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学長室から:大学案内

平成30年度 大学院入学式

2018年4月5日
福田 喬

皆さん、こんにちは。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。
来賓の本学同窓会目黒会の 野々村欽造会長、列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんのご入学を心から歓迎致します。

ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

さて、ここしばらく続いた好天気と異常とも思える暖かさ。そのために、キャンパス内の桜や噴水前の花壇の花など、皆さんを待ちきれずに、残念ながらその盛りを過ぎてしまったようです。

ただ、それでも、正面の植え込みの中を少し注意深く見ていただきたく思います。まだ背が低くてポールでのサポートが必要な植木が2株あるのに気付かれると思います。それらは実はニュートンのリンゴの木です。
リンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したというのは有名なニュートンの逸話ですが、その逸話に基づいてイギリス・ウールスソープにあるニュートンの生家の庭のリンゴの木が接ぎ木され、科学の振興・啓発のために世界各地に分譲されています。本学でも4年前にその分譲を受けて植樹したのが、ポールで保護されたその2株の植木です。
植樹後3~4年したら実をつけるだろうとのことでしたが、ほぼ予測通り、この春、花芽を付け、つぼみがほころび始めてきています。うまくすればこの秋、実をつけたニュートンの木を目にすることができるかもしれません。どうか大切にしてください。

もっとも、リンゴに限らず、なにか物が落ちる現象、つまり物体が地球に引きつけられる現象については、ニュートン以前から誰もが知っていて、古代ギリシアのアリストテレスも自説を唱えていたそうです。そして、ニュートンの時代のイギリスでも、ニュートンに限らず、自然科学者たちの幾人もが、先人のケプラーやガリレオの説にヒントを得て、それを一般化又は改良しようと試行錯誤を始めていたらしいです。
が、その一般化、定式化に成功したのがニュートンであって、ニュートンが持つ、日常に起きることに関心を持ち続ける深遠な姿勢、そこから理論への着想を得てそれを発展させるための高い能力、それらを示し称える意図がこのリンゴの逸話に秘められた本意だろうと、私は思います。
研究を続けるうえで疲れたり、ひょっとして行き詰ったりした時など、このニュートンのリンゴの木を眺めながら思索にふけってはいかがでしょう。そしてその際には、ニュートンのリンゴの木の逸話に込められた、日常に起きることに関心を持ち続けることの重要さと、その姿勢にこそ新たな理論への着想を生み出し育てる可能性が秘められているのだということなどに、想いを巡らせていただきたいと思います。

ところで、本日お迎えしたのは、博士前期課程への入学者569名、博士後期課程への入学者32名の皆さんです。
それらの中には、他大学を卒業あるいは修了して本学へ来てくださった方が、博士前期課程で109名、博士後期課程で13名いらっしゃいます。本学大学院を選んでくださったことに心から御礼を申し上げます。
また、博士前期課程では38名の外国人留学生と4名の社会人学生の方が、博士後期課程では7名の留学生と9名の社会人学生の方が、それぞれいらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っております。

本学は、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」を根本理念としています。そして、その理念のもとで、「人類の持続的発展のためには、20世紀型の物質文明から脱却して人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる社会とする必要があり、そのためには『人と人』、『人と自然』、『人と社会』、『人と人工物』のコミュニケーションを基軸とするイノベーションが不可欠である」との認識を提示し、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学技術体系を、「さまざまな事象を広義のコミュニケーションの視点から捉え、関連する個別の学問、要素技術、さらにそれらの融合、協働の分野の技法の総合的な適用でもって課題解決を図る」との立場から「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を進めることを宣言しています。

そして今や、情報通信技術の進展によって、社会、経済の構造は勿論のこと、知識や価値の創造プロセスまでもが大きく変わる「大変革の時代」に入って来ています。そのような時代に必要とされるのは、ビッグデータ、AI、IoT、セキュリティ、デバイス、といった、大変革時代の社会のサービスプラットフォームを支えるために必要となる基盤技術であり、そのプラットフォーム上で新たなイノベーションを創出するために必要となるコア技術、例えば、ロボット、センサ、バイオ、ナノテク、材料、光・量子等の技術です。そして、それらを担う多様な人材と、基盤技術、コア技術の源泉となる学術研究、基礎研究の深化が求められています。

