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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
牧 研究室

ホタル生物発光型標識材料と高選択性貴金属還元触媒の創製と実用化

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 牧 昌次郎 助教
所属学会 アメリカ化学会、アメリカ電気化学会、電気化学会 有機電気化学研究会、日本化学会、日本廃棄物処理施設技術管理者協議会、日本薬学会 医薬化学部会、有機合成化学協会、癌学会、分子生物学会
研究室HP http://www.firefly.pc.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

牧 昌次郎
Shojiro MAKI
キーワード

近赤外(NIR)発光、アカルミネ®、化学発光、可視化、癌、貴金属還元触媒、蛍光、再生医療、発光基質、発光酵素、パラジウム水素化触媒、標識材料、ホタル生物発光系、ルシフェラーゼ、ルシフェリン

研究概要

ホタル生物発光型標識材料の創製と技術開発研究

当研究室では、ホタルの発光原理をモデルとして、生体透過性の高い長波長光で、生体深部の組織や癌細胞を可視化する人工標識材料「アカルミネ®」やRGB(赤緑青)三原色発光を実現した他、画期的な貴金属還元触媒「担持型パラジウム水素化触媒」などの開発研究を行い、大きな実績を挙げている。

世界最長波長標識材料「アカルミネ®」を開発、生体深部組織・細胞を可視化

市販世界一の長波長標識材料 アカルミネ®

ホタル発光系の標識材料は、ライフサイエンス分野で既に世界中で幅広く使われている。その利点と理由は、(1)発光効率が高いこと、(2)冷光であり生体機能に影響を与えずに可視化が可能なこと、(3)放射性同位体等の使用から蛍光ラベルによる生体内可視化技術・方法への移行が急増していることだ。しかし、天然物質系の波長は560nm(黄色く見える光)なので、血液などに吸収されて光が透過せず、生体の深部にある癌などの腫瘍組織や細胞の可視化は、既存の技術では限界とされているが、癌転移の研究や再生医療の実用化には、長波長標識材料技術が必要と世界的にも考えられている。
この問題を克服するために、当研究室ではホタルの発光メカニズムに関わる発光基質(ルシフェリン)と発光酵素(ルシフェラーゼ)の反応機構を解析し、有機合成の技術を応用して、675nmの世界最長波長発光物質「アカルミネ®」の開発に成功した。この技術開発により、生体深部にある癌腫瘍などの組織や細胞を可視化し切開せずに観察を(in vivo:生体内で)継続することが可能になった。

RGB三原色発光、発光活性向上技術を開発

発光基質の変換による多色化

この長波長を変化させる技術で、RGB三原色の発光(赤:675nm、緑:560nm、青:450nm)を創出し、さらに波長を30nm刻みで変えることにも成功している。また、発光活性向上技術も開発した。

高分子シート担持型パラジウム水素化触媒を開発

貴金属還元触媒の研究では、水素添加反応の選択性が自在に制御できる全く新しい「高分子シート担持型パラジウム水素化触媒」を開発した。この触媒は、パラジウム金属を高分子のシートの表面に担持することで、触媒反応が簡単になり連続反応も可能となる。これにより、加水素分解反応を伴わない水素化反応や置換数を選択可能な部分水素添加にも、高い選択性を実現できる。

アドバンテージ

アカルミネ®を有機合成の強みで開発

発光物質を分離・抽出

当研究室は「最先端でナンバー1の技術を開発する」というポリシーのもと、さまざまな知見やアイデアを駆使して、今まで無かったものの創製を目指している。
まず、ホタル生物発光型標識材料「アカルミネR」に関しては、当時一般的だった酵素の構造変換による発光物質の生成では630nm程度が長波長の限界で、それ以上長くはならないと言われていた。そこで、牧は酵素が作用する物質すなわち基質の方を構造変換することで、長波長を実現できないかと考えた。ところが、発光基質は、少し構造を変えるだけで光らなくなる。また、芳香環部位のアニオン構造が発光には必須とされており、構造改変の自由度を制限していた。

RGB三原色発光を医薬品開発手法で実現

そこで、薬学にも精通している牧は、医薬品開発でよく利用される構造活性相関の方法を応用できないかと考えた。この技術は、有機合成のやり方で少し構造を変えた化合物をたくさん作り、1つ1つその特性を見ていくというものだ。これで、化学構造と発光色の関連が解明できた。具体的には、芳香環部位の非アニオン化構造かつ発光基質の中に二重結合が1個あるかないかで、波長が100nmくらい違うことを発見できたのだ。この技術を使うことで、ホタル生物発光系人工発光物質では難しいとされていたRGB三原色発光を実現し、市販材料では世界一の最長波長675nmを達成したのだ。

発光物質を濃縮
発光物質の検証

高分子シート担持型パラジウム水素化触媒の発想

高分子シート担持型パラジウム水素化触媒は、有機合成を専門にしていた牧が欲しかったものを具現化したものだ。もともと、複雑な化合物には二重結合がいくつも存在する。従来は、その中から指定の二重結合だけを還元させたいときに、ピンポイントで反応する触媒が存在しなかった。そこで、牧は既存方法と異なる触媒調製をすれば選択還元ができるのではないかと考え、生まれたのが、金属水溶液を綿状のようなものに染み込ませて高分子シートへ金属触媒を担持させる手法だ。
この手法には、①加水素分解反応を伴わない水素化反応、②置換数選択的な水素部分水素添加、③繰り返し利用可能なリユース、触媒量低減のリデュース、回収・再生容易なリサイクルの3R、④低発火性/安全性、⑤耐久性、⑥量産性、⑦低価格等のメリットがあり、幅広い分野で利用できる。
2005年に有機電子移動化学奨励賞、2011年度に電気通信大学優秀教員賞を受賞した。

今後の展開

アカルミネ®は癌や再生医療の最先端の研究に最適

当研究室のもう1つのポリシーは「欲しい・使える・役に立つ技術を開発する」だ。多くの企業や研究者と積極的に共同研究を行い、実際に現場の声を聞きながら、使える製品を開発することを目指している。
2011年、世界最長波長675nmのホタル生物発光型標識材料「アカルミネ®」を、黒金化成の技術協力を得て、和光純薬工業が市販した。「アカルミネ®」は先端ライフサイエンスの分野で使え、とりわけ癌などの腫瘍学や再生医療の高度医療研究に最適な製品だ。この標識材料を使えば、生体を切開しなくても生きたまま生体深部の組織や細胞の状態が継続的に確認できるようになり、動物実験の効率が大幅に向上する。

アカルミネ®の技術開発研究で世界をリードしたい

高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置

さらに、iPS細胞の技術開発研究で日本の再生医療の実用化が注目されている中、電気通信大学の支援で製品化した「アカルミネR」を使用して、再生医療に加え発癌・増殖・転移について解明できる道を拓き、腫瘍学の研究分野でも日本の技術研究が世界をリードしていけるよう尽力したい。そのために、多色発光材料の高性能化(輝度・感度向上)、これに適する機器・材料開発を実現したい。

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