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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】コンピュータトモグラフィにより脈動オーロラの3次元構造の復元に成功!

2022年08月26日

概要

吹澤瑞貴特任研究員、田中良昌特任准教授、小川泰信教授(国立極地研究所)を中心とする、坂野井健准教授(東北大学)、細川敬祐教授(本学 情報・ネットワーク工学専攻)などの研究グループは、北欧の3地点で観測されたオーロラ画像に、医療診断の分野で多く用いられているコンピュータトモグラフィ(CT)の手法を適用し、脈動オーロラの3次元構造を復元することに世界で初めて成功しました。さらに、宇宙空間から地球大気中に降り込んでオーロラ発光を引き起こす電子の2次元分布の復元にも成功し、その時空間変動を明らかにしました。
最近の研究で、脈動オーロラの発生時には、電離圏に降下してオーロラを光らせる電子のほかに、より高エネルギーの電子も降下して成層圏のオゾン破壊を誘発すると示唆されています。本成果は、脈動オーロラ発生中の電子降下の全体像を理解することにつながると期待されます。

背景

その美しい輝きで人々を魅了するオーロラは、宇宙空間から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が地球大気中の窒素や酸素などの粒子と衝突することで発光します。最近の研究では、脈動オーロラが発生しているとき、同時に成層圏のオゾン破壊に関与するような高エネルギー電子が地球大気中に降下していることが示唆されており、注目を集めています。これまで、オーロラ発光を引き起こす降下電子は、オーロラ発光領域内や発光領域上空を飛翔する観測ロケットや科学衛星などによって直接観測されてきました。しかし、これらの飛翔体は高速で移動しながら観測を行うため、観測されたデータの変動が時間変化によるものか、それとも空間変化によるものか区別することができませんでした。また、飛翔体での観測はその軌道上に限られるため、3次元的に広がる脈動オーロラ発光の構造や降下電子の空間分布も明らかにされていませんでした。

(論文情報)
本文掲載誌: Annales Geophysicae
タイトル:Reconstruction of precipitating electrons and three-dimensional structure of a pulsating auroral patch from monochromatic auroral images obtained from multiple observation points
著者
吹澤 瑞貴(国立極地研究所 宙空圏研究グループ 特任研究員)
坂野井 健(東北大学大学院理学研究科 准教授)
田中 良昌(国立極地研究所 宙空圏研究グループ 特任准教授)
小川 泰信(国立極地研究所 宙空圏研究グループ 教授)
細川 敬祐(電気通信大学大学院情報理工学研究科 教授)
Björn Gustavsson(ノルウェー北極大学 - トロムソ大学 教授)
Kirsti Kauristie(フィンランド気象研究所 グループ長)
Alexander Kozlovsky(オウル大学ソダンキラ地球物理観測所 研究員)
Tero Raita(オウル大学ソダンキラ地球物理観測所 研究員)
Urban Brändström(スウェーデン宇宙物理学研究所 研究員)
Tima Sergienko(スウェーデン宇宙物理学研究所 研究員)
DOI: 10.5194/angeo-40-475-2022

論文公開日: 2022年7月12日(火曜日)

キャプション

地上3地点で観測されたオーロラ2次元画像にコンピュータトモグラフィ(CT)を適用することで復元された脈動オーロラの3次元構造と降下電子エネルギーの2次元分布

(研究サポート)
本研究はJSPS科研費(JP17K05672, JP20J11829, JP21H01152)の助成を受けて実施されました。

詳細はPDFでご確認ください。