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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
石田 研究室

分子性磁性体の応用、希土類錯体の応用

所属 大学院情報理工学研究科
先進理工学専攻
メンバー 石田 尚行 教授
所属学会 日本化学会、アメリカ化学会、応用物理学会有機分子・バイオエレクトロニクス分科会、分子科学会、電子スピンサイエンス学会、日本中間子科学会、錯体化学会
研究室HP http://ttf.pc.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

石田 尚行
Takayuki ISHIDA
キーワード

分子性磁性体、遷移金属錯体、錯化合物、希土類錯体、ランタノイド、磁気物性、X線結晶構造解析、純粋有機ラジカル強磁性体、単分子磁石、分子内包による磁性の制御、キラル磁石、磁気物性の光制御

研究概要

純粋有機ラジカル強磁性体の約半数を発見

当研究室は、電気通信大学の特質を考え、エレクトロニクスに関わる化学の分野に取り組んでいる。研究の中心は「分子性磁性体の応用」と「希土類錯体の応用」である。
かつての有機化合物の常識は、科学の発展によって次々と覆されてきた。有機化合物の電気伝導性が解明され、有機超伝導材料も発見されるようになると、次には有機化合物が強磁性体(=磁石)となり得るかという命題に関心が移ってきた。
古来より有機化合物は磁気的に反磁性、というのが常識だった。電子は1つ1つが磁性を持つが、原子同士が結合する際に逆向きの磁性同士が対になって打ち消し合い、分子全体として磁性を持たなくなるからである。
こうした常識を覆すように、わが国のグループが磁石になる有機物質を発見した。続いてフランスのグループも別の物質で発見し、当研究室は3番目の発見者となったのである。これまで、純粋有機ラジカル強磁性体の約半数を当研究室が見つけている。いずれの強磁性体も磁性を失う温度(転移温度)が低いので、その向上が課題となっている。
当研究室では、主に有機合成的手段を用いて物質を合成し、低温1・8K(ケルビン)までの磁気物性の温度変化を測定する。そして、興味深い物性を示し、単結晶が得られたものは、X線結晶構造解析を行い、磁気物性と構造との関係を理論的に明らかにするという手法をとっている。

遷移金属錯体の研究

一方、当研究室は、有機化合物と遷移金属イオンの複合物質(錯化合物)の研究にも力を入れている。「錯化合物」は金属の力と有機化合物の力を兼ね備えたもので、いわば有機無機のハイブリッドである。最近、有機ラジカルとコバルト(II)イオンから錯形成した化合物で世界最大の保磁力52 kOe(キロエルステッド)をもつ磁石を開発することができた。保磁力とは磁気ヒステリシスの幅であり、この物質が磁化を失いにくいという特性にあらわれる。
さらに、ラジカルと銅イオンからなる、ナノメートルサイズのチューブ状空洞をもつ錯体も合成した。この空洞にハロゲン化アルカリや水を導入すると、強磁性的相互作用が起こった。特に水の場合には、6倍磁化しやすくなり、水を抜くと元に戻るという可逆性も発見された。

ランタノイド錯体の応用

当研究室では希土類(ランタノイド)錯体の応用の分野にも力を入れている。遷移金属イオンとランタノイドイオンを含む錯体から、巨大な磁気モーメント(スピン量子数27/2)をもつ錯体分子の合成に成功した。
同様な錯体から、低温で「単分子磁石」の性能を有するものを開発した。これはたった1つの分子が磁気ヒステリシスを示すという、従来の磁石とは一線を画する磁性材料である。ナノテクノロジーの一翼を担うものとして、超高密度情報記録媒体への応用が期待される。
また、ランタノイドは発光素子としても重視され、磁性を光で操作するのに重要な物質と考えられている。

アドバンテージ

磁気記録媒体の開発

単分子磁石となるDy2Cu錯体(Dyはジスプロシウム)

当研究室は、材料合成や開発および理学的色彩の強い物性測定装置を備えている。これに、産業的応用面の装置(プロセスや蒸着やシリコン関連の装置)を備えた産業界と協力することによって、有機あるいは有機無機ハイブリッド材料を利用した磁気記録媒体などを共同開発していくことが可能である。

電子スピン共鳴装置

提供できる材料は、錯化合物、有機ラジカル物質群である。
錯化合物では、ナノテク領域のメモリーデバイスとして期待される単分子磁石を数多く現有している。有機ラジカルは、最近電池材料にも応用されるようになって注目を集めている。ラジカルは不安定であって、産業への応用に不向きであると考えられがちだが、分子設計次第では空気下高温でも安定に存在できる。

今後の展開

キラル磁石、分子包接による磁性制御

キラル磁石、分子包接による磁性制御といった面でも、当研究室は新しいフロンティアを開拓しつつある。有機・分子性材料を基調とすれば、溶ける磁石、光る磁石、透明な磁石など、旧来の無機材料にはない複合機能性材料が開発できる。例えば、光磁気スイッチングデバイスの開発へ展開する。

X線結晶構造解析装置
超伝導量子干渉磁束計
研究・産学連携
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