研究室紹介OPAL-RING
田中(勝) 研究室
エネルギーの有効利用無害の半導体材料の発見
所属 | 大学院情報理工学研究科 先進理工学専攻 |
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メンバー | 田中 勝己 教授 |
所属学会 | 日本化学会、触媒学会、応用物理学会、日本表面科学会、日本物理学会、アメリカ化学会 |
研究室HP | http://tanaka.ee.uec.ac.jp/ |
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掲載情報は2015年8月現在
- 田中 勝己
Katsumi TANAKA
- キーワード
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環境、環境型材料、ナノテク、半導体、微粒子、機能性材料、ナノ半導体、酸化チタン、シリコン、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、可視光利用
研究概要
環境型材料にナノテクを絡め新しい性質を引き出す
環境に負荷をかけない材料を使い、有機物分解、電子放出など特定の機能を持つ半導体材料を作り出そうというのが、当研究室の研究テーマである。現在「酸化チタン」「シリコン」「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)」を中心として研究を進めている。
酸化チタン
最近、抗菌、脱臭、汚れ除去といった分野で使われ始めてきた、酸化チタンに不純物イオンを付加した微粒子を作り、有機物の分解や廃液処理に効率的に用いるための研究に取り組んでいる。この方法だと太陽光に多く含まれる可視光を利用する可能性が広がる。これまで有機物の分解や廃液処理は紫外線に頼っており、可視光はほとんど活用されてこなかった。
可視光が利用できれば、もっと簡単に分解・処理できる道筋が付くのである。少しずつ実験成果が上がってきているところだ。
新たに、光触媒としては活性の無かった半導体の微粒子を作り、可視光を利用した半導体触媒の酸化還元機能を開発する取り組みにも挑戦している。現在は、特に酸化機能の開発に着目して微粒子を模索中だ。半導体微粒子開発とその低温薄膜化技術の完成により、さまざまな場面で環境調和型社会へ貢献できると期待している。
シリコン
次世代ディスプレイの表示素子の材料にする研究を行っている。シリコンはいずれ土に還る環境型の材料だ。
企業ではシリコンより性能の優れた化合物半導体を使って、より付加価値の高い製品を作ることが模索されている。ところがその化合物半導体には砒素などの有害物質が含まれている。シリコンで高機能な半導体ができれば、安全性が高く、しかもコストの安い半導体となる。それを目指して研究している。
シリコン材料はそのままでは光らないが、数ナノメートルより小さくなると性質が変わり、光るということが最近分かってきた。またシリコン材料をうまく作れば電子を出しやすくなることも知られている。
DLC
DLCは硬くかつ表面が滑らかであることから、材料表面に薄く加工することで強度を上げ、磨耗を防ぐ材料として注目されている。また、シリコン同様に、うまく作れば電子を出す材料に応用できる半導体でもある。
当研究室は、炭化水素に含まれる炭素を原料にして、簡単な設備を使い安価にDLC膜を作り出す研究を行っている。材料表面に塗膜する技術開発にも力を注いでいる。
研究開発
当研究室では、レーザーを使ってシリコンの単結晶を微粒子にし、ゼオライトの穴の中で大きさを整え並べて室温発光させることに成功している。
次に、ゼオライトの穴にシリコンの微粒子を流し込むと、世の中には存在し得ない3次元のダイヤモンド構造をしたシリコンの塊ができる可能性が出てきた。新しい性質が生まれるか否か、実験で解明していく考えだ。
また、アルカリ金属と酸素の化合物をシリコン微粒子と反応させることで、熱を発しない効率的な低温電子放出剤の開発に目途をつけている。実際の電子放出に応用する実験が進行中だ。
酸化チタンもシリコンも企業との共同研究が行われており、酸化チタンは企業で汚れ防止の実用化に期待が持たれている。
DLCを材料表面に加工する特許を取得し、共同研究等を展開中である。
- パルスレーザーを用いた半導体微粒子作製
アドバンテージ
環境型材料製造プロセスでも有害物質を出さない
これからの工業はいっそうの環境配慮が求められていくであろう。その素材が有害物質を含むかどうかにとどまらず、それから材料を製造するプロセスにおいても有害物質を排出するかどうかを問われると考えられる。
当研究室では、素材そのものはもちろん、材料の製造プロセスにも配慮している。
一般に酸化チタンは四塩化チタンから作るが、その際、塩酸などの有害な副生物が出る。当研究室はロスを覚悟で、酸化チタンの単結晶を水に入れ、レーザーを当てて微粒子化している。この方法だと有害物質が出ないので、水と一緒に流しても環境を悪化させることはない。
シリコンについても、真空中で単結晶にレーザーを照射する方法をとっている。
環境型材料の作製プロセスにおいても環境を侵さない点が、当研究室のアドバンテージである。
- 光電子分光(XPS)装置での試料分析
今後の展開
土に還せる機能性環境指向型半導体
- シリコン微粒子の基板上堆積と清浄Si表面のSTM像
これから手がけるテーマは、環境に配慮した土に還せる半導体を開発していくこと、そして、簡単なプロセスで付加価値も持った機能性半導体を作り出すこと、と考えている。
室温での酸化チタン薄膜作製方法
- DLC堆積装置
可視光で機能する酸化チタン微粒子も、室温で薄膜にする方法を見出すことができれば、高い温度をかけると溶けてしまうプラスチックなどの上にも加工処理することができ、応用範囲は飛躍的に増加する。もう少しのところまで来ている。
100万円以下のDLC作製装置の開発
DLCが安価に作製できれば、多くの企業で設備投資を気にせず、材料表面への加工を行うことができる。大学発の技術として完成させたいところだ。
そのほかの環境型材料の可能性も探っている。例えば、半導体の材料にもなる酸化タングステンなどである。酸化チタンと同じ機能が出せると見ている。