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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
仲谷 研究室

磁石内の磁化構造と数値シミュレーション

所属 大学院情報理工学研究科
情報・通信工学専攻
メンバー 仲谷 栄伸 教授
所属学会 情報処理学会、日本磁気学会
研究室HP http://wwwhnl.cs.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

仲谷 栄伸
Yoshinobu NAKATANI
キーワード

マイクロマグネティクス、数値シミュレーション、シミュレーション技法、磁壁移動、ハードディスク、磁性体メモリ(MRAM)、光磁気ディスク

研究概要

磁石内の磁化構造

マイクロマグネティクスのシミュレーションを中心に、シミュレーション技法の開発や、開発した手法を用いて、ハードディスク、磁性体メモリ、光磁気ディスクなどの研究を行っている。
磁石の内部を細かく見ていくと、電子1つ1つまでN極とS極を持つ原子磁気モーメントによって構成されていると考えることができ、さらにこの原子磁気モーメントは一様な方向を向いているのではなく、さまざまな構造を作っていると考えられる。

マイクロマグネティクス

磁石内部に現れる原子磁気モーメントによってつくられる磁化構造や、その動的な変化を扱う分野がマイクロマグネティクスである。磁石内部に現れる磁化構造の存在は、20世紀初頭から理論的な考察や実験による観察が行われていたが、理論では単純な問題しか扱うことができず、理論と実験との間には非常に大きなギャップがあった。
このギャップを埋めるための1つの手法が数値シミュレーションであるが、この問題を解くためには非常に多くの計算時間が必要であった。そのために、実験で扱われていた程度の大きさの問題を解くことはできず、長い間シミュレーションは行われてこなかった。しかしながら1980年代に入ると、磁気記録媒体の微細化や、ブロッホラインメモリの提案などがなされ、問題とする対象のサイズが小さくなったことと、第3世代のスーパーコンピュータが現れ各研究機関に配置されたことで、大規模計算が手軽に可能になり、マイクロマグネティクスの分野からシミュレーションによる解析が行われ始めた。
最近では、微細加工技術の進展により、ナノサイズの磁石を作成することが可能になり、それらを使ったデバイスの提案も行われている。さらに、従来磁気モーメントの操作は磁界(例えば電流が作る磁界)によって行われていたが、 近年電流(スピン電流)によって直接磁気モーメントを操作する理論や実験結果が報告され始め、この分野における研究が盛んになっている。

アドバンテージ

ツール、アイディア、シミュレーション、論文作成まで 一貫

当研究室では、1980年代よりシミュレーション技法の開発を始めており、これまで各大学や企業と連携してブロッホラインメモリ、磁気記録装置、光磁気記録装置等の研究開発を行ってきた。
2006年度からはNEC、富士通研究所、京都大学などの各企業や大学などと共同で磁性体メモリの開発に着手している。
研究過程で市販のツールを使って解析を行う研究室が多い中、当研究室では自ら解析ツールを製作しているために、市販のツールではできない解析ができる。このように、自分たちのアイディアをシミュレーションで試して論文にまとめるまでを一貫して行える、世界でも数少ない研究室である。

産業応用・研究開発

産業界での応用例としては、磁気記録装置(HDD)の再生ヘッドや記録媒体の開発での応用がまず挙げられる。1990年代より提案された新たな再生ヘッド(MR、GMR、TMR等のヘッド)では、磁石の薄い板をセンサとして利用している。これらのヘッドでは、記録媒体からの磁界によるセンサ内部の磁化構造の変化を利用して再生信号を送っているために、このセンサ内部の磁化構造の解析が必要となる。このため、マイクロマグネティクスシミュレーションがヘッド開発のための必須ツールとなっている。
また記録媒体では、媒体を構成する粒子の微細化に伴い、通常の世界では問題とならない熱揺らぎによって記録した磁化構造が変化することが問題となっており、熱揺らぎに強い媒体構成の研究開発が盛んに行われている。この研究においても、本シミュレーションが解析ツールとして使われている。

MRAMプロジェクト

さらに近年、磁性体メモリ(MRAM)が提案されている。このメモリは電源を切っても情報を忘れずに覚えていること、SRAM程度の記録速度、DRAM程度の集積度、さらに書き換え回数の上限がないことなどのメリットが指摘され、PCの省電力化と立ち上げ時間の省略などのメリットから、商品化が期待されている。
このMRAMプロジェクトは既にスタートし、これまでは主に磁界による駆動方法の研究が行われていたが、さらなる高密度化のためにスピン電流による駆動方法の研究も始められた。
MRAMで利用される磁石の形状や記録方式にはまだまだ改良の余地があり、これまで主に研究がされてきたものとは全く違った方式の提案も行われ始めている。これらの研究開発においても、本シミュレーションが解析のための必須ツールとなっている。

バックアップサーバー
ファイルサーバー

今後の展開

磁性体メモリ実用化に向けて

当研究室では計算モデルを提案し、そのモデルの計算規準や計算精度などの性能評価を行い、さらに提案したモデルを用いて、問題の解析を物理上からと工学上から総合的に考え、成果をあげることを目的としている。これらの成果により、大容量の磁性体メモリができるのでは、という提案を現実化していきたい。

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