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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
大河原 研究室

健康長寿に向けた食事と運動療法の提案

所属 大学院情報理工学研究科 共通教育部、情報学専攻
メンバー 大河原 一憲 准教授
所属学会 日本教育医学会、日本体力医学会、米スポーツ医学会(ACSM)、日本運動生理学会、日本肥満学会、日本体育学会、日本栄養改善学会、日本健康支援学会、運動疫学研究会
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掲載情報は2016年5月現在

大河原 一憲
Kazunori OHKAWARA
キーワード

ヘルスケア、メタボリック・シンドローム、メタボ、生活習慣病、ダイエット、肥満、糖尿病、和食、エネルギー代謝、アメリカンフットボール

健康で長生きするための食事や運動法について、全く関心のない人はいないのではないでしょうか。日本は世界一の長寿国であり、その点からも「和食」は世界で注目されています。しかし、そもそも和食と健康長寿とは本当に結びついているのでしょうか。
そうだとすれば、和食の基本となる主食、すなわち米(炭水化物)を抜く昨今流行のダイエット法は、健康長寿の理屈に反することになります。ユネスコの無形文化遺産にも登録され、“ヘルシーフード”の代表ともいえる和食ですが、健康によいという確固たる証拠はないのです。

2型糖尿病の患者を対象に

大河原一憲准教授は、食と健康に関するこうした関係を科学的に裏付けるための研究に取り組んでいます。「和食の研究」をベースにして現在取り組んでいるのが、2型糖尿病の患者と健常者における、体内のエネルギー代謝量の比較実験です。個人の代謝量によって、体に必要な食事内容が変わるためです。

日本人の糖尿病患者の90%以上が「2型糖尿病」です。この病気は遺伝的な体質も影響していますが、多くは食生活の乱れや運動不足、肥満、ストレスなどの要因が引き金になっているといわれています。いわゆる「生活習慣病」の一つです。日本は糖尿病の患者数が世界10位と多く、一人当たりの医療費も高い傾向にあります。国の健康政策においても、糖尿病の予防は重点課題になっています。

欧米の糖尿病患者の大半が肥満であるのに対して、日本では痩せ形の患者が多いのが特徴です。日本人は血糖値を下げる働きのある体内ホルモン「インスリン」の分泌量が欧米人に比べて少ないため、痩せていても糖尿病の発症リスクが高いのです。

予防につながる食事とは

そのため、欧米の患者を基準にしたガイドラインに従って、単に痩せることだけを指導しても日本では根本的な解決につながりません。こうした背景があり、大河原准教授は従来の欧米基準ではなく、「日本人に合った適切な食事を提供し、発症の予防や重症化の防止につなげたい」と考えています。

和食の基本は「一汁三菜」です。主食は炭水化物(=糖質)ですから、和食はもともと糖質の高い「高糖質食」だといえます。しかし、糖尿病患者の多くは、通常の状態でも血糖値が高いため、できるだけ低糖食を摂ることが望ましいという見方があります。

一汁三菜を基本にコントロール

実験中の様子

大河原准教授が、2型糖尿病の患者と健常者のグループに同一の食事を提供して実験した結果、糖尿病患者は糖を体内に取り込む力が弱いにもかかわらず、食後は糖をよく燃焼していました。ただ、血糖値は依然高く、これは食事で摂取した糖が原因ではないことが分かってきました。

まだデータは十分ではありませんが、こうした実験を積み重ねることで、例えば、糖尿病患者には「高糖質食」ではなく、主食を減らして脂質の割合を増やした「高脂質食」を少なめに提供するというように、一汁三菜を基本に、その比率をコントロールしながら食事指導を行うことが有効かもしれません。「炭水化物抜きダイエット」についても、効果的に働くケースが一部ではあり得る可能性があります。

さらに、主食について、「白米」と「玄米」を食べる二つのグループに分けて健常者を対象に実験したところ、白米にも一定の効果はみられましたが、玄米を食べた方がより「抗酸化力」が高くなり、アンチエイジング(老化対策)につながることが分かりました。「和食と長寿がつながる証拠の一端が明らかになった」と大河原准教授はみています。

食事と運動の改善が大切

運動時における計測実験

単に食事が大事だといっても、例えば体重維持のためには、エネルギーバランスだけでなく、体内での吸収や消費の観点から、その内容や食べ方までを見直す必要があります。 さらに、運動内容や運動のタイミングなどの改善も必要です。大河原准教授は、食事に加えて、運動療法の提案も行いたいと考えています。運動はいかに楽しみながら長く継続するかが、健康状態を左右するといってもよいでしょう。単に健康維持のためだけでなく、楽しく、モチベーションを保ちながら、運動を継続的に行うためのプログラムの開発を目指しています。

「人の遺伝子は変えられないが、遺伝子に影響するとされる『環境的要因』を変えることはできる」と大河原准教授は強調します。そのため、「遺伝的要因」に関連する生理学的メカニズムを理解しながら、その人にとって最も効率的な適正体重の維持プログラムなどを構築することが重要なのです。

戦術のシミュレーションも視野に

そのほか、脊髄損傷などによる車いすの利用者や発達障害児などについても、同様の実験に取り組んでいます。加速度センサーを使って活動量を測り、エネルギー代謝量を調べることで、それぞれに必要な食事や運動内容を提案する試みです。

また、大河原准教授はアメリカンフットボールの元選手であり、現在は電気通信大学のアメフト部の監督を務めています。アメフトは“戦術のスポーツ”と言われるほど、戦術がモノをいいます。最近、こうした戦術分析をシミュレーションし、最適な次の一手をコンピュータで予測できないかという検討を始めました。オリンピックの団体競技などに生かされる日も遠くないかもしれません。

車いす利用時の活動量の計測実験

【取材・文=藤木信穂】

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