このように見てみると、どうでしょう、本学の専攻分野は社会が必要としている基盤技術、コア技術の分野に正にぴったり合致しています。そして更に、それら基盤技術、コア技術を駆使して大変革時代の課題を解決する手法は、本学が提唱している「総合コミュニケーション科学」の立場とまさに重なるものであると言えるでしょう。
そうなると、皆さんは、大変革の時代に入ったこの社会が求めている、高度専門技術者・研究者としての人材候補に他なりません。その意味から、皆さんには、将来、自分はどのような分野で、立場で、社会や技術を先導するか、または、すべきかを早く方向付けして、それに即した中長期の計画をしっかりと立てて励むことが要請されているのです。

ところで、博士前期課程では、これまでの学士課程での蓄積の上に、さらに基礎的な知識を補い、研究のために必要な技術を身につけるなど、専門家として独り立ちできるよう体系的な教育が行われます。
博士後期課程では、前期課程までに習得した知識や技量を基礎に、新たに自ら研究計画を構想し、それに基づいて研究を遂行することが中心となります。そして、研究の成果として論文をまとめ、学術誌などによりその成果を国際的に発表していくことになります。

大学院では、各自が「自らの研究テーマ」を持ち、それを育てる必要があります。これは具体的には「問い」の発見ということになります。研究において最も苦しいことは実はこの部分かもしれません。そして、この「自分の研究テーマ」をどのような観点から、どのように攻略するかを寝ても覚めても考え続けることが、大学院の日々の生活の基本となるでしょう。

研究テーマを攻略するためには、必要となる知識を獲得していき、専門性を高め磨くことが必要ですが、未知の世界の開拓においては、あまり的をしぼりすぎる学習には限界があるように思います。的を絞ることは一見無駄がなく効率的に見えるかも知れませんが、専門の枠を超えるような大きな独創の芽を摘むことになるかもしれないのです。
自らの専攻する分野のみならず、他の分野の学識をも豊かにすることによって、専門分野における既存の枠組みではとらえられなかった視角が与えられ、独創的な攻略法にたどり着く可能性もあります。傑出した研究者・技術者には、いわゆる「針と風呂敷」の両方が求められるということを忘れないでください。そして、皆さんの後に道ができるような独創的な研究をぜひ実現してください。

皆さんの中には、果たして自分は目標を達成できるだろうかと少し弱気になって、ご自身の素材としての価値を十分に認識できていない方がいるかもしれません。が、皆さんは確実に社会のリーダーとなる人材です。むしろ、社会のリーダーとなって頂かなくてはならないのですと言うべきかもしれません。どうか、社会の中で中心的役割を担い始める五年先十年先に必要とされる知識体系や考え方を、在学中に準備しておいてください。そのためにも、高い専門性の獲得は当然のことながら、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる語学力、説得力、企画力、発信力、さらに、感化力、倫理観などの人間力と学際的・複眼的な思考力、加えて、課題を捉えるために必要とされる俯瞰力など、これらの素養を涵養し身につける必要があります。大いに研鑽してください。

ところで本学は、多数の大学、企業、行政が参画する産学官連携の組織、スーパー連携大学院コンソーシアムに加盟しており、そのコンソーシアムが提供するスーパー連携大学院プログラムに参加しています。カリキュラムの実施からキャリアパスの支援まで、コンソーシアム正会員である大学、企業、行政がそれぞれ対等な立場で共同参画して創り上げているプログラムです。
その目的は、国際社会においてリーダーシップを発揮し、アカデミア以外の分野でイノベーションによる価値の創造を担うことができる「志」の高い博士を育成することにあり、博士前期課程および後期課程を含む5年一貫の教育プログラムです。5年一貫ですが、後期課程からの編入履修のルートも用意されています。
この式典の後に開かれる大学院オリエンテーションで詳しい説明がされると思いますので、よく検討していただいて、多くの方がこのスーパー連携大学院プログラムにトライされることを期待しています。

