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受賞・表彰

小林孝嘉特任教授が2009年度島津賞を受賞

2010年02月19日

小林孝嘉特任教授が、極限的超短パルス光レーザーと超広帯域高感度検出系による極限的時間分解分光法の開発が評され、2009年度島津賞を受賞しました。授賞式は2010年2月19日に行われました。

同特任教授は、世界最短可視光パルスレーザーの開発を手がけ、1997年にドイツ、イタリアの研究グループとほぼ同時に、非共直線配置の光パラメトリック増幅(non-collinear optical parametric amplification: NOPA)方式でパルス幅20fs(フェムト秒、1fsは1,000兆分の1秒)以下のパルスレーザー光を得ることに成功し、その後も世界最短パルス幅の可視光パルスの記録を更新して、ついに4fsを達成するに至りました。さらに、究極的な光の位相(絶対位相)の自動安定化法も発明、量子干渉法を用いた絶対位相測定にも成功しました。この位相自動安定化法はHall, Haensch教授(2005年ノーベル物理学賞)等による外部安定化法に比べ、簡便で且つ増幅器にも適用可能となる点が優れています。さらに、多波長同時検出器として開発したマルチチャンネルロックイン増幅器と超短パルスレーザーとを組み合わせた超広帯域高感度多波長分光システムを構築し、極限的時間分解分光法を可能としました。極小な電子遷移エネルギーの変化を1フェムト秒の速さで広帯域スペクトルとして捉え、多くの新現象(振動モード管の動的モード結合等)を発見しています。すなわち、分子振動や化学反応に伴う分子の形の変化を1fs単位で捉え、Zewail教授(1999年ノーベル化学賞)の提唱した遷移状態分光法を、簡単な気相分子ではなく、複雑な分子・高分子・生体高分子(タンパク質)においても測定できる「遷移状態分光法」を確立し、関連研究の進展に大きく貢献しました。