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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
マトゥッティス 研究室

粉粒体の動き、粒子の微視的な振る舞いを
物理学的にシミュレーションプログラム化

所属 大学院情報理工学研究科
知能機械工学専攻
メンバー MATUTTIS Hans-Georg 准教授
所属学会 Deutsche Physikalische Gesellschaft、日本物理学会、日本流体力学会、Humboldt-Foundation Japan East、JSPS-Club
研究室HP http://www.matuttis.mce.uec.ac.jp/
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掲載情報は2015年8月現在

MATUTTIS Hans-Georg
キーワード

粉粒体、粒子、微視的振る舞い、多角体、連続体、連続理論、履歴依存性、摩擦係数、シミュレーション、コンピュータシミュレーション、液状化、2D、3D

研究概要

粉粒体の動き、粒子の微視的な振る舞いをコンピュータシミュレーション化

最近の異常気象による局地的な豪雨は、川を氾濫させるだけでなく、地盤の崩落や地すべりを引き起こし、大きな問題となっている。地すべりが起こるのは、降り続いた大量の雨が地盤に浸み込み、地盤が緩むことが原因だと考えられている。しかし、同じ地盤、同じ降雨量の地区でも、わずか数十メートル離れただけで、地すべりや崩落が起こる所と起こらない所がある。ところが、この2カ所にどのような違いがあるのかは、現在でも解明されていない。これを解明するためには、土地を構成する砂などの粉粒体の動き、粒子の微視的な振る舞いを理解する必要がある。
当研究室では、この粉粒体の謎を解き明かすことに主眼を置いて、研究を行っている。
実は、今のところ粉粒体に関して、流体のような連続理論は存在しない。それは、粉粒体には流体にはない履歴依存性(この存在は19世紀以来知られている)の問題、粒子の形に依存する問題があるからだ。例えば、水などの流体を漏斗(ろうと)に流す場合には問題なく流れていくが、砂などの粉粒体を流すと、漏斗が詰まって途中で流れなくなり、漏斗の中にどんどん砂が堆積する。つまり、流体の理論を粉粒体に当てはめるわけにはいかず、新たな理論を構築する必要があるのだ。

連続体の動きを並列処理技術でシミュレーションする

粉粒体の動きに摩擦係数が影響することは周知のことだが、粉粒個々の摩擦係数が一定ではないことが大きな問題だ。例えば砂で山を作った場合、圧力の分布は、山の最終形状だけでなく、砂が積み重なる様子にも依存するため、均一な摩擦係数にはならない。そのため、一定の摩擦係数を代入してしまうと、現実とはまったく違った結果が出てくる。こうした理由で、この研究が始められてから100年も経過しているにもかかわらず、決定的な理論が確立されていないのだ。
この難題に取り組むために、当研究室では、粉粒体の粒子の微視的な振る舞いに着目して、その連続体の動きをコンピュータの並列処理技術でシミュレーションする研究を行っている。2Dのシミュレーションでは、乾燥した粒子に加えて、最近、(有限要素法による)流体を含めることに成功している。

3Dシミュレーション

アドバンテージ

より実験に近い結果をコンピュータシミュレーションで実現

多角形のペレット

当研究室のシミュレーションプログラムのアドバンテージは、物理学に対応しているということだ。履歴効果をとらえることができる唯一のシミュレーション方法は、原則的に、離散要素法である。すなわち、粒子を通して行う粉粒体のシミュレーションである。
粉粒体の堆積強度(および安息角)は、丸みのある粒子では小さく、細長いまたは凸凹の粒子では大きくなる。したがって、マトゥッティスの研究目的は、より良く、より正確なシミュレーション方法を開発し、それを実験・検証することである。しかし、実験で粉粒体における粒子を測定することは非常に難しい。そこで、当研究室ではレーザーを使ってこの測定を行っている。
また、当研究室では、より現実に近いシミュレーションを行っている。この手のシミュレーションでは球や四角を使う場合があるが、現実の砂は球や四角ではないので、当研究室では多角形によるシミュレーションを行っている。現在では、多角形を60個ぐらいまで使ったシミュレーションを実現している。

プログラミングテクニックと並列処理技術

さらに、マトゥッティスは、過去にスーパーコンピュータの研究に携わった経験があり、シミュレーションに関する並列処理の構築も行っている。高精度のコンピュータシミュレーションを行うためには、プログラミングテクニックだけでなく、複数のコンピュータを効率よく利用するための、並列処理技術も必要になるからだ。
しかしながら、粉粒体のシミュレーションには、既存の並列処理手法はあまり有効ではない。シングルプロセッサを2プロセッサにしたときには問題なく効率が上がるが、8プロセッサにした場合には25%程度の効率しか実現できなかった。つまり、プロセッサ数を8倍にしても、わずか1・5倍の効率しか得られないという結果だ。それだけ粉粒体のシミュレーションにおけるコンピュータの並列処理は難しいということだ。

多角形のペレットを漏斗に流す実験

今後の展開

土砂崩れや液状化の原因を粉粒体の分野から追究したい

近い将来、流体と粒子が相互作用する現実的なプロセスでのシミュレーションを実現することが、当研究室の目標である。そして、それを活用して、土砂崩れや液状化の原因がわかるシミュレーションを作り、災害対策に貢献していきたいと考えている。

粉粒体の3Dシミュレーション

また、現在は2Dのシミュレーションでもかなり苦労しているのだが、コンピュータの性能も急激に上がってきていることから、20年来の夢であった粉粒体の3Dのシミュレーション実現にも光が見えてきた。3Dのシミュレーションは、2Dのシミュレーションの確立なしにはできないので、これをしっかり作り上げ、これをベースにレイヤを加えることで作る。ハードルは高いが、将来、ぜひ実現したいと考えている。

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