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学長室から:大学案内

平成26年度 大学院修了式

2015年3月25日
福田 喬

情報理工学研究科、電気通信学研究科および情報システム学研究科修了生の皆さん、修士並びに博士の学位取得おめでとうございます。ご来賓の本学同窓会目黒会 野々村欽造会長、本学名誉教授の先生方、そして列席の役員、副学長、各部局長、さらに教職員、在校生とともに、修士論文あるいは博士論文のための研究に取り組まれた努力と成果に心から敬意を表します。また、参列されているご家族、ご友人、ご関係の皆様に心よりお慶び申しあげます。
本日、修士号を授与された方は、情報理工学研究科が366名、情報システム学研究科が107名の合計473名です。博士号を授与された方は、電気通信学研究科が3名、情報理工学研究科が22名、情報システム学研究科が4名、の合計29名です。なお、本学では、博士号学位授与を6月、9月、12月の各期でも行っており、今年度(平成26年度)博士号を授与された方はトータルで51名となります。したがって、本日の時点で、本学に大学院が開設されて以来の累計数は、修士号を授与された方が11,927名、博士号を授与された方が816名となっています。
ところで、本日修士号を取得された473名の中には30名の留学生の方が、博士号を取得された29名の中には7名の留学生の方がいらっしゃいます。言葉はもちろんのこと、文化や制度、習慣や常識など様々な面で大きく異なる環境の下で学位論文のための研究に取り組まれるのは大変困難であったろうと思います。それを乗り越えて本日学位を取得されたことに対して、皆さんを称えたいと思います。
さらに、本日の学位取得者の中には、修士で2名の、博士で11名の社会人学生の方がいらっしゃいます。社会に出られた後に学位取得を目指して大学院に戻ろうと決断された目的はいろいろであろうと思いますが、社会人としての立場を維持しつつ学位研究を完遂されて、見事に学位を取得されたそのご努力に敬服するとともに、改めてお祝い申し上げます。

ところで、以下、少し忠告めいた言葉も続けさせてください。

まず、先ほど皆さんにお渡しした修士や博士の学位記は研究者、開発技術者のリーダーたる品質保証書です。皆さんの資質・能力・成果に基づく厳しい評価の下で、それを称え授与いたしました。
しかしです。学位記には保証期間や有効期間は書いてありません。皆さんの学位記は、実質的には、現時点での品質保証書であって、永遠に保証できるとは限らないのです。 皆さんが学位研究を通じてあげられた研究成果は、今後、時の試練を経て、いっそう輝き続けるもの、あるいは陳腐化していくものに分かれると思います。しかし、成果そのものが時とともに陳腐化したとしても、それを作り上げる過程で傾けた努力や体験した悩みや成し遂げたときの喜びは皆さんの人格を磨いてきたはずです。これからの人生で直面する苦しいときや追いかけるべき課題を見失ったときには研究論文の完成に費やした研鑽の日々を思いだして、チャレンジする強い意志と信念を呼び戻していただきたいと思います。学位記は、ある意味、その呼び戻しのためのお守りのようなものであって、専門を深く穿ち、他人が成し得なかった独創的な仕事を成し遂げたという誇りと自信を呼び起こして力強い推進力を生み出すためのものと思ってください。そして、常に学位再審査を受けるつもりで、切磋琢磨に努めてください。
気が付いていない方が多いかもしれませんが、実はみなさんは研究室を中心に、指導教員や多くの先輩・後輩・友人に囲まれて、成果を上げてきたのではないでしょうか。もちろん周りの力というより、自らの力のみで優れた成果を上げてきたといい得る人もいるかもしれません。しかし研究室という環境の光を受けることによって、例えていえば、お月さまのように輝いてきた人も多いのではないでしょうか。いくら美しくても月は自ら輝くことはできません。したがって最初は太陽の光を受けて輝くことを体験し、その過程を覚え、いつか恒星のように自ら輝くことを目指して、大学院における研鑽を積み、そしてついに、自力で灯を点らせる力を学位の授与という形で認められたみなさんです。臆することなく、自ら輝き、その光で社会全体をよきものに変える力になっていただきたいと思います。それがみなさんに課された使命に他なりません。
皆さんは、高度で先端的な専門性の高い研究の成果を、修士論文や博士論文としてまとめられました。すでにその分野の専門家です。しかし、ある意味では、先端的ではあるが、狭い専門領域の中での仕事である場合が多いと思われます。したがって、皆さんのこれからの社会での役割を考えたとき、これまで取り組んできた専門領域から飛び出す柔軟性と果敢な勇気を持てるかどうかが鍵のように思います。
当然の事ですが、世の中で解決が望まれている課題は、学問の領域とは無関係に存在します。学問の発展のために課題があるのではありません。一般的に、しばらく大学等での研究生活をエンジョイした者は、ややもすると自分の専門や学問分野にこだわりがちになります。が、実世界の現象は、それが自然現象であれ社会現象であれ、一つの学問分野でまかないきれるほど単純ではありません。したがって、ある課題を解決しようとする場合、その解決のプロセスや手段になんらの制限も設けるべきではありません。その意味で、人は、ある専門分野に秀でれば秀でるほど、専門性を持つことそれ自身がその専門性を超えるということに対して障害となる可能性があるということを、もって銘とすべきと思います。
ここでもう一度、学位の意味を考えてみましょう。学位はその根拠となった学位論文が扱う課題に対する知識や扱った課題に関する解決の結果だけを問うものではありません。根拠となった学位論文を一番の評価資料としてはいますが、一般的な意味での問題解決能力を保証したものと考えるべきです。したがって、学位を持つ人、とくに最高学位の博士号を持つ人は、自分が経験したことのない新しい課題にも取り組んでいける能力を有しているとみなすべきです。すなわち、博士号の授与にあたっては、何ができるかではなく、課題にどう取り組むかをプランする能力とそれを遂行・実現する能力が評価されているのだと理解してください。
その意味からも、本日修士号をとって社会に出られる方は、そのうちに、博士号をとるために必ず本学に戻ってこられることを期待しております。

