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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
中村(信) 研究室

多価イオン原子物理学の研究、そのための多価イオン源の開発

所属 レーザー新世代研究センター
メンバー 中村 信行 准教授
所属学会 原子衝突研究協会、日本物理学会、原子分子データ応用フォーラム
研究室HP http://yebisu.ils.uec.ac.jp/nakamura/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

中村 信行
Nobuyuki NAKAMURA
キーワード

多価イオン、原子物理、宇宙物理、量子電磁力学、天文学、核融合、電子ビーム、Tokyo-EBIT、CoBIT、EBIT(電子ビームイオントラップ)

研究概要

多価イオンの物理学的な研究、多価イオン源の開発

当研究室では、多価イオンの本質に関するさまざまな事象を原子物理学的観点から解明したいと考え、あわせて多価イオン生成装置の開発を行っている。
原子は原子核とそれを取り巻く電子で成り立っている。この電子を奪って不安定な状態にしたものが多価イオンだ。多価イオンは他の物質とぶつかったとき、強い力で電子を奪おうとすることから、電子を吸い取るブラックホール、電子の掃除機だと言われることがある。この多価イオンに関しては未だに分からない部分が多く、現在物理学における最も正確な理論といわれる量子電磁力学でも適応限界を超えてしまうことがあるかも知れないと言われている。

天文台や核融合研究施設との共同研究

多価イオンは地球上では自然には存在しないが、太陽など宇宙にある高温の場所では、ごく自然に存在する。このことから、多価イオンの性質を学ぶことによって太陽で何が起こっているかを理解できるようになる。そのため、宇宙物理学の研究機関では多価イオンの情報が不可欠なのだ。
また地球上でも、核融合実験炉という高温下で発電を実現するために、多価イオンが重要な鍵の一つを握っている。このことから、天文台や核融合研究施設とは密接なつながりを持ち、相互にさまざまなデータをやり取りして、多価イオンの特性について共同研究を行っている。

多価イオンの応用

さらに、多価イオンの応用として、次世代リソグラフィ光源として利用する研究が進められている。リソグラフィは高集積化が進み、加工精度を上げるにはより波長の短い光源が必要になった。そこで次世代では、プラズマ中で発光する多価イオンの極端紫外光を利用した光源が第一の候補となっている。多価イオンは元素や取り出す電子の数によって発光の仕方が違うので、それらを制御することで望みの波長の光を取り出せることが魅力の一つだ。

Tokyo―EBIT(電子ビームイオントラップ)

多価イオンの実験を行うためには、専用の実験装置が必要となる。大きな加速器を使って加速した高速イオンを薄膜に当てたり、核融合実験炉のプラズマなどでも多価イオンを発生させることができるが、装置も大型になる上、高速で運動する多価イオンは研究や応用に都合が悪いことが多い。
1997年、大谷俊介教授とともに中村は、世界最大規模・最高性能の多価イオン生成装置であるTokyo—EBITを電通大レーザー新世代研究センター内に製作した。
この装置は、どのような元素でも望みの価数として自由に取り出すことができることから、自由度の高い多価イオン研究が可能となる。このように、Tokyo—EBITは高性能な多価イオン源であるが、高さが3mを超える大型の装置であるほか、超伝導コイルを冷却するために液体ヘリウムが使われていて、稼働するためにはかなりのランニングコストがかかる。

CoBIT

そこで当研究室は、Tokyo—EBITの基本構造を保ちながら、高さを約6分の1の50cmに小型化したCoBIT(コビット)を製作した。利用できる価数には制限があるものの、例えば太陽大気に多く存在する10〜20価程度の鉄多価イオンなどを作れる性能を持っており、一般の多価イオン実験をするには充分な機能を備えている。このように、当研究室では多価イオンの研究を行う一方で、効率よくイオンを発生させる実験装置の開発にも力を注いでいる。

アドバンテージ

Tokyo―EBITの開発で蓄積したノウハウや知見を生かして、小型の多価イオン源CoBITを開発

Tokyo-EBIT(高エネルギー電子ビームイオントラップ)

当研究室ではこれまでに、Tokyo—EBITを製作したことでさまざまな知見やノウハウが蓄積され、新しい多価イオン源の製作に大いに役立っている。小型の多価イオン源CoBITも当研究室で全設計と組み立てを行った。トラップしたイオンに対し磁場によって圧縮した電子ビームを当てて電子をはがしていくという、Tokyo—EBITの機能を凝縮しつつ、磁場を生み出すコイルには高温超伝導線を利用するなど新しい技術も取り入れている。これにより、大きな実験室を必要としないコンパクトな筐体(きょうたい)と、液体ヘリウムを使わない低ランニングコストを実現した。
Tokyo—EBITに比べて生成しうる価数には制限があるが、天文台での宇宙物理学や核融合研究施設のプラズマ原子過程研究などで特に重要である中程度の価数を持った多価イオンには、Tokyo—EBITを利用するよりも高効率な測定が可能である。しかも、大規模な実験室を必要とせずに自由度の高い多価イオンを取り出したり分光したりできる装置は日本には他に存在しないので、当研究室の大きなアドバンテージとなっている。

今後の展開

より小型で高性能な多価イオン発生装置を開発し、多価イオン研究を盛り上げたい

CoBIT(小型電子ビームイオントラップ)

当研究室が追究してきた課題「多価イオンの本質の解明」は、まだまだ当初の目的を達成しているとは言えない。そのため、今後も引き続きこの課題の解明に努力していく。そして、多価イオンの研究に不可欠な多価イオン源の開発も積極的に進めていきたい。
CoBITは本格的な機能を持ちながら小型化を実現したという意味では成功したと言えるが、まだ改良できると考えている。当研究室の持っている多価イオン源の開発に関するノウハウと研究成果を使って、共同研究を行う企業があれば、多価イオン源をより小型にすることも、より高価数のイオンをより多く取り出すこともできるようになるだろう。
より小型で高性能な多価イオン発生装置ができることで、さまざまな研究施設に多価イオン源を持ち込んで利用できるようになるほか、企業でも製品開発や分析のために利用できるようになり、利用範囲や応用領域がもっと拡大していくはずだ。
そうすれば、多価イオンに関する研究が今以上に盛んに行われるようになり、新たな発見も生まれ、さらに応用分野も広がるだろう。このように当研究室では、多価イオン源の開発で、多価イオンをより身近なものにしていきたいと考えている。

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