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学長室から:大学案内

平成29年度 大学院入学式

2017年4月6日
福田 喬

皆さん、こんにちは。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。

このところ、春らしい天候が続き、キャンパス正門のさくらも、今日に併せて満開となり、植え込みの中の色とりどりの花々もちょうど開花の時期で、皆さんの入学に合わせてくれたかのようです。

ご来賓の本学同窓会目黒会の野々村欽造会長、列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎いたします。

参列されているご家族やご関係の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

ところで、本日お迎えしたのは、大学院情報理工学研究科博士前期課程への入学者547名、博士後期課程への入学者47名の皆さんです。つまり、今日ここにお迎えしたのは、合計594名の皆さんで、その中の109名の方は、他大学を卒業、修了した後においでになった方です。本学大学院を選んでいただいたことに心から御礼を申し上げます。
また、入学された皆さんの中には、留学生の方が前期課程に38名、後期課程に14名、合わせて52名、社会人の方が、前期課程に4名、後期課程に13名、合わせて17名いらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っています。

もう一つデータをお示ししますと、今年度の大学院入学者の中の女子学生数は、前期課程が547名中74名、比率は13.5%でした。昨年まではせいぜい10%強でしたので比率は上がっています。後期課程では入学者47名中6名、比率は12.8%で、昨年までは15%前後でしたから、こちらは残念ながら下がってしまいました。
我が国は、国を挙げて女性の活躍増進を図ろうとしています。特に理工学分野における女性の活躍は、均整の取れた産業社会の発展に欠かせない要素です。その意味からも大学院での女子学生比率をもっともっと高めたいと思っています。それには、女子学生の方々の活躍が後に続く人たちにとって良いロールモデルとなることが必要です。期待しています。

ところで、今日、人間・社会・自然を取り巻く問題はますます多岐に渡り複雑化しています。グローバル化の進展は国家間・地域間の相互依存を深め、各国・各地域が抱く様々な問題は地球規模に瞬時に伝播・拡大して行きます。国内を見ても、少子高齢化が加速して地域は疲弊しつつあります。 このような状況下、本学は、その根本理念、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」の下で、「人間・社会・自然の秩序ある発展に寄与するために、情報理工学分野に確たる軸足を置きつつ、ディシプリンに捉われない幅広い見方・方法によって社会が抱える諸問題の解決に取り組む、併せて、その役割を担い且つリーダーとして牽引することのできる高度な人材を育成する」ということを目標に、教育研究の高度化に努めています。このことは、本学が「そのコア・コンペタンスとして掲げる『総合コミュニケーション科学』に関る教育研究の世界拠点となることを目指す」というビジョン・メッセージが示すところでもあります。

ここで、先ほど、「社会が抱える諸問題の解決に取り組む」と申しましたが、この「問題の解決」ということについて、少し付言させてください。
「問題を解決する」というプロセスをステップに分解すると、まず「問題」から「課題」を抽出し設定することが必要です。そして次に、その設定した課題を解決するための「アクション」を考え、それを「実行」する。これが「問題解決」の典型的なプロセスとなっているはずです。 すなわち、問題解決は、「問題、課題設定、アクション選択、実行」の結果としてもたらされるはずです。
ところで、課題とアクションは、通常、表裏一体の関係にあることから、「課題設定」ができれば具体的な「アクション」はほぼセットで付いてきて、後は「実行」あるのみと言っても過言ではないでしょう。したがって「問題解決」の成否は、ひとえに「課題設定」に懸かっているということになります。

大学院では、各自が「自らの研究テーマ」を持ち、それを攻略する必要があります。これは具体的には、自分が解決しようとしている「問題」、それは例えば、「専攻している学問分野においてまだ解決されていない問題」かもしれませんし、いわゆる「社会が解決を望んでいる問題」かもしれませんが、その解決しようと考えた「問題」から、どのような考察の下に「課題」を抽出し「自分の研究テーマ」とするか。そして、「課題すなわち研究テーマ」をどのような観点から、如何にして攻略するかを寝ても覚めても考え続ける、といったことが、大学院での日々の生活の基本となります。

研究テーマを設定し攻略するためには、必要となる知識を獲得していくことも必要なことですが、未知の世界の開拓においては、あまり的を絞りすぎる学習には限界があるように思います。的を絞ることは一見無駄がなく効率的に見えるかも知れませんが、専門の枠を超えるような大きな独創の芽を摘んでしまうことになるかも知れないのです。自らの専攻分野だけではなく、他の分野の学識をも豊かにすることによって、専門分野における既存の枠組みではとらえられなかった視角が与えられ、独創的な攻略法にたどり着く可能性が膨らむということを忘れないでください。そして、皆さんの後に道ができるような独創的な研究をぜひ実現してください。

