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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
庄野 研究室

ベイズ推定を使った画像修復とCT画像のパターン認識

所属 大学院情報理工学研究科
総合情報学専攻
メンバー 庄野 逸 教授
所属学会 電子情報通信学会、日本神経回路学会、日本物理学会、情報処理学会、IEEE
研究室HP http://daemon.inf.uec.ac.jp/ja/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

庄野 逸
Hayaru SHOUNO
キーワード

ベイズ推定、PET画像、ベイズ定理、画像修復、画像認識、ニューラルネット、ディープラーニング

研究概要

PET画像が抱えるジレンマを解決するための研究

昨今では、体の異常を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)やPETスキャナが使われるようになった。これにより、病巣を発見する技術や予防医学などが急速に発展し、医療業界に大きな変革を与えた。
ただし、これらのスキャナはレントゲンと同様に放射線を使い、体の内部を輪切りにした断層画像を撮影し表示する装置であるため、画像を撮るために被曝するといった短所がある。つまり、きれいな画像を得るためには放射線源を強める必要があるが、被曝の度合いが増えるので、線量をある程度制限しながらも、できるだけきれいな画像を表示しなければというジレンマを抱えているのだ。

ベイズ推定の確率論的手法による画像修復技術

当研究室では、数理手法を使った画像修復技術で、このジレンマを解消するための研究を行っている。(既存のPETやX線CTは、投影データから分布(構造)を画像として再構成する。この投影データはラドン変換で記述される。)その際に、当研究室が研究している画像修復の手法を使って本物の画像らしさの要素を加えることで、よりクリアな画像を実現した。画像修復とは本物が持っている画像らしさを確率モデルで表したもので、当研究室ではベイズ推定の確率論的手法を使ってこれを実現している。
画像らしさの一つの例として、「隣り合っているピクセルが似ている」という知識を導入し、観測データとのバランスを取るところで、ベイズ推定を利用した。この方法を使うことで、おおよそ確からしい画像を作り出すことができる。ただし、観測したデータと画像らしさのバランスはきちんと設定する必要があるので、数理的にバランスを調整する手法を採用している。
従来の方法では、ノイズが増えるとざらついた感じになってしまい、画像の認識が難しくなる。
当研究室は、ベイズ推定の確立方式を使って、本当の画像らしさの要素をブレンドすることにより、ノイズが増えることで画質は悪くなるものの、画像認識においては従来方法に比べてかなりの成果を得ることができた。

難治性肺疾患発見のための人体の画像認識の研究

画像修復の他にも、画像認識の研究も行っている。これは、CTでスキャンした画像からシステマティックに病気の箇所を見つけ出すというものだ。当研究室がターゲットにしているのは、びまん性肺疾患という難治性の病気だ。この病気は肺炎や肺がんのような系統だったクラス分けができておらず、病変領域を拡大させないことが重要とされている。医師としては病変領域の早期発見が重要視されているので、撮り貯めたCT画像の中から病巣を見つけ出し、病変の診断を行う必要がある。そこで、パターン認識を使ってCT画像の中からびまん性肺疾患のクラスを導き出す作業を行っている。

ベイズ画像再構成法と従来手法との比較。ベイズ画像再構成法が原画像に近い再構成を行うことができる。(PET ファントムデータは,東京都健康長寿医療センター提供による)

具体的には、CT画像から特徴を抽出する作業とパターン認識器を組み合わせることだ。認識器は確率方式を組み合わせた手法を使った。通常は人間の視覚に合わせて特徴量を作ってやることで認識することができるのだが、この場合は普段見慣れないパターンなので、特徴量をディープラーニングといったニューラルネットワークの技法で算出している。
人体の画像認識は簡単ではない。2次元の画像だと単なる丸として扱われるものが、3次元で見ると実は血管であったということも起こりうるのだ。このように、人体の画像認識は3次元的に行うのが正しい。
当研究室で開発した特殊なパターン認識を導入することで、現在では8〜9割程度は解析できるようになった。

アドバンテージ

ベイズ推定の大量の計算を効率良く行うアルゴリズム開発

まず、ベイズ推定に関しては、かなりのアドバンテージがあると自負している。当研究室が利用した方式だと、隣のピクセルと似ているといった知識を入れ、ベイズ推定の膨大な計算を効率良く求めることを可能にした。この点で、他の研究室をリードしていると言えるだろう。
ベイズ推定は大量の計算を行わなくてはならない計算手法だ。例えば16×16(=256)ピクセルの白黒画像という小さな画像を処理する場合でも、全ての取り得る画像を勘案すると2の256乗の場合を考えなくてはならない。そのため、昔からベイズ推定が良いことは分かっていたが、計算量が膨大になってしまうことで、実際はあまり使われていなかったのだ。

パターン認識の難しい人体画像を扱っている強み

また、普通でない画像を扱っていることが、当研究室のもう1つの大きなアドバンテージだと言える。人体のパターン認識を行うことは非常に難しい。2次元の画像であっても、常に立体を意識しなければならない。これは一朝一夕に確立できるものではない。
このような認識の難しい画像に対してディープラーニングなどの技術を活かし、あまり馴染みのない特徴の抽出し、3次元模様の再構築、さらには時間的な要素を加えた4次元データへの活用を提案していきたい。

今後の展開

医師の負担を軽減する診断支援の手法を研究したい

X線CT撮影装置と再構成画

当研究室の研究が、医師の手助けになればと思っている。
セカンドオピニオン制度が設けられ、1人の医師がより多くの患者を診るようになった。さらに、撮像デバイスの進化は著しく、最近では1回のスキャンで1人の患者に対して500枚以上の画像情報が得られるようになり、この画像の中から病気を見つけるのは非常に手間のかかる作業となっている。医師の負担は増すばかりだ。そこで、従来医師の経験でしか得られなかった技術・ノウハウを、当研究室の研究による機械診断支援でシステマティックに提供することで、医師の負担を少しでも軽減できればと考えている。

動いている人間を撮りたい

ICP-RIE

さらに、心臓の動きなど、動いているものを撮りたいというニーズがある。しかしながら、現状の設備では放射線が強すぎて人間にはまだ使えない。そこで、当研究室の定理を使うことで、被曝量を少なくして利用できるのではないだろうか? このように、当研究室の研究をさまざまなものに応用していきたい。

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