研究室紹介OPAL-RING
鈴木(勝) 研究室
吸着膜の界面摩擦、量子流体・固体
所属 | 大学院情報理工学研究科 共通教育部、先進理工学専攻 |
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メンバー | 鈴木 勝 教授 谷口 淳子 助教 |
所属学会 | 日本物理学会 |
研究室HP | http://ns.phys.uec.ac.jp/ |
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掲載情報は2015年8月現在
- キーワード
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摩擦、摩擦力、ナノトライボロジー、水晶マイクロバランス法、吸着膜、原子スケールの摩擦、センサー、ヘリウム原子、希ガス原子、水晶振動子、グラファイト
- 鈴木 勝
Masaru SUZUKI - 谷口 淳子
Junko TANIGUCHI
研究概要
摩擦、低温物理の実験的研究
当研究室では特に「摩擦」に関する研究に力を注いでいる。
物体を引きずるとき「摩擦力」が働くことはよく知られている現象であり、人類は古代から摩擦を理解し制御しようと試みてきた。古代エジプトでは、大きな石像を運ぶために地面に木を何本も並べ、水をまき、摩擦を小さくして少ない力で引きずることを既に行っていた。レオナルド・ダ・ヴィンチも自ら実験を行い「摩擦は重さに比例する」という法則を発見している。
時代を経て世の中の技術が進み、人類はミクロスケールの機械を作れる可能性を手にしている。現在、より小さなものに働く摩擦のメカニズムの理解と制御が必要とされている。
大学の講義で、2つの物体が擦れあうときに働く「摩擦」のメカニズムはほとんど触れられていない。その理由は、ミクロな世界での摩擦のメカニズムがほとんど解明されていないからなのだ。機械の分野では、多くの摩擦の研究が行われているが、原子スケールから摩擦を理解しようという新しい切り口の研究は世界的にも稀少価値がある。
低温環境で原子スケールの摩擦の研究
当研究室では「低温」の特殊な環境を作ることで原子スケールでの「摩擦」を測定し、そのメカニズムを理解する研究を行っている。この未知の世界の「摩擦」の原理を解明することが本研究のテーマである。低温の実験容器の中では、水や油などのほとんど全ての材料は凍りつく。このために実験に用意した材料の表面はいつまでもきれいな状態を保つことができ、この表面にヘリウム原子や希ガス原子の吸着膜を載せて摩擦力を測定する実験を行っている。
水晶マイクロバランス法
ヘリウム原子や希ガス原子が材料の表面と擦れあうときに働く摩擦力は小さい。この摩擦力を水晶マイクロバランス法により測定する。水晶はとても安定した振動をする。この水晶振動子に実験に用意した材料を貼り、ヘリウム原子や希ガス原子を載せて水晶を振動させる。振動している材料の表面のヘリウム原子や希ガス原子の間に摩擦力が働くと水晶の振動の様子が変化する。実験は、どのようなときに摩擦が大きくなるのか、また小さくなるかを調べていく。
擦れあうために用意する材料は、グラファイトや金属とさまざまである。当研究室は、水晶振動子に炭素原子面間を開いた表面積の広いグラファイトを使い、金属材料として使われる金も、ミクロの穴のあいたスポンジのような多孔質のものを使っている。このような工夫により原子が擦れあい、小さな摩擦力が測定できるようになった。この水晶マイクロバランス法の技術は、センサーへの応用も考えられ、さまざまな分野から注目を集めている。
ナノトライボロジー
世界中で、原子スケールでの摩擦の研究「ナノトライボロジー」が注目され始めてきた今、日本においても、豊田理化学研究所のサポートにより研究者が集まり情報を交換しあう研究会がスタートしている。
当研究室では、基礎的な技術をオープンにすることで、応用しうる他分野との協力を行い、実用的なものづくりに役立てていきたいと考えている。
アドバンテージ
世界でも3、4人の研究者
当研究室のように低温環境を用いて原子スケールの「摩擦」を研究するには、試料の温度を精密に制御する技術や、表面の吸着膜を完全に制御する技術を確立しないと難しい。加えて、高精度な測定を可能とする水晶振動子に多孔質の金を貼りつける技術がないと、最新の研究が行えない。このために現在、吸着膜を使って摩擦の研究を行っている研究者は世界中で3、4名を数えるのみである。
さらに、当研究室が開発した、水晶振動子にグラファイト基板を貼りつける技術は、原子スケールの摩擦研究において、世界から注目される成果である。
当研究室では、研究で使用する実験装置の製作からセンサーの開発までをも手がけている。新しい技術の開発によって今まで見えなかったもの、測定できなかったものへと研究を広げていこうと考えている。
- 3He-4He希釈冷凍機
今後の展開
原子スケールの摩擦の性質を利用し摩擦の制御へ
これまでは主にヘリウム原子を使って低温環境での実験を行ってきたが、ヘリウム原子で示す摩擦の性質は、もっと一般的な現象であることが分かってきた。現在、重い希ガス原子を用いて、ヘリウム原子のときよりも少し高い温度で研究を進めている。これまでの研究で明らかになった原子スケールの摩擦の性質を利用し、摩擦を制御することで、世の中に役立つものづくりを進めていきたい。
- 水晶マイクロバランス・システムと超音波測定システム
- グラファイト基板を貼りつけた水晶振動子