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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
中村・仲村 研究室

化学感覚を中心とした神経系の動作機構:受容から摂食行動まで

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 中村 整 教授
仲村 厚志 助教
所属学会 日本動物学会、日本生理学会、日本比較生理生化学会、
日本味と匂学会、Society for Neuroscience(USA)
研究室HP http://kaeru.pc.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

キーワード

分子生物学、電気生理学、カルシウムイメージング、パッチクランプ、化学感覚(味覚・嗅覚)、摂食行動、脊椎動物(哺乳類、両生類)、昆虫

中村 整
Tadashi NAKAMURA
仲村 厚志
Atsushi NAKAMURA

研究概要

化学感覚神経を中心にして神経情報システムの分子・細胞レベルの動作機構を研究

人間は、生まれながらにして匂いや味の違いを感じる能力を持っている。実はこの能力は哺乳類だけではなく、爬虫類や昆虫に至るまで、多くの生物が持っている。これは、食べることに直結した生物の基本的感覚で、進化の出発点でも必要だったはずの感覚だからだ。ただし、このように生物が当たり前に持っている匂いや味の感覚が、どのようにして脳に伝えられているのかはようやく近年一部が解明されたところだ。
当研究室では、嗅覚+味覚を司る化学感覚神経を研究することで、嗅覚や味覚と脳・神経系の動作メカニズムを研究している。

脊椎動物の嗅覚

電気泳動

中村は学生時代には視覚を研究していたが、その手法を嗅覚にも対応できるのではないかと考えて研究を進めていくうちに、嗅細胞(嗅覚受容神経)が匂い物質を受容して電気興奮する基本機構について解明することができた。具体的には、嗅細胞が匂い分子を受け取って電気的に興奮する時、レセプター(匂いの信号を受け取るタンパク質)とその制御をうける酵素がcAMPを作り出して、セカンドメッセンジャーとして情報を伝達していることが分かったのだ。現在は、その先の脳に対してどう伝達するかといったさらなる疑問を解明すべく、研究を行っている。
この研究を続けていくうちに、神経経路に関して遺伝子工学が重要だということを思い知らされ、分子生物と電気生理やイメージングを組み合わせたラボを作りたいと考え、体制づくりを行い、当研究室の設立に至った。

無脊椎動物の味覚

次に、脊椎動物の嗅覚の研究で得られた技術を活かして、昆虫の味覚、味細胞の研究も行っている。昆虫の味細胞は砂糖などに触れると、それ自身がインパルスを発し、その軸索が直接脳まで情報を伝達しているという意味では嗅細胞と大変良く似ている。現在では、脳の入口まではどうやって配線されているのかはある程度まで追えるのだが、味細胞がどのように興奮するかなどまだまだ不透明なことも多いため、引き続き大きな研究テーマの1つとなっている。

昆虫感覚毛明視野顕微鏡像
同蛍光顕微鏡像

イモリの匂い応答

当研究室で飼育している
アカハライモリ

イモリの匂い応答に関しても共同研究を行っている。イモリに限らず、鼻の受容部位では、粘液の中に匂い物質結合タンパク質があり、匂いに対して独特な反応をする。つまり、このタンパク質は嗅細胞の受容体ではないのに、匂い物質の一部を吸着する特性があることから、匂いセンサーなどに応用できないかと研究中だ。

ハエの記憶・学習の脳への影響

ユニークな研究として、ハエの記憶や学習が脳に起こす影響がある。ハエは、通常砂糖水は大好物である。ところが、ハエにとって嫌いな匂いのするリモネン(レモンの精油)を砂糖水と一緒に与えられると、学習して砂糖水を嫌がるようになる。この学習したハエの脳に発現している遺伝子と学習していないハエの脳の遺伝子を比較すると、20種類の遺伝子が核から読み出されて(発現して)いることを見つけた。つまり、学習したハエには遺伝子が読み出されて新しいタンパク質が合成されて働くようになると考えられるのだ。しかも、発見した遺伝子のうちの10種は、現状ではまだどのような機能をもつタンパク質をコードしているのか判明していない、全く新しい遺伝子であった。そのため、これらの遺伝子が何なのかについて、現在研究を進めている。

アドバンテージ

ナノメートルレベルのパッチクランプ法を使う電気生理学

当研究室では、早くから電気生理学を使って細胞の研究を行ってきたことから、パッチクランプの技術が非常に高い。パッチクランプとは、膜電位や伝導率などの細胞膜の電気的特性を調べることでイオンチャンネルなどの性質を調べる実験方法だ。たとえば嗅細胞のパッチクランプ実験においては、まず細胞を1つ1つバラバラにして、動いている繊毛(直径200ナノメートル程度)に対して顕微鏡を見ながらガラス電極を近づけ、繊毛の細胞膜をくっつけ切り取るという作業を行う。ここに伝達物質を投与した時の繊毛の持つチャンネルの動きを電気的に調べることができる。このようなナノメートルレベルのパッチクランプ法が利用できることが大きなアドバンテージだ。

ハエを使用しての実験
パッチクランプ実験(上)と嗅電図記録実験(下)

電気生理学と分子生物学を直接的に連結し、神経情報システムを研究

また、電気生理学と遺伝子の探索などの分子生物学を直接的に連結して研究していることも有利な点といえる。実際に、匂いや味覚について、電気生理学等を使って現象を追究するだけでなく、分子生物学を使って情報の伝播方法を物質的な基盤から調べることにより、本当の意味での感覚事象の解明ができるからだ。
さらに、脊椎動物から昆虫まで、幅広い動物実験ができることも大きな強みだ。昆虫を使った微小脳での実験結果を、脊椎動物にも応用できるかどうかを実験・検証できるし、他の生物をターゲットにした実験も可能だ。

今後の展開

研究した結果をさまざまな分野に応用していきたい

現在研究中のテーマには、解明されていない部分が多い。そのため、これからも現在の研究を続けていき、分からなかった部分を解明していく。
また、視覚と嗅覚の仕組みが近似し、脊椎動物の機構と昆虫の機構が近似している。そこで、1つの研究方法が見つかればその応用範囲が広がることから、新しい分野にもチャレンジしていきたい。
さらに、未知のメカニズムを解き明かすだけではなく、得られた結果もさまざまな分野に応用していきたいとも考えている。たとえば、人間の味覚や嗅覚に応用することでダイエットや成人病対策に利用できる可能性がある。
それに、昆虫の味覚や嗅覚を解析することで、匂いや味で害虫を寄せ付けないものを発見することができ、農薬を使わずに害虫を科学的にコントロールするなど、明日の農業に貢献することができるかもしれない。

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