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学長室から:大学案内

平成31年度 学域(学部)入学式

2019年4月4日
福田 喬

皆さん、おはようございます。

電気通信大学へのご入学、おめでとうございます。
ご来賓の本学学園活動後援会会長 長友貴樹 調布市長、本学同窓会目黒会 野々村欽造 会長、そして列席の役員、副学長、各部局長、並びに、全教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎します。

天の配剤とも思える先週後半からの寒気団のお陰でしょうか、キャンパス内の桜は、皆さんを祝うために、満開を維持して待っていてくれました。
ご家族の皆様のお慶びも一入のことと、心からお祝いを申し上げます。会場の都合で、スクリーン越しのご挨拶となりますことをお許しください。

では、まず、本年の情報理工学域入学の状況をご紹介します。
入学者数は、1年次への新入学が761名、3年次への編入学が32名の、合計793名です。その793名の中の女子学生は、112名で比率は14.1%となっています。本学は他の工学系学部と同様に、永らく女子学生比率は低い値にとどまっていて、1つの学年で女子学生が100名を超えたのは、6年前が初めてでした。以降、引き続いての100名突破であり、嬉しい限りです。でも、女子学生の数はもっともっと増やさなければと思っています。それは、多様な視点や優れた発想を取り入れて、均衡のとれた、そして持続発展可能な社会を形成し、維持していくためには、産業の中核を担う理工学の分野での女性の活躍をもっともっと広げて、物の見方や考え方、価値観などの多様性を社会に取り込んでいかなければならないからです。
近い将来には、本学における女子学生比率を、せめて20%程度にまで引き上げたい、そのためには、本日入学された女子学生の方々に、理工系女子として社会で活躍してもらい、良きロールモデルとなっていただき、その姿、その成果を基に、もっともっと多くの女子学生に本学を知ってもらい、チャレンジしてもらいたいと望んでいます。
ここでは、男女共同参画の観点から、女子学生のことを特出ししましたが、男子学生の方々にも、将来、社会で大いに活躍してもらいたいのは当然です。それを強く望み、大いに期待しています。

また、入学者793名の中には、留学生の方が28名いらっしゃいます。言葉はもちろんのこと、文化や制度、習慣などが大きく異なる環境で修学されることは、邦人学生とはひときわ異なる大変さが伴うだろうと思います。そのようなことにひるまず、本学を志望され入学された方々の勇気と決断を称えるとともに、教職員一丸となってサポートする所存です。加えて、学生同士でも、国籍を越えた仲間として刺激し合い、シナジー効果を生み出す積極的な交流を、期待しています。

さて、本学に入学された皆さん、いよいよこれから大学での学びが始まります。その学びは、しかし、高校までのものとは大きく異なり、戸惑われることが多いかもしれません。そこで、この機会に、大学での学びに向かうための心構えの一つとして、いろいろな分野に通じる段階的学修法、「聞思修(もんししゅう)」、の重要性についてお話したいと思います。この「聞思修(もんししゅう)」というのは、‘聞く’の音読み「聞(もん)」、‘思う’の音読み「思(し)」、‘実践する修行する’の意の「修(しゅう)」を繋げた言葉です。

まず、高校でのこれまでの学びを要約すれば、すでに完成している枠組みの中で、先人の教えを、教室での授業を通じて学び取ることが主だったと思います。このような知識の習得の仕方は、「聞慧(もんえ)」、すなわち、聞き取ることによって「知識」を得ようとする方法と言われています。そして、この段階で得られた知識は、悪い時には「聞きかじりの知識」となってしまい、また、何の措置も施さなければ、「単なる情報」として仕舞い込まれて日常の活動と切り離され、身につく学びとはなりにくいと言われています。

