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学長室から:大学案内

平成27年度 大学院修了式

2016年3月25日
福田 喬

研究科修了生の皆さん、修士並びに博士の学位取得おめでとうございます。
ご来賓の本学同窓会目黒会 野々村欽造会長、本学名誉教授の先生方、そして列席の役員、副学長、各部局長、さらに教職員、在校生とともに、修士論文あるいは博士論文のための研究に取り組まれてきた努力と成果に心から敬意を表します。
また、皆さんが研究に励んでいる間、皆さんを見守り、物心両面から支えてこられたご家族の皆様にもこの会場に同席していただいています。この晴れの日の喜びをご家族の皆様とも分かち合わせていただきたいと思います。

本日、修士号を授与された方は、情報理工学研究科が354名、情報システム学研究科が97名の合計451名です。課程修了により博士号を授与された方は、情報理工学研究科が14名、電気通信学研究科が1名、情報システム学研究科が7名の合計22名です。なお、本学では、博士号授与を6月、9月、12月の各期でも行っており、今年度(平成27年度)の課程博士号授与の総計は42名となります。また、博士号授与については、課程に在籍せずに学位申請論文を本学に提出し、審査を経て学位が授与される課程修了によらない学位申請、通称、論文博士申請、というシステムもあり、今年度は1名の方がこの論文博士学位を授与されています。
本学に大学院が開設されて以来の累計をお示ししますと、修士号を授与された方は12,385名、博士号を授与された方は、課程博士852名、論文博士137名、合計989名となっています。
ところで、今年度修士号を授与された451名の中には25名の留学生の方が、課程博士号を授与された42名の中には13名の留学生の方がいらっしゃいます。言葉はもちろんのこと、文化や制度、習慣や常識など、様々な面で大きく異なる環境で研究に取り組まれるのは大変だっただろうと思います。それを乗り越えて本日学位を取得された留学生の方々に対して、心からの賛辞を送りたいと思います。

もう少し、学位授与者の内訳を続けさせていただくと、今年度、修士号を授与された451名の中で、女性の方は38名で女性比率は8.4%、博士号授与者では42名中13名、31%となっています。ただ、この博士号授与者における31%という比率は女子留学生の比率の高さに依拠しており、日本人女子学生の修士課程、博士課程への進学がもっと増えることが、男女共同参加の重要性が指摘されている今、必要であると思っています。
さらに、今年度の学位授与者の中には、修士で2名の、博士で14名の社会人の方がいらっしゃいます。社会に出られた後に学位取得を目指して大学院に戻ろうと決断された目的はいろいろであろうと思いますが、社会人としての立場を維持しつつ研究を完遂されて、見事に学位を取得されたそのご努力に敬服するとともに、改めてお祝い申し上げます。

ところで、先ほどの学位記授与の最後に、「スーパー連携大学院コンソーシアムによるイノベーション修士サーティフィケート、及びイノベーション博士サーティフィケート」の授与がありました。このことについて、少し説明しておきます。
スーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学、北海道から九州まで広域に分布する6大学ですが、それが連携して推進しているイノベーション博士を養成するプログラムです。連携している各大学に在学する大学院生で、博士号の取得に挑戦して博士になったら、大学や研究機関といった所謂アカデミアの分野ではなく、企業や行政機関などの広い分野で活躍したいと思っている人をプログラム受講生として募集し、その中から志の高い人を審査の上で受け入れています。
このプログラムでは、大学だけではなく、連携する企業や行政機関等の協力を得て、幅広い知見を得るためのカリキュラムが用意されており、受講生は、在籍する研究科の正規課程カリキュラムに加えてプログラムが用意したカリキュラムを受講して単位を取得し、一定以上の成績を収めなければなりません。また、学位論文のための研究は、企業や外部研究機関などとの共同研究プロジェクトとして行われるものでなければなりませんし、論文の審査は、他大学の教員や企業の専門家を含む審査委員会で厳しい評価を受けることになっています。そして、在籍する各大学での審査と、スーパー連携大学院プログラムでの審査の両方に合格すると、各大学から授与される修士号、博士号のほかに、イノベーション修士サーティフィケート、イノベーション博士サーティフィケートが授与されることになります。
このサーティフィケートは、実社会で創造的能力を発揮し活躍できる人材であるとの保証書となっており、もって、社会が必要としているイノベ―ションを創出し得る人材を送り出すという機能をこのプログラムは担っています。
本日はそのプログラムの修士課程を修了した人、及び博士課程を修了した人に、それぞれサーティフィケートを授与した次第です。

