に用いた、光周波数コムによる瞬時3次元計測手法を提案していましたが、今回、シングルモードファイバとマルチモードファイバで構成したバンドルファイバによる2次元分光法を導入することで、瞬時に取得された1枚の画像から高精度な3次元画像を取得できることを確認しました。これにより、約3m離れた物体に対してサブマイクロメートルオーダーの高精度計測を実現し、既存手法では実現が難しかった6桁もの広いダイナミックレンジ計測と、粗面等に適用できる高効率測定が可能になりました。
従来、3次元形状の瞬時計測は広範囲かつ高精度計測の両立が難しかったことから、測定は静止対象物に制限されていました。本成果により、非常に小さな物体から大きい物体までの被測定物の高速3次元形状計測、特にものづくりにおけるメートル規模の対象物や、長辺と短辺の比が大きい形状物の精密計測、さらにはレーザーによる加工や物質改変における単発現象や衝撃波発生のような瞬間イメージングなど多様な応用が広がると期待されます。

実験配置図とバンドルファイバの構成図

実験配置図とバンドルファイバの構成図

(論文情報)
雑誌名:「Optics Express」Vol.29, Issue 26, pp.43778-43792(2021)
論文タイトル:One-shot three-dimensional imaging using a two-dimensional spectrometer with a fiber bundle
著者:Takashi Kato, Megumi Uchida, Yurina Tanaka, Kaoru Minoshima
DOI番号:10.1364/OE.447187

(過去のプレスリリース)
光コムを用いた新しい高速3次元イメージング法の実証に成功

(外部資金情報)
本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)ERATO美濃島知的光シンセサイザプロジェクト(JPMJER1304)の助成を受けて行いました。

詳細はPDFでご確認ください。