目の前の課題の答えは一つとは限りません。さらには、答えは存在しないかもしれません。また課題そのものも、多くは、少なくとも現時点で未知であり、それをどのようにとらえて解いていくかも、自明ではありません。とくにこれからの社会では、皆、そのような場面にしばしば直面します。そのようなとき、「聞慧」の段階、聞き取ることだけによって「知識」を得ようとする段階、に留まっていてはなりません。その段階を超えなければなりません。
すなわち、「聞慧」よって得られた知識、その知識を基盤として、次の段階、さらにその次の段階、それは、「思慧(しえ)」、耳で聞いた知識をもう一度自分の中で思考し直して「高度化した知識」とする段階、さらにその先の、「修慧(しゅうえ)」、その高度化した知識を実践に供して、「具体的な知識」として把握する段階、これらを通して、自分自身の思考・行動を展開しなければなりません。

この三段階、‘聞く’、‘思考し直す’、‘実践する又は修行する’を繋げたものが、「聞思修」の示していることなのです。これは学びの方法の一つで、いろいろな分野に通じる段階的学修法といわれています。この「聞思修」の考え方は非常に古く、1,200年も前の伝教大師 最澄も、比叡山での信徒の教育に取り入れていたそうです。

この方法こそ、皆さんにとって大いなる力となるはずです。今の皆さんには、その大いなる力を一日も早く、我が物とすることが必要です。

受け身の姿勢のままでは、真の学問を身につけることはできません。皆さんは、いずれ日本のみならず、世界のリーダーとして、様々な分野で活躍することになると思います。そのためには、「聞思修」の考え方に則り、思考・行動を伴った展開を通じて、自らが専攻する分野の基礎と応用に係る知識や技術を深く身につけ、併せて、一見、関係のないように見える他の幅広い素養や周辺知識をも、教養として貪欲に吸収し、それらを基に、事柄を多元的に判断し、物事の本質を見抜く力量を、備えていって欲しいと思います。

次いで、ここからは、皆さんにアドバイスを2つ。

まず、今更ながらの話でしょうが、早く友達を、それも多くの友達を、作ってくださいということです。
高校時代を含めて、これまで、友達と呼べるつながりは数多くあったと思いますが、大学に入学されて、ある意味、個人個人の自由裁量に任される生活になると、その自由さが、行き過ぎた独自性、ときには無益な排他性に向ってしまって、孤独感に襲われてしまうということがあったり、環境も含めいろいろな状況変化ゆえに、慣れないことが多くて対処法が見いだせず、精神的に落ち込んでしまったりといった状態になる可能性が危惧されます。

さまざまな問題を解決する上で、適正で健全な社会性を育むことが重要です。そのためには、人との繋がりを、よい意味で、維持し深めていく必要があります。
皆さんには、これから互いに切磋琢磨する同期の仲間が790人以上もいるのです。早く、多くの繋がりを作るようにしてください。その繋がりこそが、いろいろな課題にあなたが直面した時、その解決法の探索に効力を発揮する場合が必ずあります。そしてそのような繋がりは、大学の課程を終わって、社会に出たときに、貴重な財産となるはずです。また、同じ学年同士の繋がりとは別に、クラブ活動やサークル活動などでの繋がりは、学年を超えた、さらに、それぞれの専門分野を超えた、重厚なものとなるはずです。そのような繋がりは、学生生活の間にこそ作り上げることが可能で、他では得られないような、生涯の財産の一つです。ぜひ、早く、多くの繋がりを作り上げてください。

