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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
成見 研究室

ハイパフォーマンスコンピューティングに関連する
ソフトウェア/ハードウェアの研究

所属 大学院情報理工学研究科
情報・通信工学専攻
メンバー 成見 哲 教授
所属学会 情報処理学会、IEEE
研究室HP http://narumi.cs.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

成見 哲
Tetsu NARUMI
キーワード

コンピュータシミュレーション、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング、高性能計算)、演算装置、アクセラレータプロセッサ、GPU、グラフィックカード、GPGPU(GPUによる汎目的計算)、数値アクセラレータ、FPGA、KNOPPIX for CUDA、ゴードン・ベル賞

研究概要

GPUを用いた科学技術計算の高速化

現代の科学のさまざまな分野でコンピュータシミュレーションは不可欠な技術となっている。例えば、地球温暖化の予測、宇宙の成り立ちの解明、生体高分子やウイルスの分子構造の解析、為替等の市場予測など幅広い分野でシミュレーション技術が使われている。
このような最先端のコンピュータシミュレーションを行うためには、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)が必要となる。さらに、大規模科学技術計算などのHPCを行うためには高速演算が可能なスーパーコンピュータが必要になる。ご存知のとおり、スーパーコンピュータは非常に高価で、簡単に利用できるものではない。
そこで、専用計算機の数値アクセラレータプロセッサの設計を行っていた成見は、GPU(Graphics Processing Unit)に着目した。GPUとは、描画専用の演算装置(プロセッサ)だが、特別なものではなく、一般的なPCのグラフィックカードにも搭載されている。現在のPCゲームの画像は非常に高度になっており、複雑なテクスチャやストラクチャーを高速に動かすのに必要だからだ。

宇宙の大規模構造のシミュレーション

分子間の引力を疑似体験

当研究室では、このGPUの能力を高速演算に活かすための研究を行っている。具体的には、GPUを高速演算に利用するためのプログラミングと、それを組み合わせる並列処理のソフトウェアを組んで大規模科学技術計算を行う。
長崎大学との共同研究、宇宙の成り立ちを解析する「宇宙の大規模構造のシミュレーション」では、45億粒子の動きをシミュレートするために、760個のGPUを使って演算を行った。この研究で使用したシステムは158テラフロップスという高性能を達成し、同様の処理を行うためのスーパーコンピュータなら数十億円かかるところを4000万円程度で実現した。このように、比較的安価なGPUを利用することで、高度なシミュレーションの敷居を低くすることができるのだ。
当研究室では、他にもGPUを使った数値アクセラレータを使って、たんぱく質の性質などを調べる分子動力学シミュレーション、乱流の正確な計算を行う渦法、物理法則に則った世界を実現する仮想物理世界、さらに他の研究室と共同でコンピュータ囲碁などの研究も行っている。

アドバンテージ

制約が多いGPUで高速演算を行うための豊富なノウハウ

USBブートが可能な
KNOPPIX for CUDA

GPUはもともと描画処理を行うための演算装置なので、CPUなどとは違い、オープンにされている情報が少ない。しかも、コア数が多かったり、キャッシュメモリの容量が少なかったりと制約が多く、高速演算に利用するためにはそれなりのノウハウが必要になる。
当研究室では、GPUを使った演算で既にさまざまな実績を挙げており、GPUの機能を理解するハードウェアの面でも、並列計算を行うソフトウェアの面でも一日の長があると言える。

KNOPPIX for CUDA

また、GPUを使った高速演算をより手軽に利用できるように、Linuxをカスタマイズして、GPU向けの開発環境やデモプログラムをセットにした「KNOPPIX for CUDA」を開発した。このOSはDVDやUSBメモリーからブートが可能なので、GPUを使った高速演算が簡単に体感できる。開発環境も同梱されているので、デモプログラムを変更して、GPUで高速演算するための基礎を学んで、自分で別のシミュレーションプログラムを作ることも可能だ。

FPGAを用いたマルチディスプレイ

高速演算以外にも、可視化の研究も行っている。その成果の1つが、複数のディスプレイを並べて1つの画像を表示する、FPGA(書き換え可能なロジック)を用いたマルチディスプレイだ。マルチディスプレイ自体はそれほど珍しいものではないが、当研究室が開発しているものは、FPGAを同期に利用したものだ。それにより、複数台のディスプレイを使用しても正しく3D画像を表示できる、ディスプレイの枠部分を間引いて表示するなど、さまざまな付加価値が付いていることが大きな特徴だ。

ゴードン・ベル賞受賞

現実に、成見も参加した長崎大学を中心とするグループの、GPUを使ったシミュレーションがHPCに関するハードウェア/ソフトウェアの技術開発に貢献する分野で最高の成果を出し、IEEEコンピュータ協会から2009年「ゴードン・ベル賞」コストパフォーマンス部門賞を受賞した。

今後の展開

次世代の日本を支えるハードウェア技術者の育成

分子動力学シミュレーション専用ボード MDGRAPE-3

計算機は数十年後の社会の基盤になりうると考えている。コンピュータを使ってなにかをやりたいと思った時に、その作業に最適なハードウェアを用意することは重要なことであり、今後、ますます必要とされる技術となるであろう。しかし、現状のコンピュータに関しては、ソフトウェア重視になってハードウェアを研究する機会が減少している。そんな傾向に少なからず危機感をいだきながら、授業や研究の中で1人でも多くの学生にハードウェアに対して興味を持ってもらい、未来の日本を担う人材を育てていけたらと思っている。

FPGAを使ったマルチディスプレイの応用

また、FPGAを使ったマルチディスプレイは、さまざまな分野に応用できることから、産学連携を行い、教育や商業などさまざまな分野で利用できるようにしていきたいと考えている。

数々の市販GPUをテストしている
PS3を実験用に導入
研究・産学連携
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