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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
安井 研究室

物質の結晶構造の解析、構造と物性の相関関係の探究

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 安井 正憲 准教授
所属学会 日本結晶学会、日本化学会
研究室HP http://struct.pc.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

安井 正憲
Masanori YASUI
キーワード

X線結晶構造解析、電子密度分布解析、分子間相互作用、有機結晶の構造相転移、タンパク質、タンパク質と色素分子の相互作用

研究概要

物質の根源的情報である結晶構造をX線回折装置で解析

当研究室では、X線回折装置を使って主に物質の結晶構造解析を行っている。大きなテーマは「X線で分子を見る」ことであり、原子と分子の配列や分子間相互作用を解析することで、ある物質の構造と物性の相関関係を探ることを目的としている。
原子や分子といった微小なものは、直接見ることはできない。普通ものを見るときに使っている可視光線を当てても見えない。そこで、波長がごく短いX線を試料に当て、そこからの散乱(回折)X線を調べることで、間接的に原子や分子を見るわけである。それを可能にしているのがX線回折装置である。
ところで、X線回折現象はX線と電子の相互作用によるものなので、X線結晶構造解析で最初に得られる情報は、結晶中で電子がどのように分布しているかという情報(電子密度分布)である。そして、原子間(分子間)の相互作用は必ず電子がその仲立ちをしているため、電子密度分布を知ることにより、1つの分子内で原子間にどのような力が働いているか(分子内相互作用)、結晶中の1つの分子と他の分子との間にどんな力が働いているか(分子間相互作用)、その力の強さはどのくらいか、といったことを定量的に知ることができるのである。
こうした結晶構造に関する情報は、物質についての根源的な情報と言ってよい。つまり、ある物質の性質(物性)はその物質の構造から決定されているのであり、物質の構造がわかれば物性もわかるわけである。

物性の発現機構を研究

したがって、原子間(分子間)でどのような相互作用が働いてある物性が生じているか(物性の発現機構)がわかれば、逆に構造中でその働きを強めてやることで、その物性をもっと大きく発現させたり、あるいは逆に、その物性の発現を抑えたりといったこともできるわけである。
このように、物質の構造を解析し、かつ物性の発現機構を検討するのが、当研究室の研究テーマの1つである。一言で言えば、物質構造と物性に関する基礎研究を行っているのである。

アドバンテージ

世界最高水準のX線回折装置を保有

当研究室は有機結晶の構造解析について長年にわたり研究してきたので、解析技術とノウハウについてはかなりの蓄積がある。
現在、世界最高水準のX線回折装置も研究設備センターに保有している。
技術やノウハウと最高の装置により、研究室内で様々なX線回折実験を行うことができるのが、当研究室の強みである。

高速・高精度の構造解析が可能

CCD型単結晶X線回折装置

当研究室が使っているX線回折装置を使えば、0.2~0.3mm角のよい単結晶があれば、一両日中には結晶構造を見ることが可能である。
ただ、X線結晶構造解析で難しいことは、実は解析以前に、この「よい単結晶」を作るということなのだ。その方法についてもアドバイスが可能である。
何らかの機能性材料について、もっと機能を高めるためにその構造を知りたいといった要請があれば、それに対してかなりのところ応えることができる。
さらに、示差走査熱量と粉末X線回折を同時に測定可能な装置を研究設備センターに保有しているので、これにより構造の温度変化を詳細に検討することもできる。

今後の展開

タンパク質と様々な分子との相互作用の解明

現在、第1に、当研究室はタンパク質の構造解析研究も開始し、特にタンパク質とさまざまな分子との相互作用を中心に研究中である。
まず、光学不活性の色素分子がタンパク質分子と相互作用することにより、光学活性が生じる現象について調べている。
色素分子とタンパク質分子との間の相互作用機構の解明ができれば、タンパク質分子本来の酵素反応といった機能以外に、新しいタンパク質の有用性を見出せるのではないかと考えている。
タンパク質は分子量が大きいため、よい結晶を作ることが非常に難しいので、構造解析の前提となるタンパク質を結晶化させるよい方法についても探っていきたい。

高精度の電子密度分布解析を様々な分子について行う

粉末X線回折装置(示差走査熱量同時測定)

第2に、当研究室で電子密度解析をいろいろな分子について、より精密にやってみたい。この分野は優れた構造解析ソフトが登場したことで、ここ10年ほど世界的に研究者が増え活性化している。残念ながら、わが国ではそれほど研究者は多くないのだが、やってみると面白いことがまだまだたくさんある。最近、試料の温度を摂氏マイナス230度まで下げられる装置を入れたので、これを使って原子振動の少ない極低温での電子密度分布解析が可能となった。これからの研究成果が期待できると考えている。

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