さて、本日の博士前期課程の学位記授与の後で、「スーパー連携大学院コンソーシアムによるイノベーション博士候補サーティフィケイト」の授与がありました。このことについて、若干説明をしておきます。スーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学、北海道から九州まで広域に分布する6大学ですが、それが連携して推進しているイノベーション博士を養成するプログラムです。連携している各大学の大学院生で、博士号の取得に挑戦して博士になったら企業や行政機関など大学以外の広い分野で活躍することを志す人を、プログラム受講生として募集しており、希望する学生の中から志の高い人を審査の上で受け入れています。
このプログラムでは、大学だけでなく、連携する産業界や行政機関等の協力を得て、幅広い知見を得るためのカリキュラムが用意されており、受講生はそれを受講して単位を取得し、一定以上の成績を収めなければなりません。また、学位論文のための研究は、産業界や大学以外の研究機関との共同研究プロジェクトとして行われるものでなければなりませんし、論文の審査は、他大学の教員や産業界の専門家を含む審査員会で厳しい評価を受けることになります。学生は、在籍する各大学での審査と、スーパー連携大学院プログラムでの審査の両方に合格すると、各大学から授与される博士号のほかに、イノベーション博士サーティフィケイトが授与されることになります。
このイノベーション博士サーティフィケイトは、実社会で創造的能力を発揮し活躍できる人材であるとの保証書であり、もって、現代社会が必要としているイノベ―ションを創出する人材を送り出すという機能をこのプログラムは担っています。
このプログラムでは、学生は、原則として前期課程から後期課程までの5年一貫教育で博士を目指します。ただし、前期課程修了時に関門があって、それまでの受講単位数と成績が一定の基準を満たした上で、博士研究の研究計画を提出して口頭試問も併せた審査を受ける必要があります。その審査に合格したら、イノベーション博士候補として博士研究に着手する資格が与えられます。本日はそのイノベーション博士候補の資格を得た3名の方に、それを証明する「イノベーション博士候補サーティフィケイト」を授与した訳です。
本学はこのスーパー連携大学院プログラムを更に高度化し、実社会での人材ニーズに応えてゆきたいと考えています。

最後に、3年後の2018年のことを述べておきます。
ご存知のように、電気通信大学は、3年後の2018年に、創立100周年を迎えることになります。この記念すべき節目において来し方を振り返るとともに、次の節目に向けてその存在価値をさらに高めるべくいろいろな視点に基づく機能強化のための改革に取り組んでいます。また、100周年を祝う式典を含めた記念事業の企画も進めています。
電気通信大学は、新しいスタートラインに立つ皆さんをこれからも応援していきます。皆さんも、ときには母校を訪ね、多くの友人や教職員と語らい、また同窓会活動の場として、また生涯の学習の場として、電気通信大学を人生の基軸において積極的に活用してください。そして、母校を温かく見守り、今後も、本学の教育研究活動の強化発展に向け、ご支援いただけますようお願いいたします。
そのためにも、大学経営基盤を支えるためのUEC基金へ、ご寄付をお願いできると幸甚です。

では、100周年を迎える2018年の記念式典で皆さんと再会して、皆さんの活躍、電通大の発展、社会の持続的振興を共に喜び合いあいましょう。

本日は、修士並びに博士の学位取得、誠におめでとうございます。

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