ひょっとして、皆さんの中には、現時点では、ご自身の素材としての価値を十分には認識できていない人がいるかもしれませんが、皆さんは全て確実に社会のリーダーとなる人材です、いや、社会のリーダーとなって頂かなくてはなりません。どうか中心的役割を担い始める十年先に社会のリーダーとして必要とされる知識体系や考え方を、そして何よりも「解くべき問題」から「課題」を抽出する能力、すなわち「課題設定能力」を培っておいてください。そのためにも、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる、語学力、リテラシー、説得力、企画力、さらに発信力、感化力などの人間力を身につける必要があります。これらこそが大学院で身につけるべき高度な資質というものでしょう。大いに研鑽してください。

話題を少し変えます。

本学は、大学、企業、行政組織が参画する産学官連携の組織であるスーパー連携大学院コンソーシアムに加盟しており、そのコンソーシアムが提供するスーパー連携大学院プログラムに参加しています。このスーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学、北海道から九州まで広域に分布する6大学ですが、それらが連携して進めている、イノベーション博士を養成するプログラムで、カリキュラムの構築・実施からその品質管理、さらにプログラム修了生のキャリアパス・ケアーまで、コンソーシアム正会員である大学、企業、行政がそれぞれ対等な立場で参画して創り上げ実施しているプログラムです。その目的は、国際社会においてリーダーシップを発揮し、イノベーションによる価値の創造を担うことができる「志」の高い博士を育成することにあり、博士前期課程および後期課程を含む原則5年一貫の教育プログラムです。現在はまだ前期課程1年の新入生については募集中のため確定していませんが、前期課程2年生以上の年次更新の学生については、正会員6大学から合わせて15名が履修生となっていて、企業との共同研究に基づく学位研究に取り組んでいます。
この式典の後に開かれる大学院オリエンテーションの場で詳しい説明がされると思いますので、よく検討していただいて多くの方がこのスーパー連携大学院プログラムにトライされることを期待しています。

ところで、本学は、4年前に文部科学省が創設した「研究大学強化促進事業」において、支援対象19大学の1つに選ばれて、世界トップレベルとなることが期待できる大学の1つであるとの評価を受け、複数年に渡って特別経費による支援を受けています。本学は今、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化と、その研究力を背景とした教育力の強化に取り組んでいます。

その場合、大学の研究活動は、皆さんのような大学院生の力によってかなりの部分、支えられています。電気通信大学の大学院を選んでくださったのですから、本学の存在価値を高めることが、皆さんのためでもあります。大学院生としての本分に邁進し、成果を上げることを期待しています。 前期課程に入られた皆さんも、次は後期課程への進学にぜひ挑戦してくださることを願っております。

さて、本学は、1918年に創設された「無線電信講習所」という無線通信士養成学校をルーツとしています。したがって、来年2018年には、その創設から数えて100年目となります。この記念すべき節目の年に向けて数年前から、記念シンポジウム等の冠イベントの開催や記念募金の設立、記念誌や記念式典の準備等を進めて参りました。なかでも大きな事業の一つは、この調布キャンパスの隣にある小島町地区を再開発して100周年キャンパスを整備したことです。そこには職員宿舎と2棟の学生宿舎に加え、学外企業などを誘致する共同研究施設棟を建設しました。この共同研究施設棟は、学外の企業・機関に入居してもらい共同研究を通じて「新しい価値を共創する」ことを柱としており、すでに棟内全40区画のスペースへの入居企業、団体はほぼ決定しています。
この100周年キャンパスには「UEC Port」というニックネームが付いています。このUEC Portとは、「Unique & Exciting Campusの港」を意味し、電気通信大学を訪れる全ての人々にとっての玄関であると共に、大学が目指す、人と人、人と自然、人と社会、人と人工物が創り出す豊かな総合コミュニケーション科学の発着点の場であり続けたいという思いを込めて命名したものです。 更なる飛躍を目指す拠点としてこのUEC Portを活用して、教育研究の質をより一層高め、社会から信頼される大学として、人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる持続発展可能な社会の実現に向け、役割を果たしてゆく所存です。
本日ご臨席のご家族やご関係の皆様におかれては、引き続き、本学へのご支援、ご協力を頂けますようお願い申し上げます。

以上、594名の皆様の大学院ご入学をお祝いするとともに、明日を担う皆様のご活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶とさせていただきます。

本日は、誠におめでとうございます。

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