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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
野村 研究室

音によるQOLの向上を目指し、
超音波計測やイメージング、生体への超音波の影響などを研究

所属 大学院情報理工学研究科
情報・通信工学専攻
メンバー 野村 英之 准教授
所属学会 日本音響学会、
The Acoustical Society of America、海洋音響学会、
電子情報通信学会、
日本超音波医学会
研究室HP http://ew3.ee.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

野村 英之
Hideyuki NOMURA
キーワード

音響エレクトロニクス、音波、超音波、超音波計測、超音波イメージング、超音波曝露、QOL

音波と音響エレクトロニクス

野村研究室は、音波や振動を扱う研究室です。音波の正体は空気や水などの振動(縦波)ですが、ヒトが聞こえる音は、ある範囲の振動数(周波数、1秒間当たりに振動する回数)に限定されています。このヒトが聞こえる振動数の範囲にある音波を「可聴音」あるいは「可聴音波」と呼びます。周波数で表現するとおおよそ20Hz~20 kHz(1Hzは1秒間に波が1回振動することを意味します)になります。20kHz以上の音は、ヒトには聴こえません。一般にはこの高い周波数の音波を、「超音波」と呼びます。
エレクトロニクス技術を利用すると、音波や振動の発生と受信、さらには信号の解析や加工が可能になります。このように音波や振動を扱うエレクトロニクス技術を「音響エレクトロニクス」と呼びます。音響エレクトロニクスは、多様な分野に応用されています(図1)。例えば超音波の応用分野には医療用の超音波生体イメージング、超音波距離計、超音波浮揚などがあります。
野村研究室はこういったヒトに聞こえる音波や聞こえない音波、さらには騒音や振動などを積極的に活用することで、人々の「QOL(Quality Of Life)(生活の品質)」の向上させることを目指しています(図2)。

図1 音響エレクトロニクスとその応用。ヒトが聞こえる音波(可聴音波)から、ヒトが聞こえない音波(超音波)までを扱う。
図2 野村研究室の研究目的。音波・振動によって人々の生活品質(QOL)の向上を目指す。

広範囲かつ高分解能の超音波イメージング

それでは野村研究室が現在手掛けている主な研究テーマをご紹介しましょう(図3)。一つは、広範囲かつ高分解能の超音波イメージング技術の開発です。また、非接触超音波イメージングへの応用を想定した、高振幅の非接触音源技術を開発しています。さらに、超音波が人体に与える影響を調べています。
まず、広範囲かつ高分解能の超音波イメージング技術の開発ですが、始めに現在の医療用超音波イメージングについて少し触れます。医療用超音波イメージング装置は超音波の性質を利用して生体内の様子を画像化する機器です。撮影画像の距離分解能は、超音波の周波数を上げることによって向上します。ただし超音波の周波数を上げると生体内の吸収が大きくなり、超音波が深くまで届かなくなります。このため、超音波の周波数はおおよそ1MHz~20MHzまでにとどまっています。

図3 野村研究室の主な研究テーマ。超音波計測やイメージングを主題とし、それに伴う、音源の開発や、超音波の人体影響、などがある。

超音波の周波数を下げると、生体内でも深い部分の断面をイメージングできるようになります。しかし超音波の周波数が低いと、音波が生体内を広がりやすくなるという問題があります。そこで野村研究室では、「パラメトリック音源」と呼ぶ技術を導入し、周波数が低いにも関わらず波の広がりを抑えた超音波を発生させています。
パラメトリック音源では、周波数がわずかに違う二種類の超音波を同じ方向に送信します。すると、二つの周波数の違い(差分)に相当する周波数(差周波数成分)の音波(パラメトリック差音、または単に差音)が、媒質の非線形性により生成され、かつ鋭いビームとなって放射されます(図4はこの技術を応用したパラメトリックスピーカ)。したがって差音は低い周波数の超音波であるにも関わらず、空間的に広がらずに狭い範囲で遠くまで届くことになります。
ただし差音は信号強度が小さいという問題があります。また、 周波数が低くなると、距離分解能が低下します。これらのため、撮影画像の画質が悪化します。これを抑えるために、超音波エコー信号をパルス圧縮して、信号強度を増加させ、さらに距離分解能を高めることを試みています。

図4 パラメトリック音源によって発生する音波の広がり。左は通常の音源(スピーカ)。右はパラメトリック音源(パラメトリック・スピーカ)。

高振幅かつ非接触の超音波音源

次に、非接触で利用できる高振幅な音源技術についてご説明しましょう。超音波イメージングの音源は、通常、生体(対象物体)の表面と接触させます。このとき、音源と生体の間に空気などの層があると、超音波が空気と音源、または空気と生体表面で反射してしまい、ほとんど中へ入っていきません。そのため音源と生体表面を密着させる必要があります。さらにこのとき、ゼリー状の物質を間に挟み、より超音波を伝えやすくします。
しかし生体表面に傷がある、またゼリーを塗ることの不快感、といった理由によって、音源を接触させないことが望ましい場合があります。何らかの工夫により、非接触で生体の表面に仮想的な音源を構築しなければなりません。
すぐに考えつくのは、パラボラアンテナのような超音波発生器でしょう。パラボラ状の音源から超音波を放射し、空間の1点に集め、超音波のエネルギーを効率よく利用するのです。
野村研究室が手掛けているのは、「時間反転(タイムリバーサル)音響波」を利用する方法です。例えば、スピーカから放射した音波をマイクロホンで受波し、今度はマイクロホンの位置から時間を逆まわしにした信号を放射してやると、元のスピーカ位置に音波が戻って行く現象が見られます。これが時間反転音響波です。この技術を応用して、ある点に音波を集束する装置が実現できます。例えば音源を箱の中に置き、箱の1点に孔を開けておきます。音源から放射された超音波は箱の内部で何度も反射します。すると箱の孔からは、波形の違う様々な超音波が出てきます。このとき箱の外の超音波を集束させたい位置で超音波を測定し、時間を逆回しにした信号を作ります。
この時間反転させた信号を音源に加えると、面白いことに、先ほどの測定点で焦点を結ぶような超音波が作られます。測定点が生体の表面であれば、生体の表面に超音波の音源が仮想的に構築できたことになります。
測定点は箱の外であれば、原理的にはどの地点でも構いません。前処理として音波を測定し、時間反転音響波を生成すれば、どの地点にも仮想的な音源を構築できます。

超音波利用の安全性

ここからは、超音波が人体に与える影響、特に超音波曝露の研究についてご紹介しましょう。超音波は基本的に人体に安全だとされています。一方で強力な超音波が発生しているスピーカの前に人が立つと、気持ちが悪くなったり、頭痛を起こしたりといったことが報告されています。人間には聴こえていない超音波なのですが、人体に何らかの影響を及ぼしているとの懸念は残ります。
超音波の浴び方によっても影響は違う可能性があります。例えば長期間にわたって弱い超音波を浴び続けた場合と、短期間に強い超音波を浴びた場合は、切り分けて考える必要があります。このような事柄を理論的および実験的に検討しているところです。

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