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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
久保木 研究室

新しい金属加工方法の創造と実践、
数値解析支援法による実プロセスの適正化

所属 大学院情報理工学研究科
知能機械工学専攻
メンバー 久保木 孝 教授
所属学会 英国機械技術者協会、日本機械学会、日本軽金属学会、日本材料学会、日本塑性加工学会、日本鉄鋼協会
研究室HP http://www.mt.mce.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

久保木 孝 Takashi KUBOKI
キーワード

板材成形、薄肉大口径管、管曲げ加工、矯正加工、金属加工法、材料特性予測、残留応力、スピニング加工、精密加工、精密曲げ、塑性加工、塑性変形解析、引抜棒・管、複合材、マイクロ加工、ミクロ組織

研究概要

塑性加工を使った金属加工方法の研究

金属を加工する方法の1つとして、材料に大きな力を加えて変形させる塑性加工法がある。この加工法はものを削り出してつくる機械加工と比較すると、生産能力が高く低コスト、かつ最終製品の部材の強度も増すことが特徴だ。ただ、塑性加工技術の獲得には多くの経験と勘が必要で、一朝一夕に習得できるものではない。
そこで、当研究室では、塑性力学に基づく視点からまったく新しい加工法を研究し、誰でも簡単に金属加工が行えるように、数値解析と実験を重ね、原理の解明と産業界へ技術をフィードバックする応用研究を行っている。

既存の精密加工プロセスを独自手法で最適化

 

小松製作所との共同研究「管曲げ加工における断面寸法向上」では、パイプ(管)を曲げるときに生じる扁平化を抑制する方法を開発した。パイプを曲げる装置にテーパーを付けて挟み込むことで管の側面に圧力をかけ、配管の寿命を向上させることを目的に、従来の7〜9%程度の扁平化を2%にまで低減した。この方法は薄肉管や長尺なものでも利用できる。
アマダとの共同研究「板の精密曲げ」では、板を曲げたときに実際の曲げ角度よりも少し小さくなるスプリングバック現象について、結晶塑性を考慮した均質化法(東北大学寺田教授開発)と当研究室独自のアルゴリズムを使い、高精度に予測し、加工の精度を上げることに成功した。
ディムコとの共同研究「大口径薄肉円管のスピニング加工法」では、これまでのさまざまな解析により生み出された加工法のガイドラインを策定し、従来は難しかった大口径500mm、薄肉0・3mm円管のスピニング加工実現に貢献した。
こうして開発した独自手法により、従来と比べて精密加工のコストと時間を大幅に削減し、工程を最適化できるようになった。

新しい塑性加工法の創造

当研究室では、既存の加工法の最適化手法に加えて、新しい塑性加工法の開発も行っている。
その1つが「精密冷間引抜き加工」だ。従来、細い伸線を作るにはさまざまなサイズの穴型ダイスを用いて引抜加工を行うことが多かったが、この方法では穴型ダイスを使わずに、2つの凹ロールダイスにらせん運動をさせることで、フリーサイズの伸線加工が行える。
ほかにも、ダイスを使って飲料缶のような先が細くなっているものを整形する回転口絞り加工では、ダイスに逃げと呼ばれる空間を作ることで従来の口絞り率10%を40%にまで向上させた「逃げ有りダイスを用いた回転口絞り加工」などがある。

新しい数値解析技術の適用と開発

現在、金属加工には潤滑剤として油などが使われているが、これがどのような作用をしているのかは解明されていない。そこで、塑性変形の解析に加え、潤滑剤の流体挙動数値解析を試みている。既に、油の代わりに高圧水を利用して地球環境にやさしい加工法を実現できるよう、数値解析の適用と開発も行っている。

アドバンテージ

多くの経験を有し、効率的・スムーズな研究開発が可能

当研究室では、新日鉄住金(旧住友金属工業)、アマダ、小松製作所、ディムコなどの企業と共同研究を幅広く行った経験を有し、各企業が抱える実際の問題点と向き合いカスタマイズしながら解決策を見つけ出してきた。
小松製作所との共同研究「管曲げ加工における断面寸法向上」、アマダとの共同研究「板の精密曲げ」などは、現場の依頼に応じて実際に開発した手法だ。
また、当研究室では数値解析と実験の両方を研究室内で行えるので、実験では観測が困難な現象を数値解析で考察でき、逆に数値解析ではなかなか現れにくい現実の作用を実験で証明できることから、より効率的・スムーズな研究を行うことが可能だ。これは大きなアドバンテージである。

国内外の大学との交流・連携

当研究室は数値解析を得意とする他大学や研究機関と親密な関係を築いており、相互に有用な情報をやりとりできる関係にある。
例えば、イギリスのウェールズ大学とは10年以上の交流があり、数値解析の手法について意見を求めることができる。結晶塑性の分野では東北大学と、流体の解析では北海道大学とそれぞれ連携している。このような連携を持てることで、お互いに不明な点を解消し、双方の知見を友好的に利用できることも大きなアドバンテージである。
久保木の研究開発、理論解析が認められ、2002年、2004年、日本塑性加工学会論文賞、2003年、Wire Association International 鉄部門銀賞を受賞した。

今後の展開

複合材と医療機械の分野で、経験と知見を活かしたい

当研究室では、現場に即した塑性加工の研究を継続することで、引き続き産業界に貢献していきたいと考えている。また、次の展開として、複合材への対応を進めたいと考えている。複合材はハイテク材料などにも利用されているが、加工が難しく塑性加工法は未だに確立されていない。そこで、久保木はこれまでの経験と知見を活かし、この問題に対処したいと考えている。既に、白山工業との共同研究「複合材のせん断加工」がスタートしている。
その他、医療機器の塑性加工分野にも応用したい。現在の医療機器は精密機械加工で製造されているものが多い。例えば、医療ロボット用自在鉗子などは、いたるところに微細加工された部品が使われている。この分野で当研究室の精密な塑性加工法が活用できれば、高価な医療機器の製造コストが抑えられ、より急速に普及するのではないかと、久保木は自分の経験と知見の可能性を感じている。

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