このページの先頭です

メニューを飛ばして本文を読む

ここから本文です

サイト内の現在位置

研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
サンドゥー 研究室

日本の大学を「可視化」する

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー Adarsh SANDHU 教授
所属学会 応用物理学会、日本磁気学会、米電気電子学会(IEEE)、英国物理学会(IOP)、米国AAAS
研究室HP http://www.sandhu.jp
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

Adarsh Sandhu
キーワード

二次元系材料(graphene, MoS2, MoSe2)、磁気抵抗効果、AlGaN/GaN高温用磁気ホールセンサー 、磁区観察、液中透過型電子顕微鏡、ナノテクノロジー、サイエンスライティング、磁性粒子系医療診断、磁気バイオセンサー、スマートフォン分光器

日本の大学は世界からどのように見られているのでしょうか。ひょっとすると、「見られる」というレベルまで、あるいは到達していないのかも知れません。2015年に電気通信大学に赴任したAdarsh Sandhu(アダルッシュ・サンドゥー)教授は、「日本の大学はブラックボックスになっていて、一生懸命やっているが外から見えていない」と感じており、「日本の大学のVISIBLITY(可視化)をする」という使命感を持って活動しています。

30年前に来日

電通大の海外向け電子情報媒体。 http://www.ru.uec.ac.jp/e-bulletin/

英国出身のサンドゥー教授は約30年前に来日し、これまで複数の大学や企業で半導体電子物性を中心とする固体物理の研究をしてきました。その傍ら、日本の大学の国際化にも多大な貢献をしています。例えば、電通大をはじめとする3大学で、海外向けの広報誌の出版やプレスリリース(報道機関向け資料)の配信、ホームページの構築・発行などを手がけてきました。ほかにも、異分野融合の国際学会「IRAGO CONFERENCE SERIES」を立ち上げたり、応用物理学会の英文ニュースレターを発行したりなど、多方面で実績を残しています。
サンドゥー教授はまた、25年以上にわたりサイエンスライターとしても活躍しています。大学教員としては珍しく、日本外国特派員協会のメンバーでもあります。英米有力科学雑誌の編集員を務め、ニュースや解説記事を定期的に提供しています。研究者ながらジャーナリスティックな視点も持ち合わせるサンドゥー教授は、「研究者はメディアをうまく使って自分の研究を可視化することも重要だ」と強調します。

可視化はなぜ必要か

薄膜型マイクロホール効果素子

というのも、日本の大学は「世界に向けて成果をもっとアピールするべきだ」と考えているからです。大学の情報発信力は、世界の大学ランキングなどにも反映されます。さらに懸念しているのが、グローバルな研究競争の時代にあって、日本は他国との共著論文の割合が少ないことです。日本の大学は、より多くの学生や教員を惹きつけるグローバルな存在を目指すとともに、積極的に国際協力に努める必要があると言います。
サンドゥー教授によれば、真の教育とは、学生に夢や希望を与え、未来を生きる意欲を育てる機会を与えるものです。大企業に就職することを大学生活のゴールに掲げる日本の多くの学生は、どうしても視野が狭くなると言わざるを得ません。
電通大では、こうした教育改革、広報改革を進めるとともに、国際連携の場を作り、インターンシップ(就業体験)制度の導入や優秀な大学院生のヘッドハンティングなども検討しているそうです。「研究でも教育でも、人が集まる“場”作りが最も重要だ。うまく場を作ることができれば、『セレンディピディ(思いがけないものを偶然に発見すること)』は自然に生まれる」と考えています。

 
医療診断用iPHONE分光器システム

異分野融合が生んだ革新的な磁気バイオセンサー

一方、自身の研究では、磁性粒子を標識にして生体物質を検出する、ホール素子を使った磁気バイオセンサーなどを開発しています。バイオセンサーは通常、標識に蛍光体を使いますが、装置が大型で専門的な知識が必要などの欠点があります。蛍光体の代わりに、直径約250ナノメートル(ナノは10億分の1)の微小な磁性粒子を使うことで、ターゲットとなる物質に磁性粒子が素早くくっついて反応し、簡単かつ迅速に目的の物質を検出することができるのです。
これに加えて、センサーに組み合わせて使える持ち運び可能な検出装置として、スマートフォンの分光器アプリや、3Dプリンターを使った分光器なども開発しました。分光器を使って光のピークを検出すれば、例えば、インフラが整っていない国であっても、スマホさえあれば誰でも手軽に血液や唾液、尿などから、がんなどの病気を自己診断することができます。患者の側で直接診断を行う「ポイント・オブ・ケア」の未来が、磁性粒子によって開かれるかもしれません。

ナノ観測のパラダイムシフト

液中における銀ナノ粒子の観察
開発したTEM用流路系ナノカプセル

さらに、サンドゥー教授が「ナノスケール観測技術の“パラダイムシフト”」ととらえる、透過型電子顕微鏡(TEM)を使った液体中の観察システムも開発しています。新規のナノ材料合成や細胞工学、創薬などの分野では、ナノ寸法で試料をリアルタイムに観察できるTEMは有力な装置です。しかし、液中の試料だけはTEMでは観察できません。
そこで、液中でも試料を観察できるように、TEMに組み込める流路系のナノカプセルを開発しました。カプセル内部には、微小電気機械システム(NEMS)の加工技術を使って作った流路を設けており、その一部を薄膜で構成することで、液体を閉じ込めつつ、電子線は透過させることができるのです。チューブを接続しているため、外部から液体を交換することもできます。実際に、カプセルに液体を入れて電子線が透過することを確認しました。銀ナノ粒子の液体を入れた際の、粒子の観察にも成功しています。
サンドゥー教授はほかにも数々の研究を行っています。いずれも国際チームで進める共同研究です。「研究は人との縁が大事。どこの国・組織に属しているかは関係ない。個人と個人との関係があらゆる可能性を開くのだ」。サンドゥー教授は日本を拠点にして、世界中にネットワークの輪を広げています。
【取材・文=藤木信穂】

研究・産学連携