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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
渡邊・森下 研究室

原子・分子・光(AMO)に関する計算数理解析、
原子BECやアト秒光パルスによる量子過程の解析

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 渡邊 信一 教授
森下 亨 准教授
所属学会 原子衝突研究協会、日本物理学会、米国物理学会
研究室HP http://power1.pc.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

キーワード

量子系の時間発展、BEC(ボーズ・アインシュタイン凝縮)、BEC干渉計、アト秒光パルス、多電子励起状態と電子間相関、超高速イメージング、Siegert擬状態、計算数理科学、可視化技術、AMO

渡邊 信一
Shinichi WATANABE
森下 亨
Toru MORISHITA

研究概要

計算数理科学の手法で、量子系の解明を行う

当研究室は原子・分子・光について理論的研究を行っている。このような分野の物理学研究は、AMO(Atomic, Molecular, and Optical) Physicsと呼ばれている。
原子、分子、電子などの微視的世界は量子力学に支配されている。この量子力学は古典力学(ニュートン力学)とは多くの点で異なっており、たとえば、粒子の位置と速度を同時に誤差なく決定することはできない(不確定性原理)。
この他にも、微視的世界は、古典力学系に住む我々の常識を超えた現象がいろいろと起こる、不思議で面白い世界なのである。その世界を研究するにはとても美しい量子力学の理論体系を活用するので、自然を記述するための数学が命を得たように活躍する。一般の人にもその醍醐味を少しは感じとってもらえるだろう。
当研究室の個々の研究テーマを思い切り簡略化して一言で言えば、「原子や分子の不思議な世界で起こっている物理現象を計算数理科学で解明したい」ということである。実際、原子の多電子励起状態を分子模型によって記述したり、反陽子ヘリウムイオンの研究を対象に超球(楕円)座標法という散乱の数値解法を開発して、原子とイオンの衝突への応用などを行ってきた。その手法を、最近はAMOの分野で注目を浴びている問題に適用している。

BEC現象の数理的分析

その1つとして、この数年、BEC現象の数理的分析を研究している。BECとはボーズ・アインシュタイン凝縮と呼ばれている現象で、非常な低温下で起こる。原子や分子は量子力学によると粒子と波動の二重性をもっているが、絶対0度に近いような極低温では粒子性を失い波動性のみが現れる。そこでは原子はエネルギー的に最も低い状態にあり(基底状態)、波のようなぼやぼやとした状態である。それにレーザー光を当て、できた影を観測すると原子の量子力学的世界を垣間見ることができる。
これまでは極低温を作ることが難しかったのだが、レーザー技術の急速な進歩で、現在では、レーザー冷却や蒸発冷却という手法で10-18ケルビン程度の低温が作れるようになり、このBECという現象が確認された。
この研究は非常に新しく、今、最も活発に動いている分野である。当研究室ではトラップしたガスのBECについて、先述の超球座標法や非線形シュレーディンガー方程式を使い、その諸性質を数理的に分析したり、BECを利用した高輝度の干渉計の可能性を探る研究を行っている。巨視的量子系BECの不思議な性質を数値的に表すだけではなく、手にとったように見るための可視化技術の開発も行っている。

アト秒原子物理

次に、アト秒(1アト秒=10-18秒=100京分の1秒)領域の非常に短い時間幅の光パルスを使って原子内の電子を操作し、量子状態をモニターしたり制御したりするための理論的研究を行っている。アト秒の光がどのくらい「短い」かと言えば、1秒間に地球を7周半する光が原子の大きさ程度しか進めない、それほど極端に「短い」光である。この短い光をストロボのように原子に当て、それによって起こる原子内部の電子の動きを計算して、実験でどのように観測されるかを研究している。また、高強度の赤外レーザーパルスを利用した、アト秒領域の超高速原子・分子イメージングについての研究も精力的にすすめている。

ヘリウム原子内の電子状態。可視化によって多面的な理解を目指す。

アドバンテージ

現在の理論物理学の中でも、最もホットな研究

介したBECという現象が確認されたのは1995年であり、2001年のノーベル物理学賞の受賞対象となっている。また、それを可能にしたレーザー冷却の技術は、1997年のノーベル賞を受賞している。
当研究室がBECの研究に取り組み始めたのは、2000年頃からであるが、少しずつ一定の成果を上げつつある。

アト秒原子物理も同様に、原子・分子・光を対象とした物理学の中でも、最先端領域の研究テーマで、当研究室がこれまで開発してきた技術を活かせる格好の対象である。

今後の展開

物理学の素晴らしさ、面白さを次世代に伝えることも基礎研究と並ぶ重要な使命

これまでご紹介した通り、当研究室は理論系の研究室であり、我々の研究がすぐさま何かに製品化されるといった要素は、正直に言って乏しい。しかし、どのような科学技術も基礎理論の裏づけがあってこそのものであり、新しい理論が生まれれば、それは明日の技術につながっていく可能性がある。また、わからないことを理論的に研究し解明するそのプロセスで、新しい技術的アイディアが生まれることも多いのである。
つまり、基礎理論とはピラミッドの頂点のようなもので、頂点が少し上がれば、その裾野は非常に広がるのである。当研究室も世界の他の多くの研究者と同じように、少しずつこのピラミッドの頂点を上げるため、日々研鑽を積みながら、明日のAMO物理学の指針となるような発見ができればよいと願っている。
もう1つ、大切なことは教育である。基礎研究は継続して行われることが何よりも重要で、いったんブランクが生じると以前の水準に戻すことは容易ではない。物理学は人類が2000年以上にわたり営々と積み重ねてきた知的努力から生まれた、素晴らしい精華である。それを教育によって、次世代の人たちにバトンタッチすること、それも当研究室の重要な使命であると考えている。
基礎研究と、教育を通じたその継承。これを今後とも当研究室の2本の柱としていきたい。

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