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学長室から:大学案内

平成26年度 大学院入学式

2014年4月4日
福田 喬

大学院へのご入学、誠におめでとうございます。来賓の本学同窓会目黒会の安田耕平会長、列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎致します。

ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

本日は昨日からの強い雨も上がり爽快な晴天となりました。桜の花は昨日までの雨にもめげず皆さんを待っていてくれたようですし、正門を入られたら、歓迎の噴水とともに、植え込みの中の色とりどりの花々が皆さんを迎えてくれたことと思います。

その植え込みの中に、まだ背の低い2本の植木があるのに気付かれましたか。

それらはニュートンのリンゴの木です。ニュートンが思索中にリンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したという逸話にちなんで、イギリス・ウールスソープにあるそのニュートンの生家の庭のリンゴの木が接ぎ木されて、科学の振興・啓発のために世界各地に分譲されています。本学でもそれを譲り受けて先月末に植樹したところです。3年から4年後には実をつけるだろうということですので、どうか大事に見守ってください。
この木は、収穫前に実を落としてしまう品種だそうで、ですからリンゴの実が落ちるのを見て、という話が生まれたようです。実が落ちない品種だったら万有引力の法則の発見はどうなっていたのでしょうか。

研究を続けるうえで疲れたり、ひょっとして行き詰ったりした時など、このニュートンのリンゴの木を眺めながら思索にふけってはいかがでしょう。

ところで、本日お迎えしたのは、博士前期課程への入学者484名、博士後期課程への入学者34名の皆さんです。特に、他大学を卒業あるいは修了して、本学へ来てくださった方には心から御礼を申し上げます。留学生の皆さんや社会人入学の皆さんもいらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っております。

本学は、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」を根本理念としています。 そして、その理念のもとで、創立100周年、それは4年後の2018年に迎えることになりますが、それまでに目指すべき大学像を「UECビジョン2018 ~100周年に向けた挑戦~」として掲げています。ビジョンの根幹を成す考え方は、「人類の持続的発展のためには、20世紀型の物質文明から脱却して人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる社会とする必要があり、そのためには『人と人』、『人と自然』、『人と社会』、『人と人工物』のコミュニケーションを基軸とするイノベーションが不可欠である」との認識に基づいています。本学は、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学技術体系を、「さまざまな事象を広義のコミュニケーションの視点から捉え、関連する個別の学問、要素技術を総合的に適用して問題解決を図る」との立場から「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を行うことを宣言しています。

ところで、技術開発におけるスタイルには、大きく分けて2つあると言われています。「継続発展型」と「イノベーション型」です。

前者の「継続発展型」については、製造業などがそれだけに基づく技術開発に頼っていると、例えば半導体製造や液晶製造などのように、厳しい消耗戦に突入してしまうと言われており、国家的な研究開発は「イノベーション型」の技術開発でなければならないと指摘されています。

このイノベーションという事柄に関して、Harvard Business School の Clayton M. Christensen 達が「イノベータのDNA」という表題の著作を著しています。革新的な製品やサービスを開発した100名近いイノベータにインタビューしそれをまとめたもので、イノベータがイノベーションを生み出していくのに必要とされるスキルが述べられています。

それによると、まず「5つの基本的なスキル」が必要で、1つ目は「質問力」、それは、現状に異議を唱えることも含めて、質問によって物事の探究に情熱を燃やすためのスキルです。次に「観察力」、観察を通して新しいやり方のもとになる洞察やアイデアを得るためのスキルです。3つ目は「ネットワーク力」または「人脈力」、多様な背景や考え方をもつ人たちとの幅広いネットワークを通じて、アイデアをみつけたり試したりするためのスキルです。4つ目は「実験力」で、将来成功する方法について手がかりを得るには実験に勝る方法はないからです。そして最後5番目のスキルは「関連づけて思考する力」で、一見無関係に思える物事を結びつけて独創的なアイデアを生み出していくというスキルです。そしてこの最後の「関連づけ思考」を誘発するために、イノベータは前に述べた4つのスキル、「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」を駆使して、イノベーティブなアイデアのもととなる在庫を増やしているのだと述べています。

Christensenらの著書には、イノベータがこうした行動をとれるのは、次に言うところの「イノベーションに取り組む勇気」を持っているからにほかならないとも述べられています。
その勇気とは、まず、「現状に異議を唱える勇気」、現状を変えたいという意思と言っても良いかもしれません。そしてもう一つが「リスクをとる勇気」です。リスクを認識した上で自らの責任で果敢にリスクをとるということであり、スマート・リスクとも言われています。

現状を変えたいという意思を常に持ち、「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」を駆使して、あえてリスクをとる勇気を備えている者がイノベータとなり得る、ということのようです。