二つ目のアドバイスは、少し具体的で、有って欲しくないことに関係します。
本学では、永い間の、学生の方々の学修成果に関するデータが、蓄積されており、それを、学生の修学指導やアドバイスに活用しています。それによると、初年次(1年生、2年生の時)の成績や単位取得状況が、卒業時の成績、単位取得状況に、強く、明確に相関するという結果が出ているということを、お伝えしたいと思います。すなわち、初年次での学修への取組状況が、その後、卒業時まで、影響を強く残すことから、初年次での学修は非常に大切ですよ、ということです。
また、そんなに多くはありませんが、成績不振に陥る学生のほとんどは、初年次の時の授業出席率が芳しくない、というデータもあります。特に、初年次の5月中頃から6月を境として出席率が急速に悪くなって、成績不振に陥るというケースが見受けられます。どうか、学びに向かう姿勢を早く定着させてください。とくに、授業の欠席は、特別な場合を除き、禁物です。
自分の限界は決して自分では定めず、知的な格闘に意味を見出す学生生活を送ってください。この3月に日本で引退を発表した、大リーグプレーヤーの`鈴木一朗'選手は、確か、引退記者会見で、「自分が夢中になれることを見つければ、壁に立ち向かうことが出来る」と、言っていたと思います。

ところで、冒頭に、ご来賓のお一人として、本学学園活動後援会会長の 長友貴樹 調布市長をご紹介しましたが、そのことに関連したお話をします。
これから皆さんが学生生活のほとんどを過ごされる地元調布市と本学は、この地域をより良いものとしていくために、市や市民の皆様とのいろいろな交流を通じて協力し合いましょうという、友好協力協定を結んでいます。皆さんの大学での活動を、いろいろな面から支援していただいている「電気通信大学学園活動後援会」の会長を調布市長にお願いしているのも、その一環です。
その学園活動後援会は、皆様の保護者の方に会員となっていただき、お納めいただいた会費によって運営されています。そして、国立大学法人としての制約のために、大学としては対応できない様々な部分を補完するという、貴重な役割を担っていただいています。学生の課外研修や就職説明会、各種の学生行事やサークル活動など、また、一部の大学行事への補助や、会員学生を対象とした、海外派遣や大学院合宿ゼミへの支援など、さまざまな場面での経済的支援です。
ただ、後援会事業の性格上、会員の学生のみを支援対象とせざるを得ません。ぜひ、多くの学生が支援を受けられるようにしたいものです。そのために、まだ未加入の保護者の方にはぜひ、会員として参加していただきたいところです。学生の皆さんは、保護者の方とよく相談して下さるよう、お願いいたします。

さて、本学は、1918年に、現在の東京都港区に創設された無線通信士の養成機関、「無線電信講習所」がルーツとなっています。この講習所は、設立から30年近くの間は私立でしたが、その後、逓信省、今の総務省へ無償譲渡されて官立化し、次いで文部省へ移管され、1949年に、「電気通信大学」の名で大学として再出発しました。すなわち、本学の名称にある「電気通信」は、ルーツである無線通信士養成機関の名称の「無線電信」を引き継いだものです。

このような由来の名称ゆえに、本学は、電気および通信の狭い分野に特化した大学と思われがちですが、開学後の高度経済成長と、それと歩を同じくする高度情報化社会の進展に合わせて専攻分野の拡充がなされ、現在に至っています。

ご存知と思いますが、今では、情報・電気・通信を核としつつ、電子工学、物理工学、材料科学、生命科学、光科学、さらに、ロボティクス、計測制御、メディアなど、情報理工学の基礎から応用までの、広範で先端的な分野の教育と研究を進めています。

このように、1918年創設の機関をルーツとしていることから、昨年2018年に本学は、創立100周年記念の式典と祝賀会を、産学官の各界から大勢の出席を得て、盛大に執り行いました。そして今年2019年は、いよいよ次の節目に向けて出帆する年です。が、それがなんと、新しい元号、「令和」の時代が、始まる年でもあります。

そこで結びとして 申し述べたいと思います。
本学は、新元号「令和」の時代が始まるこの記念すべき年、新しく迎えた793名の皆さんの参加を得て、人類の持続的発展に貢献する知と技の創造と実践を目指し、次なる節目に向けて出帆いたします。

以上、皆さんのご入学をお祝いすると共に、皆さんが、これから充実した楽しい学園生活を送り、大きな成功を掴むべく成長してくださることを祈念して、私の歓迎の言葉といたします。

重ねて、電気通信大学へのご入学、誠におめでとうございます。

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