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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
大川 研究室

熱流動と気液二相流の技術・研究・知見で、
エネルギー・環境問題に取り組む

所属 大学院情報理工学研究科
知能機械工学専攻
メンバー 大川 富雄 教授
所属学会 日本機械学会、日本原子力学会、日本混相流学会、日本伝熱学会
研究室HP http://www.eel.mi.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

大川 富雄
Tomio OKAWA
キーワード

熱流動、混相流、気液二相流、気泡、液滴、液膜、スプレー、相変化熱伝達、沸騰、凝縮、限界熱流束(CHF)、原子炉熱流動、燃料電池、電子機器冷却、CCS、強制対流サブクール沸騰

研究概要

熱流動工学や混相流工学の知見を基盤にエネルギー・環境問題に関する研究を推進

当研究室では、安全かつ高効率の次世代エネルギーシステムを構築するための基盤技術として、液体と気体が混在する場での熱流動現象や気液界面構造(例えばミルククラウン)の時間発展を支配する物理メカニズムの解明などを行っている。
火力発電や原子力発電では、高温・高圧の蒸気を使って発電を行う。すなわち、火力発電では、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料を燃やした時に発生する燃焼熱を、原子力発電では、核分裂反応によって生じる熱を水に加えて高温・高圧の蒸気をつくり、これを使ってタービンを回転させることで、電力を得ている。
液体の水が気体の蒸気に変わるのだから、その途中では、気体と液体、すなわち複数の相が混在した状態を経るはずである。物質の相には、固相、液相、気相の3つがあるが、2つ以上の相が混在する流れを一般に「混相流」と呼ぶ。気体と液体の2つだけの特別な場合を「気液二相流」とも呼ぶ。水だけ、あるいは空気だけの「単相流」でも、熱や流れの問題はなかなか複雑である。混相流、あるいは気液二相流の中で生じる熱流動現象が相当に難しいことは、理解してもらえると思う。

液膜ドライアウトとクリティカルパワー

火力発電や原子力発電プラントのように蒸気量が多い場合、流路壁面に液膜が形成され、蒸気は流路中央部を流れることが知られている。液膜がリングのようなので、これを環状流と呼ぶ。発電プラントでは、管壁に熱が加えられるから、管壁は濡れていないといけない。何かの拍子に液膜がなくなると、お風呂の空焚きと一緒で、管壁の温度が上昇して溶けてしまう。もちろん、プラントが被るダメージは深刻である。このため、液膜がなくなることをドライアウト、ドライアウトするときの出力を限界出力(クリティカルパワー)と呼ぶ。クリティカルパワーの正確な予測は、プラントの熱水力設計における最重要課題である。
液膜の表面では、絶えず液滴が発生し、高速の蒸気流に取り込まれる。これにはエントレインメントという名前がついている。有名な葛飾北斎の木版画(神奈川沖浪裏)のようで、勇壮だが、エントレインメントが生じれば当然液膜は消耗して、ドライアウトしやすくなる。このため、エントレインメント量の評価が、クリティカルパワーの予測で最も重要なステップとなる。我々は、エントレインメントを生じるメカニズムを丁寧に考察することで、クリティカルパワーの予測精度を飛躍的に向上させることに成功した。

冷却や流路、濡れの研究、エネルギー関連機器の高性能化の研究

相変化を用いた電子機器冷却技術の開発

その他、冷却材流路に工夫を凝らしてCPU等の半導体機器やインバーター等のパワーエレクトロニクス機器の冷却限界を向上させる技術の開発、液体中にナノメートルサイズの微粒子を分散させて除熱限界を飛躍的に向上させる技術の開発、流路壁の濡れ性をコントロールして流路内に液体が蓄積するのを防ぐ技術の開発(これは燃料電池の発電量を安定化するのに役立つと考えている)など、気液界面挙動に関する知見を活用して、エネルギー機器の高性能化を目的とした研究も行っている。

