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学長室から:大学案内

令和2年度 学長告辞(大学院)

2020年4月8日
田野 俊一

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。

本学大学院に入学される方々に心からお祝いを申し上げるとともに、本学の役員、教職員、在校生を代表して、皆さんを心から歓迎いたします。  ご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。

 

本学大学院に入学される皆様には、新しいスタートとなる入学式を心待ちにされていたことと思いますが、新型コロナウイルス感染の拡大防止のため、慎重に検討を重ね、皆様の健康と安全を最優先に考え、入学式の中止という苦渋の決断をいたしました。本来であれば、入学式の場においてお祝いの言葉を述べるところですが、このようなかたちでのご挨拶となりますことをご理解賜りますようお願いいたします。

 

本学大学院にお迎えしたのは、情報理工学研究科博士前期課程への入学者531名、博士後期課程への入学者39名の皆さんです。この中には、他大学を卒業あるいは修了して本学へ来てくださった方が博士前期課程で102名、博士後期課程で20名いらっしゃいます。本学大学院を選んでいただいたことに心から御礼を申し上げます。また、博士前期課程では46名の外国人留学生と6名の社会人学生の方が、博士後期課程では3名の外国人留学生と10名の社会人学生の方がそれぞれいらっしゃいます。
本学の情報理工学研究科博士前期課程の学生定員は1学年500名です。国立大学の理工系研究科の中で全国7番目の大規模な研究科となっています。

まず、学部を卒業したばかりの皆さんに、一般的な大学院生としてのアドバイスを申し上げます。
学部では先人たちの知識がきれいに整理された教科書群が整備されており、それを学んできたと思います。大学院においては先端的な内容を学ぶために最新の教科書で学んだり、最新の研究成果を学ぶために論文を読む場面が多くなります。最先端の内容を学ぶ時には、常に疑問を持って学んでください。最先端の内容ですので教科書、論文の内容、さらには先生の教える内容ですら間違っている可能性があるのです。大学院は常に疑問を持って学ぶ態度が重要です。

また、学部の最後の1年の卒論では、誰も解いたことのない問題、それももしかしたら答えがないかもしれない問題に1年間取り組んだことと思います。大学院の修士や博士では、その比重が高まることに加え、問題自身を見出すことも学びの対象になります。研究において最も苦しいのは、実はこの部分かもしれません。そして、この「自分の研究テーマ」を、どのような観点から、どのように攻略するかを、寝ても覚めても考え続けることが、大学院の日々の生活の基本となります。

次に、本学の学生としての皆さんに、本学の特徴についてご説明します。
本学は、「人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践」を根本理念としています。そして、その理念のもとで、「人類の持続的発展のためには、20世紀型の物質文明から脱却して人々が心豊かに生き甲斐を持って暮らせる社会とする必要があり、そのためには『人と人』、『人と自然』、『人と社会』、『人と人工物』のコミュニケーションを基軸とするイノベーションが不可欠である」との認識を提示し、そのようなイノベーションをもたらす幅広く統合された科学・技術体系を「総合コミュニケーション科学」と呼ぶこととし、それを基軸として21世紀の社会に貢献する研究、人材育成、社会貢献を進めることを宣言しています。

皆さんは超スマート社会、Society5.0という言葉をご存知でしょうか。Society1は、狩猟社会、2が農耕社会、3が工業社会、4が現代の情報社会です。Society5.0は現代社会の次に来る未来社会という意味です。これをコミュニケーションの変遷という観点で見ていくと、Society1は人と自然、2が人と社会、3が人と機械、4が人と情報のようにコミュニケーションが非連続に変化していることが分かります。Society5.0では、人と疑似AIとの対話や、モノとモノとが話し始める(IoT:Internet of Things)など、さらに新たなコミュニケーションが出現することになります。
まさに本学が掲げる「総合コミュニケーション科学」の花開く場が超スマート社会、Society5.0であると言えます。
超スマート社会、Society5.0の実現に必要とされる基盤技術を内閣府が、光・量子技術から、素材ナノテクノロジー、ロボット技術、ネットワーク技術、AI技術などにまとめていますが、これらすべての専門領域は、本学の情報理工学研究科の5つの専攻でカバーされています。

そこで、本学ではD.C.&I.戦略に基づいて、本学が超スマート社会、Society5.0の創造拠点になるべく、教育研究の高度化に取り組んでいます。D.C.&I.戦略の"D(Diversity)"は、多元的な多様性を表し、非効率のように見えても、多元的な多様性を意識して維持すべきであることを意味しています。"C(Communication)"は、深い相互理解・触発を表し、多様性間の連携がないと、多様性を持っているとは言えず、孤立した多様性は無意味であることを意味しています。最後の"I(Innovation)"は、永続するイノベーションを表し、"D"と"C"が、欠けると、いずれイノベーションが止まってしまうことを意味しています。

本学は、研究分野、研究者、学生、共同研究の質、目標、サイズなどにおいて多様性が高く("D")、かつ、物理的にコンパクトに集積されており、さらに、基本理念として総合コミュニケーション科学を謳っていることから、様々なコミュニケーションが生まれやすいという特質を持っており("C")、その結果として、高度なイノベーションを生み続けられる大学になっています。この特質をさらに強化することにより、超スマート社会、Society5.0の世界的教育研究拠点を目指しているのです。

このD.C.&I.戦略の考え方は、皆さん自身が進歩する戦略としても使えます。つまり、自分の研究分野の専門性や友人においても多様性を追求すべきですし("D")、単に雑多な知識や多くの友人を持つだけでは無駄で、それらの間の相互作用を産み出そうとしない限り("C")、新たなアイデアは生まれないのです。ぜひ、D.C.&I.を念仏のように唱え、大学院での教育研究活動に生かしてください。

最後に皆様に2つだけお願いを申し上げます。
地元調布市と本学は、友好協力協定を結び、大学と調布市及び調布市民とは交流を深めています。調布駅前の交差点から大学の前の甲州街道までの約300メートルの道は「電通大通り」と名付けられているのもこの一環です。また、皆さんの大学での活動を支援いただいている「電気通信大学学園活動後援会」の会長を調布市長にお願いしています。この学園活動後援会は、皆さんのご家族の方々の会費によって運営されており、法人としての制約で大学が支援できない部分を補完するという役割を担っていただいております。具体的には、学生の研修や行事、サークル活動、さらに会員学生を対象とした学生の海外派遣や大学院合宿ゼミなどの幅広い支援をいただいております。事業の性格上、会員学生のみを対象とせざるを得ないことから、ぜひ多くの学生が支援を受けられるように、多くのご家族の方に参加していただくようお願いいたします。

また、本学では、本学における教育研究の活性化及び学生支援並びにその活動環境の整備充実等を図ることを目的として、国立大学法人電気通信大学基金を設置しています。具体的には、成績優秀者(留学生を含む)に対する奨学金、学生の海外派遣等の国際交流に活用しています。また、支援内容は同じですが、学資支援基金として経済的理由により修学が困難な学生に向けた基金も用意しております。新入生、ご家族の皆様にもご協力いただければ幸いです。

以上、皆様の大学院入学をお祝いすると共に、明日を担う皆さんの活躍へのエールを送り、歓迎の挨拶とさせていただきます。

本学で学べる日が来るのを待っていてください。必ずその日は来ます。

我々も皆さんと会える日が来るのを楽しみにしています。

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