このページの先頭です

メニューを飛ばして本文を読む

ここから本文です

サイト内の現在位置

研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
伊藤(毅) 研究室

人の思考や学習の研究を通して
人の心を豊かにする知的システムとの新しい関係の構築へ

所属 大学院情報理工学研究科
情報・通信工学専攻
メンバー 伊藤 毅志 助教
所属学会 Cognitive Science Society、International Computer Games Association、情報処理学会、日本認知科学会、人工知能学会
研究室HP http://minerva.cs.uec.ac.jp/~itolab-web/wiki.cgi
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

伊藤 毅志 Takeshi ITO
キーワード

認知科学、人工知能(AI)、ゲーム、将棋、囲碁、カーリング、マンマシンインターフェース、スポーツ、生体データ計測、ヒューマンエラー、人間らしさ

人の心的状態の計測と人に優しい人工知能の開発

伊藤毅志研究室が企業と共同研究を希望しているテーマは、人間の思考や学習、判断などに関わる研究です(図1)。主に二つのテーマがあります。
一つは、生体計測装置を使って人間の心的状態と関連の深い生理的状態と認知的状態を計測する研究です。計測ツールとしては、アイカメラ(視線の動きを捉える装置)、発汗計測器、脈拍計測器、光トポグラフィ装置(脳の血流量の変動を捉える装置)などがあります。
もう一つは、人にやさしい知的システム(人工知能システム)の共同開発です。人間らしさ、楽しさ、自然さを備えた人に優しいシステムの開発を想定しています。
このような共同研究を可能にしているのは、伊藤毅志研究室が手掛けているものが、人間の高度な認知活動を対象とした研究だからです。この研究室では、人間が複雑な問題をどのように解決していくのか、人間特有の直観的知識とはなにか、人間らしいコミュニケーションとはなにか、といった事柄を解明しようとしています(図2)。
そのために人間の認知過程を計測し、その計測に基づいて知的システムを構築し、人間と機械の相互作用について深く考えて、心を豊かにする技術とは何かについて探求しています。
例えば、日本で古くから親しまれているゲーム「将棋」と「囲碁」を考えてみると、それぞれ一定の制約のもと対局が成り立ちます。この制約はルールなのですが、この制約に従ってプレイするという行為の代表がゲームなのです。
制約があるために、ゲームは問題解決としての探索空間は定式化しやすいというメリットがあります。そこで、伊藤毅志研究室では、将棋や囲碁のような思考ゲームを題材にして人間の認知過程のメカニズムを明らかにしようとしています。伊藤毅志研究室では、アイカメラ(視線計測装置)を用いて将棋や囲碁をプレイする人の視線の動きを調べています。その結果、将棋では、熟達するほど局面を狭く見る傾向があるのに対して、囲碁では逆で、熟達者ほど局面を広く見るということがわかってきました(図3)。同じ盤を挟んで遊ぶゲームでも、ゲーム(課題)の違いに応じて認知過程は異なるのです。
また、「5五将棋」という5×5マスの将棋ゲームを題材にして、初心者がゲームを覚えて上手くなっていく過程で脳活動にどのような変化が現れるのかについて、理化学研究所と共同で調べました。大脳の特定の部位(大脳基底核の尾状核)のサイズと学習初期の直観的な問題の正答率に関連があることや、学習による伸びはこのサイズとは関連が無いことを明らかにしました。

図1 共同研究のイメージ。生体計測と人工知能(AI)の2つの大きなテーマがある。
図2 人間の高度な認知活動を対象にした研究を実施している。 高度な認知活動とは、問題解決や学習、感性などである。
図3 囲碁の熟達度による視線の動きの違い。左が初級者、中央が中級者、右が上級者である。

コンピュータを人間らしくする

一方、伊藤毅志研究室では、様々な思考ゲームを題材に、長い間人工知能(AI)の研究も行ってきました。ゲームに習熟した人の思考過程を研究するということと、コンピュータにその知的プレイをさせるAIを作るということは対になっています。
最近では、将棋をプレイするコンピュータがどんどん強くなっており、公開対局でプロ棋士を破るプログラムも現れています。また、テレビゲームやスマートフォンのゲーム、パソコンゲームの世界では、将棋や囲碁、オセロ、麻雀などがソフトウエア(アプリ)として、ごく普通に普及しています。
ここで問題になるのは、ゲーム用の人工知能の強さの問題です。将棋プログラムは、すでにアマチュアを超えており、一般のアマチュアプレイヤは普通に戦えば負けることになります。負けるとわかっている相手との対戦ほど味気ないものはありません。
そこで伊藤研究室では、人間らしい自然な弱さを実現する人工知能(AI)の研究を始めています。弱さの実現手法はいくつか考えられますが、伊藤研究室では、局面の優劣を判断する評価関数を弱いプレイヤの棋譜を教師データにした学習をする方法を考案し、その有効性を示しています。また、人間のミス(悪手)に着目して、人間らしいミスとは何かについて考察して、コンピュータに積極的にミスをさせようという試みも行われています。人間らしいミス(ヒューマンエラー)のモデルを持ったシステムを構築することで、自然で弱いAIの実現を目指すばかりか、人間のミスのメカニズムについても深く考察しています。
さらに、プレイスタイルを備えたゲームAIの開発にも取り組んでいます。そのため、人間のプレイスタイル(個性)を感じる要素を抽出しようとしています。将棋を例に挙げれば、棋風(プレイスタイル)に関係しそうな要素を列挙し、棋譜を調べて特徴となる要素と特徴そのものを同定することを試みています。また、デジタルゲームを対象に、熟達者のプレイのデータ(プレイログ)の分析を行って、熟達者らしいプレイの模倣も行っています。

図4 カーリングの戦略支援システムの提案。石(ストーン)の配置から、最善と思われるショットを選び出す。

もう一つ伊藤毅志研究室で今後大きなテーマの一つになりそうなことは、スポーツの戦略支援システムに関する研究です。思考ゲームで成果を収めているAI技術をスポーツに応用しようというものです。野球やサッカー、アメフトなどのスポーツでは、勝つため(あるいは負けないため)の戦略を構築することは重要です。このように戦略性の高いゲームの戦略支援をAIを利用して行わせようというも のです。
現在、氷上のチェスとも呼ばれるカーリングを対象に、物理シミュレーションを内蔵した戦略支援システムの開発を進めています(図4)。

研究・産学連携