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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
山尾 研究室

IoT時代のワイヤレス通信
〜ITSからネットワーク技術、5G向けハードウエアまで〜

所属 先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター(AWCC)
センター長
メンバー 山尾 泰 教授
所属学会 米電気電子学会(IEEE)、電子情報通信学会(フェロー)、情報処理学会
研究室HP http://www.awcc.uec.ac.jp/yamaolab/
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掲載情報は2017年11月現在

山尾 泰 Yasushi YAMAO
キーワード

ユビキタスワイヤレス、ITS、アドホックネットワーク、リコンフィギャラブル無線回路、非線形補償

「ワイヤレス(無線)通信」とは古くて新しい言葉です。かつてネットワークのほとんどは有線でつながっていましたが、現代ではスマートフォンやタブレット端末はもちろん、自動車や家電などもワイヤレス通信が主流になっています。今後、あらゆるモノがネットワークにつながるIoT(モノのインターネット)時代が到来すれば、ワイヤレス通信の出番はますます増えていくことでしょう。

社会を支えるワイヤレス

研究室のテーマ
研究室のテーマ

電気通信大学の「先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター(AWCC)」は、2016年の設立10周年を機に、“情報通信を支えるワイヤレスから、社会基盤を支えるワイヤレスへ”という新たなビジョンを掲げて体制を一新しました。ワイヤレス通信は、スマホやIT機器といった情報通信分野だけでなく、社会の至るところに浸透しつつあります。センター長を務める山尾泰教授は、「例えば、少子高齢化など多くの問題に直面する地方の活性化などにもワイヤレス通信が役立つだろう」と考えています。
センターでは、安全・安心な社会を形成するセキュリティや防災ネットワーク技術、アンテナやモジュールなどのハードウエア技術、第5世代移動通信システム(5G)や自律分散ネットワークなどの先進技術、環境発電(エナジーハーベスティング)やスマートメーターなどの低電力技術といった、四つの領域でワイヤレス通信分野の研究を進めています。

ITSは自動運転の基盤へ

そのなかで山尾研究室では、「モノとモノをつなぐアンビエント(周囲に溶け込む)ワイヤレス通信」と、「5Gに向けたスマートハードウエア」の二つのカテゴリの研究を推進しています。
アンビエント通信の一つとして、近年、自動運転とともに注目されている「高度道路交通システム(ITS)」向けのワイヤレス通信の研究を手がけています。山尾教授は、ITSに関する国家プロジェクトに参画し、最近、車-車間通信の信頼性をより高める技術を開発しました。これまでITSと言えば、特定の範囲にいるすべての車間で直接情報を共有する通信手法が一般的でした。

中継器で通信をコントロール

これに対して、山尾教授ら電通大のグループは、道路の交差点に設置されている信号機の上に「中継器」を取り付け、そこで車-車間通信をコントロールする新しい手法を提案しました。ある車が発信した情報を、中継器を経由してほかの車へと送る仕組みです。
従来は、ビルなどの建物に遮られて通信に失敗した場合には、再び通信を試みる必要があるため、平均で100ミリ秒程度の通信の遅延が生じていました。新手法を導入すれば、遅延時間を20ミリ秒以下に短縮でき、少なくとも自動運転の「レベル3」までは十分適用可能であることを確認しました。
山尾教授は「建物が多く、通信が途絶えやすい都市部の道路上でも、リアルタイムかつ確実に情報を送れる」と見通しており、こうした“交通流”を意識した「協調型」のITSが、レーダーや全地球測位システム(GPS)などを駆使した、いわゆる「自律型」のロボット移動体システムと並んで、自動運転の未来を支える技術になるととらえています。
もう一つは、センサーネットワークなどを想定した、IoT向けの大規模かつ省電力なワイヤレスネットワーク技術の研究です。電池不要のRFID(無線識別)ネットワークなどのほか、限られた空間で衝突させずに通信経路を整理する「自律分散型のマルチホップ通信」も研究しています。

中継アシストによるITS車-車間通信の高信頼・低遅延化

5G向け高機能ハードウエア

一方、将来の5Gに向けて取り組んでいるのが、再構築可能な無線回路である「リコンフィギャラブル高周波(RF)回路」や、周波数を有効に活用するための「非線形補償信号処理」といった高機能なハードウエアの研究です。
RF回路については、用途に応じて周波数を変えられる新型フィルターを開発しました。例えば、スマホには通常6個程度の無線機を搭載する必要がありますが、このフィルターを使うと、1/3個まで無線機を少なくできるため、機器の小型化に寄与できます。非線形補償信号処理とは、アナログ回路に複数の無線信号を入力した時のひずみを小さくし、周波数の利用効率を高める技術です。これらはいずれも、周波数という限られた「無線資源」の極限利用に向けた重要なテーマなのです。
ワイヤレス通信は、医療や健康、セキュリティ、防災、環境、物流など、我々の生活を支える社会基盤に不可欠な技術です。このワイヤレス通信の研究において、山尾教授は企業や他大学などと積極的に協力し、社会に貢献する、より実用的な研究に力を入れています。

8周波数切替リコンフィギャラブルバンドパス・フィルタ
8周波数切替リコンフィギャラブルバンドパス・フィルタ

【取材・文=藤木信穂】

研究・産学連携