研究室紹介OPAL-RING
大木 研究室
IPネットワーク技術および
高速・高性能を目指した通信プロトコル技術の研究
所属 | 大学院情報理工学研究科 情報・通信工学専攻、先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター |
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メンバー | 大木 英司 教授 |
所属学会 | IEEEフェロー、電子情報通信学会フェロー |
研究室HP | http://oki.ice.uec.ac.jp/ |
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掲載情報は2015年8月現在
- 大木 英司 Eiji OKI
- キーワード
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光ネットワーク技術、IPネットワーク技術、通信システム技術、ネットワーク制御技術、MPLS、GMPLS、ルーター、スイッチ、ルーティング、スイッチング、標準化、通信品質評価技術
研究概要
多様化・高度化するユーザーのニーズに対応するネットワーキング品質の実現
2008年7月にスタートした。当研究室では、通信技術動向、国内外の産業界の動向、標準化の動向を見据え、情報通信の基礎的・理論的なところから具体的・実践的なところまで、実験的なアプローチを取り入れている。部品、ルータ、通信機器構成から
ネットワーク全体の制御最適化システムソフトウェアに至るまで、ハードとソフトの幅広い知識に裏打ちされたIP技術を活かし、広く社会に貢献する大容量・高速・高品質・高効率・高信頼のネットワーキング技術と通信システム技術の構築・提案を目指している。
現時点ではまず、通信速度が飛躍的に向上しているブロードバンド環境をうまく活用して、ユーザーのニーズや多様な用途に応じて適切な料金で通信サービスを提供でき、さまざまなアプリケーションが現れたとき予想困難な需要変動に柔軟に対応できる、高速・高品質・高効率・高信頼なネットワーク構築技術の研究開発が重要課題だ。
この「ネットワークの作り方や装置をどうすべきか」「要求品質の異なるサービスが混在する通信をどう制御すべきか」というネットワーキングと通信サービスの問題解決とともに、産業界で多数が利用できる通信システム技術の実現が待たれている。
光通信技術とIP通信技術の融合
それには、光通信技術とIP通信技術のいいとこ取りをして融合させ、1つのネットワーク内でユーザーの多様なニーズに応じる柔軟な通信サービス提供を実現する。そのために、光通信で処理を単純化させて高品質な情報通信を行う一方で、ルータでのスイッチング(ルーティング)を適切に組み合わせたネットワーク制御技術でネットワークの資源を効率よく使用するシステムを研究開発している。
現在は高速の光信号が電話局で電気信号に置換され、IPパケット通信で効率的に送られているが、将来は電気を介するネットワークでは電気処理部分の速度が追いつかなくなり、全部「光」で構成するのがよいということになるだろう。
アドバンテージ
部品からネットワーク全体までわかる強みで国際標準化作業
大木は、NTT研究所で15年間、IP(インターネットプロトコル)ネットワーク用のMPLS(Multi-Protocol Label Switching)技術を光ネットワーク用に拡張したGMPLS(Generalized MPLS)技術への発展を目指し、IPレイヤと光レイヤを連携させてマルチレイヤサービスネットワークを運用・制御する技術の研究開発に携わってきた。
このNTT研究所時代、IPの仕様の研究にも携わっていたので、装置の構成部品からネットワーク制御全体までわかる強みがある。
米国のポリテクニック大学(ブルックリン、NY)では超高性能のルータやスイッチの研究開発を行った経験がある。
その頃、IETF(インターネット技術標準化委員会)にIPルータ、プロトコルの相互接続を可能にする提案をし、標準化作業が推進された。
このアーキテクチャが、IETFにおける正式な活動アイテムとして採用され、国際標準化に向けて既に活用されている。
08年秋、当研究室は、NICT(情報通信研究機構)の委託研究に「新世代ネットワークの構成に関する設計・評価手法の研究開発」を国内の企業・大学と連携して提案し採択された。
ネットワーク制御最適化システムソフトウェア
開発中の「ネットワーク制御最適化システムソフトウェア」は、通信ネットワークおよびサービスの設計・運用・制御に関連するあらゆる分野で、通信事業者はもちろん通信機器・部品メーカーまで応用可能だ。
さらに、ネットワークを監視し、通信性能(スピードや安定性など)を計測・評価する技術は計測・評価装置の製造企業と連携が図れる。
今後の展開
世界の標準化動向を見据え、国際的に優位な通信システムを創造
この研究分野の面白みは、世界中を繋ぐところにある。言い方を換えると、さまざまな分野の人材や能力が組み合わされることにより、さらなる可能性の広がりが期待される。
ネットワークの効率化・高品質化が進むと、人々のライフスタイルに大きな変化が起こることが予想される。例えば、家にいながら仕事や勉強ができるなど、時間がもっと有効に使えるようになるだろう。子育てしながらビジネスができたり、遠隔でより充実した学校の授業が受けられたりすることが現実となっていく。さらに、遠隔地においても、在宅患者が高度な診療を受けることができるようになるだろう。
大木は、産業界での技術や経験を活かし、利用者の立場で考えて、理論を噛み砕いて実務レベルで応用するシステムの構築ができ、08年からはさまざまな企業に向けて、レクチャー、セミナーでご理解をいただき、コンサルティング、アドバイス等で提案をしてきた。
さらに、世界の標準化動向を見据え、企業との共同研究開発を通して、通信システムにおける国際的競争力の強化に貢献していきたい。