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受賞・表彰

植田憲一教授(レーザー新世代研究センター)が紫綬褒章を受章

2011年06月15日

植田 憲一 教授

植田憲一教授(レーザー新世代研究センター)が、2011年春の褒章において、学術、芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい方を対象とする紫綬褒章を受章しました。

業績の概要
同教授はレーザー科学の分野において特に固体レーザーの革命といわれるセラミックレーザーの開発、高出力ディスク型ファイバーレーザーの開発など数々の業績を上げ、国内外の多くの大型プロジェクトの方向性を示してきています。この中では、核融合エネルギー用大口径エキシマレーザーの開発、重力波検出用周波数超高安定化レーザー、従来の単結晶レーザーを超える新しいセラミックレーザー、新しい概念にもとづくkW側面励起ファイバーディスクレーザーなどのレーザー開発だけでなく、超高品質光学素子、高精度光周波数配信技術、新しいアダプティブミラーの開発など基盤技術を含む多岐にわたったレーザー科学の研究を行っています。

顕著な研究業績の具体的内容

  1. レーザー核融合用エキシマレーザーの開発: エキシマレーザーで出力拡大則を作り、その基礎モジュールとして600J大口径エキシマレーザー増幅器を開発しました。このスケーリングは、米国海軍軍事研究所において開発された3kJ級NIKEレーザーに使用されました。またベルベット陰極電子ビーム源を開発し、最も良い特性を出すものとして欧米の多くの電子ビーム装置に使用されました(昭和56年~平成2年)。
    これにより、昭和59年レーザー学会論文賞、平成12年OSAフェロー表彰を受賞しました。
  2. 安定化レーザーの研究: 高フィネス光共振器を周波数基準に用い、半導体レーザー励起Nd:YAGレーザーを16桁の精度で周波数安定化することに成功しました。また高フィネス共振器に必要な超低損失鏡の評価技術を確立し、日本での高性能光学薄膜の技術進歩に寄与しました。この周波数超高安定化技術は光周波数標準や重力波検出器等の光を使った超高精密計測、高精度光周波数配信技術等に貢献しています(平成2年~現在)。
    これにより、平成6年レーザー学会論文賞、平成12年OSAフェロー表彰を受賞しました。
  3. 固体レーザーに関する研究: 単結晶に代わるレーザー用セラミックの新規製造技術を開発し、セラミックレーザーという新しいレーザー分野を開拓しました。ナノ微結晶を無圧焼結する方法により、従来不可能であった多結晶粒界での散乱要素を自己消滅させて高透光性を達成、単結晶と同等の高効率レーザーを実証しました(平成3年~平成13年)。
    これにより、平成12年OSAフェロー表彰、平成14年レーザー学会進歩賞、同年櫻井健二郎氏記念賞を受賞しました。
  4. セラミックレーザーに関する研究を推進し、高品質化により単結晶よりも優れたレーザー動作を達成しました。単結晶技術では不可能であったレーザー設計を可能とし、種々の高機能レーザー、新材料レーザー、高性能フェムト秒レーザーを実現しました。単結晶レーザーの大型化と制御性の限界を打ち破り大出力化を可能とし、レーザー核融合発電への道を拓きました(平成3年~現在)。
    これにより、平成19年光・量子エレクトロニクス業績賞、同年応用物理学会フェロー表彰、平成21年文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しました。
  5. ファイバーレーザーに関する研究: 従来の方法とは全く異なる側面励起法を提案して励起パワーの拡大側を可能とし、ファイバーを重ねてディスク状にした、独創的なファイバーディスクレーザーを開発し、ファイバーレーザーで世界初の1kW出力を達成しました。この技術はレーザー加工など産業応用に貢献しています(平成6年~現在)。
    これにより、平成12年OSAフェロー表彰、平成18年レーザー学会論文賞、平成19年日経BP技術賞、同年応用物理学会フェロー表彰を受賞しました。