ところで、次に、少し忠告めいた言葉を続けさせてください。
まず、先ほど皆さんにお渡しした修士や博士の学位記は研究者、開発技術者のリーダーたる品質保証書です。皆さんの資質・能力・成果に基づく厳しい評価の下で、それを称え授与いたしました。しかしです。学位記には保証期間や有効期間は書いてありません。書いてないから無期限であり永遠の保証書だと解釈できるかもしれませんが、実質的には、現時点での品質保証書であって、永遠に保証できるとは限らないものです。
皆さんが学位研究を通じてあげられた研究成果は、今後、時の試練を経て、いっそう輝き続けるもの、あるいは陳腐化していくものに分かれると思います。しかし、成果そのものが時とともに陳腐化したとしても、それを作り上げる過程で傾けた努力や体験した悩みや成し遂げたときの喜びは皆さんの人格を磨いてきたはずです。これからの人生で直面する苦しいときや追いかけるべき課題を見失ったときには研究論文の完成に費やした研鑽の日々を思いだして、チャレンジする強い意志と信念を呼び戻していただきたいと思います。学位記は、ある意味、その呼び戻しのためのお守りのようなものであって、専門を深く穿ち、他人が成し得なかった独創的な仕事を成し遂げたという誇りと自信を呼び起こして力強い推進力を生み出すためのものと思ってください。そして、常に学位再審査を受けるつもりで、切磋琢磨に努めてください。

気が付いていない方が多いかもしれませんが、実はみなさんは研究室を中心に、指導教員や多くの先輩・後輩・友人に囲まれて、成果を上げてきたのではないでしょうか。もちろん回りの力というより、自らの力のみで優れた成果を上げてきたと言い得る人もいるかもしれません。しかし研究室という環境の光を受けることによって、例えていえば、お月さまのように輝いてきた人が多いのではないでしょうか。いくら美しくても月は自ら輝くことはできません。したがって最初は太陽の光を受けて輝くことを体験し、その過程を覚え、いつか恒星のように自ら輝くことを目指して、大学院における研鑽を積み、そしてついに、自力で灯を点らせる力を学位の授与という形で認められたみなさんです。臆することなく、自ら輝き、その光で社会全体をよきものに変える力になっていただきたいと思います。それがみなさんに課された使命に他なりません。

皆さんは、高度で先端的な専門性の高い研究の成果を、修士論文や博士論文としてまとめられました。すでにその分野の専門家です。しかし、ある意味では、先端的ではあるが、狭い専門領域の中での仕事である場合が多いと思われます。したがって、皆さんのこれからの社会での役割を考えたとき、これまで取り組んできた専門領域から飛び出す柔軟性と果敢な勇気を持てるかどうかが鍵のように思います。
当然の事ですが、世の中で解決が望まれている課題は、学問の領域とは無関係に存在します。実世界の現象は、それが自然現象であれ社会現象であれ、一つの学問分野でまかないきれるほど単純ではありません。したがって、ある課題を解決しようとする場合、その解決のプロセスや手段になんらの制限も設けるべきではありません。その意味で、人は、ある専門分野に秀でれば秀でるほど、その専門分野を超えるということに対して自ら障壁を立ててしまう可能性があるということに気をつける必要があると思います。

ここでもう一度、学位の意味を考えてみましょう。学位はその根拠となった学位論文が扱う課題に対する知識や扱った課題に関する解決の結果だけを問うものではありません。根拠となった学位論文の内容、論述を一番の評価資料としてはいますが、一般的な意味での問題解決能力の獲得状況を評価対象としているのだと考えるべきです。したがって、学位を持つ人、とくに最高学位の博士号を持つ人は、自分が経験したことのない新しい課題にも取り組んでいける能力を有しているとみなすべきです。
繰り返しになりますが、博士号の授与にあたっては、何ができるかではなく、課題にどう取り組むかをプランする能力とそれを遂行・実現する能力、さらに他の事象に向けて展開してゆける能力が評価されているのだと理解してください。その意味からも、本日修士号をとって社会に出られる方は、そのうちに、博士号をとるために本学に戻ってこられることを期待しております。

最後に、2年後の2018年のことを述べておきます。
ご存知のように、電気通信大学は、2後の2018年に、創立100周年を迎えることになります。この記念すべき節目において来し方を振り返るとともに、次の節目に向けて電通大の存在価値をさらに高めるべくいろいろな視点に基づく機能強化のための改革に取り組んでいます。100周年キャンパスの新営計画がそうですし、大学の財政基盤をより強固にして、学生諸君への奨学支援や国際交流支援などを充実させることを目指したUEC基金の創設もそうです。
また、100周年とは独立ですが、大学と卒業生の絆をさらに強固にするために、生涯メイルシステムも起動させました。このシステムは、卒業生・修了生・退職教職員のすべてにUEC生涯メイルアドレスを無料で提供するもので、生涯にわたり、様々な電通大関連情報の配信や、恩師、同窓生、友人などからの連絡を受け取ることができるメイル転送サービスです。大学を去られる前にぜひ、生涯メイルへの登録を済ませておいて頂けるようお願いいたします。

先のUEC基金への募金にもぜひご協力ください。学生時代に貸与型奨学金を受けていて、その返済が始まるので寄付は無理だという方もおいででしょう。そのような場合はUEC基金への呼びかけ活動にぜひご協力いただきたいと思います。

最後に、100周年を迎える2018年の記念式典で皆さんと再会して、皆さんの活躍、電通大の発展、社会の持続的振興を共に喜び合えることを祈念して、私のお祝いのことばとさせていただきます。

本日は、修士並びに博士の学位取得、誠におめでとうございます。

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