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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
長井 研究室

人間のように学び、成長していくAIロボットをつくる

所属 大学院情報理工学研究科
機械知能システム学専攻
メンバー 長井 隆行 教授
所属学会 米国電気電子学会(IEEE)、人工知能学会、日本ロボット学会、情報処理学会、電子情報通信学会
研究室HP http://apple.ee.uec.ac.jp/isyslab/
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掲載情報は2017年3月現在

長井 隆行 Takayuki NAGAI
キーワード

人工知能、ロボット、機械学習、認知発達ロボティクス、記号創発ロボティクス、コミュニケーション、概念獲得、言語獲得、構成的アプローチ

人間と同じように考え、行動する人工知能(AI)ロボットはいつか実現するのでしょうか。現在のAI研究の大半は、特定の能力だけを飛躍的に高めた、いわゆる「特化型」のAIを目指すものであり、人間の知能の総体を作り上げるものではありません。

赤ちゃんから育てる

これに対して、長井隆行教授は「赤ちゃんが周りの環境から刺激を受けて少しずつ成長する」という、人間と同じプロセスでロボットを育てることを目指しています。真っさらに近い状態のロボットを実環境で人間とやり取りさせ、そのコミュニケーションを通じて視覚や聴覚、触覚などに関わる概念や言語を獲得させるのです。こうした研究によって、最終的に「本質的に人間に似た」自律ロボットを実現しようとしています。
最近、重要なテーマとして取り組んでいるのが、ロボットに「自分」と「他人」とを区別させることです。人間の0〜1歳の赤ちゃんは、まだ自分だけの閉じた世界にいますが、母親など大人と関わることにより、次第に他人というものを理解していきます。ロボットも同様で、現在は「自分」「他人」という概念を持っていないのですが、それが判別できるようになると、「一つのハードルを越え、次のステップに進める」と長井教授は考えています。
単純化して言うならば、自分とは「自分の出した命令で動く存在」であり、他人とは「自分と似ているが、自分の出した命令では動かず、逆に、命令を出さなくても動く存在」です。この違いが分かれば、相手にも意図があり、目的を持って動いているということが理解できるようになります。

知能と体、関係性を融合

研究のアプローチ

長井教授が取り組むAIロボットの研究は、「知能」「体」「関係性」という三つの領域に大きく分けられます。知能とは、概念・言語の獲得や理解、コミュニケーション能力の体得です。現在、人間で言えば赤ちゃんの状態から、「ロボットに1カ月程度、母親が子どもにそうするように、毎日さまざまな刺激を与えて学習させることで、人間の1〜2歳と同等の言語知識が再現できている」そうです。

一方、「体」の研究は、機械工学や制御工学に基づくいわゆるロボット工学であり、動作能力の高いロボットの開発を目指すものです。ロボットを家庭などでロバスト(頑強)に動かすための評価の一環として、長井研究室では、世界各国の研究機関が家庭用タスクの技術を競う『ロボカップ@ホーム』に毎年参加しており、世界大会や日本大会でたびたび優勝するほどの実力を持っています。
しかし、知能と体を備えていれば、人間のようなロボットが作れるかというと、そうではありません。重要なのは三つ目の「関係性」であり、これは他者との関わりや共感、社会性といった概念です。先ほどの知能における学習をそのまま続けても、「3歳、4歳の言語水準に達することはないだろう」と長井教授は考えています。

ロボットを幼稚園へ

人と人との関係性について研究するため、長井教授は、実際に幼稚園の子どもたちの遊びや行動を計測し、解析した上でモデル化する研究に取り組んでいます。集団の中では、月齢の低い子は次第に周囲に合わせるようになっていきますが、月齢が上がってくると、次は、他人とは違う「自分の役割」を子どもなりに考え、他者と関わるようになるといいます。

ロボットに学習させている様子

幼稚園における子どもの計測・解析
これこそが自分と他人という概念の獲得であり、これを土台にして、3〜4歳の知能が成り立ち、「さらに、より複数のつながりを理解して社会性を持たせれば、5〜6歳相当の知能をロボットに持たせられるのではないか」と長井教授は予測しています。
今後は、現在1〜2歳レベルのロボットに実際の試験を受けさせて幼稚園に入園させ、人間の子どもと一緒に、園生活を送らせることを目標にしています。このように、知能と体、関係性の要素を融合しながら、AIロボットの開発を進めています。


ロボットから人を知る

長井教授の研究のモチベーションは、ロボットの開発を通じて「人間を知ること」にあります。人間が持つ柔軟な知能をロボットで再現することは、人間の本質をより深く理解することにつながります。そのために、機械を動かすという工学的な立場を取りながら、脳科学や言語学、また認知科学や発達心理学といった幅広い学問の知見を活用し、サイエンティフィック(科学的)な研究に取り組んでいます。

『ロボカップ@ホーム』に参加
そこで重要なのは、あらゆる知を総合して、最終的に一つのロボットを作り上げることです。人間は多様な能力を持つ“総体”であり、全体を作らないと見えてこないことがあります。長井教授は「なるべく幅広く見て、かつ、できるだけ深めた上で、これらをつないで全体として動かす」という、『構成的アプローチによる人間科学』を掲げています。
未来は、ロボットが人間の世界に入り込み、例えば、「学校のクラスの半分の生徒がロボット」というような時代がやってくるかもしれません。人間が生きる環境に適応し、自ら学習するロボットは、人を助け、人の日常生活をより豊かなものにしてくれるでしょう。長井教授は「いずれ、ロボット自身が社会を形成するようになるだろう」と見通しています。

【取材・文=藤木信穂】

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