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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
策力木格 研究室

車両アドホックネットワークで交通事故や渋滞の解決へ

所属 大学院情報システム学研究科 
情報ネットワークシステム学専攻
メンバー 策力木格 助教
所属学会 電子情報通信学会、米電気電子学会(IEEE)、情報処理学会
研究室HP http://www.net.is.uec.ac.jp/~clmg
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掲載情報は2015年8月現在

策力木格
WU Celimuge
キーワード

アドホックネットワーク、センサーネットワーク、インテリジェントトランスポートシステム、コミュニケーションプロトコル

高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:ITS)は、「人」と「道路」、「車両」の間で情報を送受信し、交通の輸送効率や快適性を高めるツールです。対象は道路交通だけでなく、鉄道や海運、航空など幅広く、新しい産業や市場が生まれる可能性の高い分野でもあります。
ITSは日本が発祥の地であることはあまり知られていないのではないでしょうか。日本の同分野の研究は1970年代から始まりましたが、当初は特定の用語はありませんでした。1995年、日本人の研究者が国際学会で「ITS」という用語を提唱すると、次第に普及し、現在では世界共通語として定着しています。

VANETを利用した事故回避支援システムの一例
VANETを利用した道路交通情報システムの一例

日本のITSは、代表的なものではカーナビゲーションシステムや道路交通情報通信システム(VICS)、料金自動収受システム(ETC)、先進安全自動車(ASV)などがあり、世界の成功事例として知られています。信号機の制御や道路防災などの道路交通管理、公共交通の支援、カーシェアリングにおける自動車の予約システム、携帯電話を使った自動車向け情報提供サービス(テレマティクスサービス)など各種システムの実用化も進んでいます。
こうした先進的な日本のITS分野で、策力木格助教は無線ネットワークの通信プロトコルの研究に取り組んでいます。「最先端の情報通信技術を駆使し、交通事故の削減や渋滞の緩和、運転の快適化、高効率な運転による二酸化炭素(CO2)の削減などを目指す」というのが、策力木格助教の研究の目的です。そのキーワードとなるのが「車両アドホックネットワーク」(VANET)です。VANETはITSのさらなる高度化に向けて、近年注目を集めている技術です。
例えば、現在の渋滞情報はどのような仕組みで伝えられているのでしょうか。一般的なのは、カーナビシステムから自動的に情報を集め、ラジオなどで一斉に情報を流すという手法です。ただ、このように情報を集中的に管理すると、結果的に皆が同じ情報を受け取ることになります。たとえその渋滞道路を迂回しても、また別の道が混んでしまう悪循環に陥ります。情報を即時に送るリアルタイム送信の機能もありません。

ファジィ論理尺度を利用する強化学習に基づいた通信方式

策力木格助教はこうした課題を解決するVANETを提案しています。アドホックとはもともと「特定の目的のための」という意味のラテン語の言葉ですが、情報通信分野では、アクセスポイントを介さずに機器同士が直接通信を行う手法のことを指します。
VANETは各車両に無線装置を搭載し、車と車の間で通信させる仕組みです。これによって、例えば交通事故などの情報をある車両が検知し、同車両が近隣の車両にその情報をリアルタイムに伝えることができるようになります。前述の「集中型ネットワーク」に対して、こちらは自ら構築する「自律分散型のネットワーク」です。策力木格助教は「警察がいなくても、事故情報などを近隣の車に即時に伝えることができ、さらなる事故の発生を防ぐことができる」と考えています。
ただ、車は常に移動しているため、車間の通信距離や通信品質は頻繁に変化します。その中で自律分散型のネットワークを柔軟に構築するのは容易なことではありません。そこで策力木格助教は、人間のように柔軟に推論できる「ファジィ論理」と呼ぶ論理学の手法と、自動的に学習し機能を高めるロボットなどに導入されている「機械学習」の手法を組み合わせた、新しい通信方式を提案しました。目指すのは、信頼性が高く、高効率で、高速動作が可能なネットワークを実現する通信プロトコルです。

アドホック通信を利用したテレメトリーシステム

実用化をにらんで、試験的に実機にも適用しています。フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、アイピー・フロント(東京都千代田区)と連携し、自動車レース「SUPER GT」に参戦しているレーシングカー「OGT Panasonic PRIUS」に、策力木格助教が開発したVANETを利用した通信装置が搭載されています。レースに参戦した車の走行経路や移動距離、スピードなどの車両情報(CANデータ)を自動的に収集して送信する仕組みです。

車両情報の自動収集通信システム

策力木格助教は中国の内モンゴル自治区の出身です。日本企業への就職を目指して電気通信大学に留学し、博士号を取得しました。その後、研究の道を選び、「VANETのITSにおける実用化を目指し、専門家だけでなく、産業界の方々と広く意見交換をしながら、グローバル規模で研究を進めていきたい」と考えています。
【取材・文=藤木信穂】

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