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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
沼尾 研究室

ビッグデータ解析による
「人」「物」「情報」に対するトレーサビリティ

所属 大学院情報理工学研究科
情報・通信工学専攻
メンバー 沼尾 雅之 教授
所属学会 人工知能学会、情報処理学会、IEEEコンピュータソサエティ
研究室HP http://www.nm.cs.uec.ac.jp
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掲載情報は2015年8月現在

沼尾 雅之
Masayuki NUMAO
キーワード

トレーサビリティ、データマイニング、RFID、センサネット、セキュリティ・プライバシー

研究概要

多様なセンサネットによるトレーサビリティの実現

近年の少子高齢化に伴い、一人住まいや介護施設における高齢者の見守りや健康管理におけるIT利用の必要性が高まっている。また、食品に対しての安心、安全や、自動車を始めとした工業製品の品質管理も大変重要になってきている。
これらは対象領域としては、人の行動、食品の流通経路、製品の製造工程という具合に異なるが、IT的には、センサネットで収集したビッグデータを解析し、トレーサビリシステムを構築することによって解決できる。

RFID見守りシステム

当研究室では「人」「物」「情報」などさまざまな分野でのトレーサビリティを実現するための基盤技術や、センサネットで集めた大量のデータを解析し、原因究明を行うビッグデータ解析研究開発をしている。具体的には、RFID(無線ICタグ)の規格などを策定するEPCglobalで標準化されたGen2タグを使った複数IDの同時読み取りシステム、マットセンサやマイクロ波センサなどを利用した生体情報モニタシステム、アプリケーション主導型のIDデータ収集・検索システムや収集された大量の時系列データから特定のパターンを抽出するためのマイニング技術といった、トレーサビリティに必要な一連の技術の研究を行っている。

「物」のトレーサビリティ

見守りシステム可視化

製品に対して問題が起こった際に、原因を究明し、迅速に解決するためのもの。例えば、自動車に問題が発覚した場合、まず問題を解析して、その原因となったパーツを特定する。次に、そのパーツが、どこの部品業者で製造されたどのロットのものかを追跡する。そこで、問題となるパーツ、業者、ロットが特定されることによって、根本原因がつきとめられ、再発防止につなげることができる。さらに、問題となったロットのパーツを使っている自動車を逆向きに追跡することによって、問題のある自動車だけをリコールすることができる。

「人」のトレーサビリティ

高齢者や児童などの社会的弱者に対して、プライバシーを保護した見守りシステムを用いて、安全・安心を確保するもの。
パジャマなどに縫い込めるようなパッシブなRFIDを装着することによって、位置と姿勢情報を得ることができ、転倒などの異常事態を検知できる。
また、マットセンサやマイクロ波センサと併用することによって、呼吸や脈拍、睡眠状態などの生体情報を用いた健康管理をすることもできる。

「情報」のトレーサビリティ

美術品についているような出所証明書をデジタルデータでも実現しようというもの。デジタルデータは改ざん・偽造・盗用されやすいことから、著作権の確保が難しい。
データプロビナンスは、デジタルデータがどのように作られたかの履歴を管理・追跡できるようにすることで、そのデータの正当な作成者と所有者を証明するための技術である。画像や音声のデジタルコンテンツの著作権保護に利用されている電子透かし技術なども、このデータプロビナンス技術と一緒に用いることで、より効果的な運用が可能になる。

アドバンテージ

業務の分析からインフラの整備、データマイニングまで、全方向のトレーサビリティ技術を持つ

家電認識システム

トレーサビリティには、業務を理解することと、それに対応してどのような技術が利用できるかを提案することが、大きなポイントとなる。
当研究室では、個々の業務に関して重要な問題がどのようなところで起こるのかを理解できるし、RFIDのような標準化の技術に加え、ネットワークやセキュリティに関する技術、およびデータマイニングに関する技術など、さまざまな技術を持っており、これらの技術を統合して提供できることが大きな特徴となっている。
センサネットの場合、温度、加速度、光などの情報は、各種センサを使ってデジタルデータ化される。これは現実の環境を理解するための基礎データとして、計算機によって解析され、必要なアクションが計画される。アクションを実行するためには、再びデジタルなコマンド列からアクチュエータ(物理的な運動へと変換する機構)を駆動するためのアナログデータへ変換する必要がある。
このようにセンサネットの解析結果を現実世界にフィードバックするためには、デジタルとアナログの両方の特徴を理解していることが必要である。また、機械系、電気系、情報系などのさまざまな技術の統合が必要になる。
当研究室では、過去の経験から業務の内容を理解し、使用する用途に応じて最適なトレーサビリティ技術を選択できる。また、収集した大量のデータに対して、データベースに蓄積する事なく、リアルタイムに処理できるストリーム処理のインフラの整備や、データから特定のパターンを抽出し、事前に問題を予測するといったマイニングも行える。過去の共同研究では、ガラス製造工程を分析して、歩留まり率を向上させたり、電力消費モニタのための電力波形からの家電認識システムを構築したりしている。

今後の展開

人・物に関する検索エンジンを生み出す

SNSなどのソーシャルメディアを使って、一般の人々もさまざまなデータを作り出し、情報爆発の時代だと言われている。さらにIoTの時代が到来し、今後は人の作るデータに加えて、センサネットやIDタグなどの装置が自動的に大量のデータを吐き出すようになり、さらに多くの情報が世に出てくる。
当研究室では、これらの情報を効率的に分析する技術の開発と、そのデータをマイニングして「社会知」(社会全体の知識)を生み出していきたいと考えている。たとえば、人や物の動きも検索できるような「Google」の実現は1つのゴールである。

グローバルなトレーサビリティの技術・システム

電力トレーサビリティ図

また、トレーサビリティのシステムは特定の企業や業種だけで管理していては意味が無い。クラウドを利用したトレーサビリティデータの共有化も図っていく。 これにより、企業が個々にやっていたQC(品質管理)活動を全体化することができ、トレーサビリティを製品の品質を飛躍的によくするための見守り技術にまで高めることができる。
このように、トレーサビリティの技術・システムを使って社会に貢献できる技術を世に出していきたい。

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