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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
小野 研究室

半導体素子を用いた湿式太陽電池の太陽光発電システムの研究

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 小野 洋 助教
所属学会 応用物理学会、電気化学会、電気学会
研究室HP http://tanaka.ee.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

小野 洋
Hiroshi ONO
キーワード

アルコール、エネルギー変換効率、エネルギー問題、環境問題、高効率太陽電池、湿式太陽電池、太陽光発電、二酸化炭素、半導体素子

研究概要

エネルギー問題と環境問題を解決する湿式太陽電池の開発

湿式太陽電池の計測

現在、地球上で起こっている問題の中でとりわけ深刻なものが「エネルギー問題」と「環境問題」だ。エネルギー問題については、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料はいつかは枯渇してしまうため、これに代替するエネルギー資源の開発が急務だ。環境問題では、化石燃料を燃やして生じる二酸化炭素の増加が地球温暖化の主な原因だとされ、二酸化炭素の削減が大きな課題になっている。
この2大問題を解消するため、太陽光エネルギーをはじめとする再生可能エネルギー資源の開発が注目されている。

半導体素子を使った湿式太陽電池の太陽光発電システム

当研究室では、再生可能エネルギーの筆頭、太陽光エネルギーを電力に変換する太陽光発電の研究を行っている。地球に無尽蔵に降り注ぐ太陽光を利用できることから、より高効率の太陽電池を作るための研究が全世界的に行われている。その中で、当研究室が研究開発している太陽光発電システムは、光を電気エネルギーに変換できる半導体素子を水の中に入れて、水を水素と酸素に分解して発電する「湿式太陽電池」だ。通常目にする板状の太陽光パネルを使った「乾式太陽電池」とは異なる。
発電の構造は、電気の通りやすい電解質溶液の中に、半導体をベースにした電極と、腐食しにくいプラチナ(Pt)の電極を入れて、その間を導線で結ぶというシンプルなものだ。発電の原理は、電解液と半導体の界面で電荷を分離するエネルギー勾配ができるので、そこに特定の波長の光を当てると、この光エネルギーを吸収して、電子とホール(正孔)のペアが分離して発電できるというものだ。

湿式太陽電池で二酸化炭素の排出を低減、アルコールを生成

湿式太陽光発電の良い特性は、(1)光のエネルギーを電気エネルギーとして取り出せる。(2)電解液の水を分解して、酸素と水素に分解でき、水素をエネルギーとして利用することも、ボンベに詰めたり、液化して容器に貯蔵することも可能となる。(3)二酸化炭酸(CO2)を溶け込ませた電解液を還元することで、炭化水素(CmHn)からメタン、エタンや、メタノール、エタノール、エチレン(CH4、C2H6、CH4O、C2H6O2、C2H6O)など、アルコールも生成できる。つまり、二酸化炭素を環境汚染物質として排出するのではなく、有用なアルコール燃料に転換できるのだ。
現行の太陽光パネルで電気を発生させても同様の電気分解システムを作れるが、いったん電気に変換して電線を介して送電する必要があるので、どうしても送電経路で多量のロスが生じる。それに対して、当研究室の湿式太陽電池は、太陽光エネルギーをダイレクトに電気分解に利用できることから、エネルギー変換効率が高いことも特徴だ。この研究が進めば「エネルギー問題」と「環境問題」の両方を解決できるだろう。

アドバンテージ

半導体の材料と加工に関して豊富な技術と知見を持つ

実は、湿式太陽電池では、半導体の材料と加工が発電効率に大きな影響を与える。太陽光にはいろいろな波長の光が含まれていて、波長によって光の量が違う。また、半導体の中で電子が存在できない領域を禁制帯(バンドギャップ)と呼ぶが、この禁制帯が半導体により異なり、半導体ごとに利用できる光の範囲が異なるため、なるべく広範囲のスペクトルに対応するためには、半導体の材料が限定されてくる。つまり、理想的な半導体材料を作れることが、この湿式太陽電池製品化のキーテクノロジーであり当研究室の強みだ。
しかしながら、単体の半導体材料のエネルギー変換効率は既に限界に達しており、さらなる高効率を求めるためにはうまく加工することが必須条件だ。当研究室はこの半導体の材料と加工技術に関しても早くから研究を行ってきたことから、豊富な知見を持って対処できることが、大きなアドバンテージだ。

半導体材料の3層構造化、電流・電圧の制御を研究

半導体材料のシリコンの原子の数は、表面に出ているものと内部のものを比べると、圧倒的に内部のほうが多いが、微細化すると表面と内部の差が少なくなってきて、通常では見られなかった性質が現れてくるようになる。そこで、半導体材料の表面に安定な形のエネルギー構造を持つ物質をコーティングすると、内部のパワーはそのままに表面は安定した状態になる。この結果、安定な所で短波長の光を吸収し、内部で長波長の光を吸収でき、エネルギー利用効率が格段に高くなる。
当研究室では、この材料加工も研究室内で行っている。現在は、半導体材料を3層構造(p型半導体、半導体ナノロッド、n型半導体)にして、発生する電力の電流・電圧の制御についても研究している。

半導体の微細化・低コスト化を簡素な装置で実現

走査型電子顕微鏡

半導体の微細化の加工は、当研究室が選択した電気化学的手法を用いて、簡素化した装置で作製できることが利点だ。当研究室では、将来の製品化を見据えて、より多くのユーザーに利用してもらうため、設備コストをできるだけ低く抑えるように配慮している。この技術開発に併せて、電力の安定供給と低コスト化を推進する技術とシステムを研究している。

今後の展開

理想の半導体電極をつくり、湿式太陽電池を製品化したい

X線光電子分光分析装置

当面の目標は、より理想的な半導体電極を作ることだ。現在、理論的にはベストな構造は分かっているが、それを作る方法は確立されていない。また、理論上はエネルギー変換効率が向上するはずだと思っても、予想通りになるかどうかは、実験検証してみなければわからない。ここまで積み上げてきた半導体材料の技術と知見に新しい試みを取り入れて、理想の半導体電極を作り、当研究室が開発した湿式太陽電池を製品化したいと考えている。

汚泥・有機物や流出重油も再生可能エネルギーに変換し環境浄化

湿式太陽電池

この湿式太陽電池の利用範囲は非常に広く、水と太陽光さえあれば利用できるので、汚泥のような有機物も電気分解して燃料や再生可能エネルギーとして使える。タンカーから重油が流出した際にも、半導体電極を入れておけば、太陽光が当たる場所なら重油が二酸化炭素と水とに分解されて、環境の浄化もできる。このように、幅広い分野で当研究室の技術と知見が利用されることが夢だ。

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