アドバンテージ

可視化実験や数値シミュレーションを行い真理を追究

気液二相流はとにかく複雑なので、何につけても経験則が多い。しかし近年、高速度カメラに代表されるように計測技術の発展は目覚ましく、数値シミュレーション技術も飛躍的に発展している。このため、我々は可視化実験や数値シミュレーションを行い、特に重要な微視的プロセスについて深く検討することで、経験則からの脱却を目指している。
例えば、原子力発電では、燃料棒の固定に用いるスペーサーという治具により、クリティカルパワーが大きく上昇するが、その原理は長い間未解明であった。そこで我々は、流路内にスペーサーを模擬した障害物を設置して、環状流中における液膜流量の変化を調べた。この結果、液滴とスペーサーの衝突が、クリティカルパワーの上昇に大きく関与していることを証明した。

液滴・液膜衝突プロセス

ナノフルイドを用いた表面改質による除熱限界の向上

環状流中では、液滴が絶えず液膜に衝突する。衝突の後大抵は、液滴が液膜に吸収されて、液膜の流量が増加すると仮定する。しかし、水面に液滴を落せば、衝突の後、新たな液滴が生じるのを観察できる。環状流中では、本当に吸収されるのだろうか。そこで、これらの衝突角度の違いに着目した。通常の液滴落下はほぼ垂直衝突だが、環状流では斜め衝突だからだ。垂直衝突の実験に加え、技術的に難しい斜め衝突の実験も、色々と実験装置を工夫して観察を行った。
とりあえず、衝突角度を 45°として実験したところ、結果は衝撃的だった。斜め衝突では液滴は発生しにくいという予想に反して、垂直衝突の場合の100倍くらいの量の液滴が発生したからだ。これは、液滴衝突の後、液膜流量は増加するのではなく、減少することを意味する。百聞は一見にしかず、である。
しかし、衝突角度をさらに小さくすると、 20°以下で液滴発生が大幅に抑制されることがわかった。環状流中での衝突角度は 2°〜 3°程度だから、液滴発生は顕著ではないと期待できる。しかし、「衝突の後液滴は液膜に吸収される」という仮定が正しいのか、確認はまだできていない。衝突角度がきわめて小さい場合の実験データをもっと蓄積したいと考えている。

強制対流サブクール沸騰のメカニズムを実験・解析を行って解明

「沸騰は、身近な現象だけれども、複雑な現象の代名詞で、本当に理解しようなどとは思わない方が良い」。真実だが、こう言われるとやってみようと思うのが人情で、特に難しいケース(流れがあり、かつ水が冷たい場合)について観察を行った。このような沸騰を「強制対流サブクール沸騰」と呼び、原子炉の安全性やCPU等の発熱体の冷却を考える際の重要な現象である。強制対流サブクール沸騰には1960年代からの定説があり、表面張力により気泡が管壁に付着するか否かで、流れの様相が一変するとされている。しかしながら、我々の観察では、管壁に気泡が付着することはなかった。流れの様相が一変するのは、気泡のより微細な動特性が関係していることを見出した

今後の展開

二酸化炭素削減技術に関するCCS技術の研究開発

今後、石油、石炭、天然ガスに加えて、シェールガスや、メタンハイドレート等の新たな化石燃料資源を使い、火力発電を増強していくものと予想される。このため、温室効果ガス排出量の削減はますます重要な課題となるだろう。
当研究室では、エネルギーを安全かつ高効率で供給する方法を研究すると同時に、発電の際に発生する二酸化炭素をできる限り削減する方法についても研究したいと考えている。その1つが、CCS (Carbon Dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯蔵)だ。例えば、火力発電所で排出される二酸化炭素を特殊な液体に吸収させ、分離・回収した上で、地中や海底に貯留するというものだ。気液二相流の知見が活用できることから、CCS技術の発展に是非貢献したいと考えている。

研究・産学連携