話は変わりますが、2013年に文部科学省は、世界水準の優れた研究大学群を増強して我が国全体の研究力強化を図ることを目的とした10年計画の「研究大学強化促進事業」をスタートさせました。そして全国の国公私立大学および大学共同利用研究機関、合わせて約780の大学・研究機関から、研究力に関する客観的指標に基づいて19の大学と3つの研究機関を、集中的に支援する対象に選びました。本学は、その19の大学の1つに選ばれて、世界トップレベルとなることが期待できる大学の一つであるとの評価の下、複数年に渡って特別経費による支援を受けて研究力強化に向けた事業を進めています。そして昨年2017年には、この事業期間のちょうど半分が経過するということで中間評価が行われ、本学は、「順調に進んでおり、現行の努力を継続することによって構想を達成でき、今後も発展することが期待できる」とする評定による『A』評価を受けて、2022年度までの事業後半5年間も、引き続き支援を受けることが決定しています。
本学はこれからも、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化を進めて参ります。そのような場合、大学の研究活動は、皆さんのような大学院生の力によってかなりの部分、支えられています。電気通信大学の大学院を選んでくださったのですから、本学の存在価値を高めることが、皆さんのためでもあります。どうか、大学院生としての本分に邁進してください。
前期課程に入られた皆さんも、前期が修了した後は、後期課程へ進学してくださることを願っております。

ところで、本学は、前身の組織の創立から数えて、今年2018年12月8日に100周年の節目を迎えます。今日、大学に来られる際に気付かれたかと思いますが、キャンパス南門近くの甲州街道沿いに、創立100周年の記念式典を行う日までの日数をダウンカウントするボードが設置されており、あと247日の数字が示されていたと思います。
ここにおいでの博士前期課程569名の方および博士後期課程32名の方は、本学100周年という記念すべき祝賀の節目に入学されてきた方々というわけです。

この100周年の節目を迎えるにあたり、さらに次の節目をも視野に入れ、周年の標語、Centennial Symbolとして、『ひらけ、INNOVATION!』の言葉を掲げることといたしました。カウントダウンボードや、キャンパス正面の植え込みに建てられたサインボード、キャンパス各所に掲げたポスターなどで目にされておられるかと思います。

標語の先頭の『ひらけ』は平仮名としています。
この平仮名『ひらけ』にはいろいろな漢字をあてはめることが出来るでしょう。門を開く、扉を開くに用いられる『開け』の場合には、「新しく始めよう」という意味になるでしょうし、開拓や干拓などに用いられる『拓(たく)』の文字を訓読みで『拓く(ひらく)』とする場合には、「今まで無かったことを始める」の意味が込められるでしょう。さらに、啓発するや神の啓示といった場合などに使われる『啓(けい)』の文字をこれも訓読みで『啓く(ひらく)』とする場合には、『人の目を啓いて解らないことを理解できるようにする』の意味が込められることになります。その他にもいろいろとあります。
したがって、平仮名のまま『ひらけ』とすると、それら全ての意味合いが重畳して、『INNOVATION』に関する多重の想いが浮かび上がってきます。このことを踏まえ、この標語によって、我々が目指す『INNOVATION、すなわち革新、新機軸』の目標、性格、ひいては行動指針に繋がるものまで、様々な想い、色合いを持って醸しだされることを期待しています。
そして、この標語の下で、

  •   「100年の節目を迎えるにあたり、輝けるこれまでの道程に想いを致し、次なる節目に向けて、教育・研究のダイナミズムの下、知の創造拠点であり続けるとともに、グローバル社会にそれらの知を還元し続けます。」
というメッセージを発したいと思っています。
そして、このメッセージで指している、創造する知、社会に還元する知とは、本学の教育研究活動から生まれる研究成果であり、グローバル社会を牽引する高度人材、すなわち将来の皆さん、のことであることは言うまでもありません。

最後に、本学の学園としてのキャッチフレーズを紹介しておきます。
本学電気通信大学の英語名称の、The University of Electro-Communications、の略称「UEC」と同じ頭字語を持つ、Unique & Exciting Campus という言葉です。その示すところは

  •   電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな(Uniqueな)若者が集い、楽しくてわくわくする(Excitingな)新しい知と個性を育てる学園(Campus)を目指します。
というものです。ぜひ覚えておいてください。
そして、このUnique & Exciting Campusを合言葉に、充実した、楽しい、そして価値ある学園生活を送ってください。

以上、明日を担う皆様のご活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶とさせていただきます。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。

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