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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
富田 研究室

有機フォトニクス、非線形フォトニクス、ナノフォトニクス

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 富田 康生 教授
所属学会 応用物理学会(フェロー)、OSA(フェロー)、SPIE(フェロー)、 IEEE
研究室HP http://talbot.es.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

富田 康生
Yasuo TOMITA
キーワード

有機フォトニクス、非線形フォトニクス、ナノフォトニクス、ホログラフィック光記録、光機能材料、非線形光学材料、ナノ微粒子、半導体量子ドット、フォトニック結晶、ナノコンポジット光機能材料、液晶フォトニクス、中性子光学

研究概要

新しい光機能性ナノコンポジットマテリアルの研究開発

光の波動性や粒子性を積極的に利用した光科学技術はフォトニクスと総称され、情報通信/処理分野のみならずエネルギー、加工、ナノテクノロジー、医学、基礎科学など幅広い分野に適用されており21世紀の高度情報化社会において欠くことのできない基盤技術の1つとなっている。
当研究室では、このフォトニクス分野における新しいナノコンポジット光機能材料の創成とその応用に関する研究を行っている。特にレーザー光照射による物質中の電荷輸送や光化学反応により生じる物質の屈折率の変化を利用してデジタルページ情報を記録したり、光でナノスケールでの物質や光を制御することによる新しい光機能材料の創成とそのデバイスへの応用を目指している。例えば、当研究室で行ってきているナノコンポジット光機能材料の応用の1つとして、ホログラフィーの原理を利用した3次元光記録方式であるホログラフィック光メモリー用光記録材料の研究がある。
CDやDVDなど従来の光メモリーは、簡単に言うと、ディスク面上に0と1のビット情報をピット形状変化として1次元の線状に並べたものを2次元面に配置し記録再生しているものである。光ディスクメモリーとは言っても実際には1次元記録再生方式である。
一方、物質中に3次元的に情報記録を行うホログラフィック光記録では、記録される情報は3次元空間中に分散した屈折率の固有のパターンとして記録される。これは言うなれば並列分散型の3次元記録方式であるため、記録密度ならびに記録/再生速度が従来の光ディスクメモリーとは比べものにならない程の向上が期待できる。例えば、小指の先くらいの大きさで1テラバイト程度の情報記録が可能となり、記録データの転送速度は1ギガビット/秒程度が期待できる。
このような魅力あるホログラフィック光記録方式の考え方は約40年前にすでにあったが、近年になってレーザー、光検出器、空間光変調器などの要素機器の技術が成熟したことにより、ここ10年来研究が再開されている。その中で、追記記録型[WORM(Write Once Read Many)型]ホログラフィック光記録材料としてフォトポリマーが注目されてきた。しかしながら、光記録時の光重合に伴い材料が収縮する問題や熱的な安定性の問題があり、これを克服することが実用化のための重要な課題となっている。

ナノ微粒子―ポリマーコンポジット材料

そこで、当研究室では、フォトポリマーにナノ微粒子を分散させ光重合に伴いこのナノ微粒子の分布を所望のパターンに配列させることにより、問題となっていた収縮を大幅に抑制するとともに記録密度向上に重要な屈折率分布コントラストの向上も世界に先駆けて初めて実現した。これにより、高性能なホログラフィック光記録材料の実用化に大きく近づくことができた。
加えて、当研究室では、有機材料中でマイクロメートルスケールのナノ微粒子分布を光によりセンチメートルスケールの領域で自由に配列制御できることも世界に先駆けて初めて実証した。この技術は光記録材料への応用だけにとどまらず、非線形フォトニック結晶や化学センサーなど新規光機能材料への応用の可能性も秘めている。
これらの研究成果は『Nature』誌や米国材料科学学会『MRS』月報での紹介や多くの国内会議・国際会議での招待講演などの例からもわかるように、国内外で多くの関心を持たれている。

アドバンテージ

高性能ホログラフィック光記録材料の研究開発と実用化に向けて

大学院生による実験の様子
(左上)ホログラフィック露光によるポリマー中のナノ微粒子一括配列を示す透過型電子顕微鏡像
(左下)ナノ微粒子ーポリマーコンポジット材料に記録されたホログラム表面の原子間力顕微鏡像
(右)ナノ微粒子ーポリマーコンポジット材料に記録されたホログラム

当研究室では現在、民間企業と共同でナノ微粒子を用いた高性能なホログラフィック光記録材料の開発を進めており、既に世界に先駆けて数多くの研究成果ならびに特許を公表しているとともに、その実用化に着実に近づいている。
最近脚光を浴びているブルーレイディスクは、青色レーザーを用いることで記録容量を27ギガバイト/面程度までに増大している。このような従来型の光ディスク記録方式では限界が見えていることから、次世代光メモリーとしてホログラフィック光メモリーが注目されている。
そして、実用化に向けた研究開発が日本・ヨーロッパ・米国で実施されている。
しかしながら、ホログラフィック光記録材料自体の完成度はまだ十分とは言えず、克服すべき課題が多く残されていた。
そこで、当研究室で開発中のナノ微粒子-ポリマーコンポジット材料はその実用化に向けて有望な材料として期待されている。

今後の展開

ナノコンポジット光機能材料への展開

当研究室で世界に先駆けて行われているナノコンポジット材料による前述の応用の他にも、多彩な応用を目指して研究を実施している。例えば、半導体量子ドットを高濃度分散したナノコンポジット材料によるホログラフィック記録が可能で非線形光学効果を有する非線形フォトニック結晶の研究を進めている。また、ボーズ粒子である光(フォトン)とは量子力学的に異なるフェルミ粒子の中性子による量子ビームをナノコンポジット材料中に記録したホログラムにより制御する研究もウィーン大学(オーストリア)の中性子光学研究グループと共同で行っている。
当研究室では、このようなナノ微粒子の特性を活かしたナノコンポジット光機能材料による新規光機能デバイスの創成を目指していきたいと考えている。

(左)9:16変調コード符号化した250枚のデジタルデータページを光重合性ナノコンポジット材料中にシフト多重記録したホログラムからの再生データページの一例
再生した各データページの(右上)回折効率と(右下)シンボルエラーレート(SER)
(左上)表面修飾された半導体CdSe量子ドット(QD)
(右上)水溶液中で化学合成したQDのイオン液体モノマーへの高濃度分散の様子
(下)QD分散ナノコンポジットフィルム中での非線形光波混合により生じる複数の自己回折光。
研究・産学連携