ところで、博士前期課程では、これまでの学士課程での蓄積の上に、さらに基礎的な知識を補い、研究のために必要な技術を身につけるなど、専門家として独り立ちできるよう体系的な教育が行われます。

博士後期課程では、前期課程までに習得した知識や技量を基礎に、新たに自ら研究計画を構想し、研究を遂行することが中心となります。そして、研究の成果として論文をまとめ、学術誌などによりその成果を国際的に発表していくことになります。

大学院では、各自が「自らの研究テーマ」を持ち、それを育てる必要があります。これは具体的には「問い」の発見ということになります。研究において最も苦しいことは実はこの部分かもしれません。
そして、この「自分の研究テーマ」をどのような観点から、どのように攻略するかを寝ても覚めても考え続けることが、大学院の日々の生活の基本となります。

研究テーマを攻略するためには、必要となる知識を獲得していくことも必要なことですが、未知の世界の開拓においては、あまり的をしぼりすぎる学習には限界があるように思います。的を絞ることは一見無駄がなく効率的に見えるかもしれませんが、専門の枠を超えるような大きな独創の芽を摘むことになるかもしれないのです。自身の専攻する分野のみならず、他の分野の学識を豊かにすることによって、専門分野における既存の枠組みではとらえられなかった視角が与えられ、独創的な攻略法にたどり着く可能性を忘れないでください。そして、皆さんの後に道ができるような独創的な研究をぜひ実現してください。

皆さんの多くは、現時点では、ご自身の素材としての価値を十分には認識できていないかもしれませんが、皆さんは確実に社会のリーダーとなる人材です、いや、社会のリーダーとなって頂かなくてはなりません。中心的役割を担い始める十年先に社会のリーダーとして必要とされる知識体系や考え方を、どうか在学中に準備しておいてください。そのためにも、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる語学力、リテラシー、説得力、企画力、発信力、感化力などの人間力を涵養し、身につける必要があります。加えて、先に述べたイノベータになるための5つのスキルとスマート・リスクをとる勇気を獲得してください。これらこそが大学院で身につけるべき高度な教養というものでしょう。大いに研鑽してください。

本学は、多数の大学、企業、行政組織が参画する産学官連携の組織であるスーパー連携大学院コンソーシアムに加盟しており、そのコンソーシアムが提供するスーパー連携大学院プログラムに参加しています。カリキュラムの実施からキャリアパスまでコンソーシアム正会員である大学、企業、行政がそれぞれ対等な立場で共同参画して創り上げているプログラムです。その目的は、国際社会においてリーダーシップを発揮し、イノベーションによる価値の創造を担うことができる「志」の高い博士を育成することにあり、博士前期課程および後期課程を含む5年一貫の教育プログラムです。5年一貫ですが、後期課程からの編入履修のルートも用意されています。
この式典の後に開かれる大学院オリエンテーションの場で詳しい説明がされると思いますので、よく検討いただいて多くの方がこのスーパー連携大学院プログラムにトライされることを期待しています。

話は変わりますが、昨年度文部科学省は、世界水準の優れた研究大学群を増強して我が国全体の研究力強化を図ることを目的とした「研究大学強化促進事業」を創設しました。そして全国の国公私立大学および大学共同利用研究機関、合わせて約780の大学・研究機関から、研究力に関する客観的指標に基づいて19大学と3研究機関を集中的に支援する対象として選びました。本学は、その19大学の1つに選ばれて、世界トップレベルとなることが期待できる大学の一つであるとの評価を受け、今後複数年に渡って特別経費による支援を受けることになっています。本学は今、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化と、その研究力を背景とした教育力の強化に取り組んでいます。

その場合、大学の研究活動は、皆さんのような大学院生の力によってかなりの部分、支えられています。電気通信大学の大学院を選んでくださったのですから、本学の存在価値を高めることが、皆さんのためでもあることを認識して、大学院生としての本分に邁進してください。
前期課程に入られた皆さんも、次は後期課程への進学にぜひ挑戦してくださることを願っております。

さて、冒頭に申しましたように、本学は創立100周年までに目指すべき大学像を「UECビジョン2018」と名付けたビジョンで打ち出していますが、それを一口であらわすキャッチフレーズを

Unique & Exciting Campus

としています。

電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな(Unique)若者が集い、楽しくてわくわくする、魅力あふれる(Exciting)環境で学び、新しい価値を生み出し、世界を驚かすような輝く個性が育つ学園(Campus)にしたいという願いを表すキャッチフレーズです。

Unique の U と Exciting E と Campus の C を合わせたUECは従来から本学の英文名称の略称として使われてきました。今後は、UEC Tokyo というだけで世界中から電気通信大学のことだと分かってもらえる大学にしたいと思っています。

最後に、明日を担う皆様のご活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶を終わらせていただきます。

ありがとうございました。

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