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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
佐藤(寛) 研究室

複雑な社会問題に最適解を与える「進化計算」のアルゴリズムを追究

所属 大学院情報理工学研究科
情報学専攻
メンバー 佐藤 寛之 准教授
所属学会 米電気電子学会(IEEE)、米コンピュータ学会(ACM)/遺伝と進化計算(SIGEVO)、進化計算学会、情報処理学会、人工知能学会
研究室HP http://hs.hc.uec.ac.jp
印刷用PDF

掲載情報は2017年3月現在

佐藤 寛之 Hiroyuki SATO
キーワード

ソフトコンピューティング、計算知能、進化計算、最適化、多目的最適化、意思決定支援

環境に適応した個体が生き残り、そうではない個体は淘汰とうたされるという、生物の遺伝と進化の過程をモデル化した「進化計算」が、近年多方面で活用され注目されています。例えば、新幹線の“顔”となる先頭車両の形状や、航空機の翼の形状といった設計に進化計算が使われています。

モデル不要な汎用な手法

人間が介在せずに、最適化された解を自動で見いだせる進化計算は、適用先を選ばない汎用はんよう的な手法です。数学的なモデルは必ずしも必要なく、問題についての解の優劣の判断ができれば使えるため、適用先の領域の知識がなくても解を求められるのが特徴です。従来の最適化手法の多くは、それぞれの問題に特化したアルゴリズムを用意する必要があり、問題が変わると同じアルゴリズムは使えないという欠点がありました。
生物の進化では、環境適応度の高い個体が親として選択され、子をもうけるため、次の世代は前の世代よりも平均的に適応度の高い集団になります。この親選択と交配が繰り返されることで、優秀な遺伝子が次世代に受け継がれる仕組みになっています。

設計図を掛け合わせる

ここで「遺伝子」とは単に情報(データ)であり、自動車なら「設計図」に当たる部分です。そうとらえると、優れた二つの遺伝子の掛け合わせから優秀な子が生まれるように、優れた設計図同士を掛け合わせれば、最適な自動車の設計パターンが得られることが分かるでしょう。情報を進化させるだけで、熟練の技術者のスキルなどに頼らずに最適な設計が行えるのです。これが、進化計算を自動車の設計に応用した際のイメージです。
佐藤寛之准教授は、現在、大変関心が高まっているこの進化計算の分野において、より複雑な問題を扱うためのアルゴリズムを研究しています。従来の進化計算では、例えば自動車の例なら、「燃費性能」と「加速性能」の二つの目的を高める最適解を見つけ出すことが精いっぱいでした。しかし、実際の自動車の設計では、「衝突安全性能」や「制動性能」、「騒音性能」といった、そのほかの多数の指標も考慮して性能のバランスを決める必要があります。

「多数目的最適化問題」を扱う

そこで佐藤准教授は、目的の数が10個程度まで増えても進化計算を適用できる新しいアルゴリムを開発しました。社会の多くの問題が、三つ以上の目的を持つ「多数目的最適化問題」であるといえます。この最適化問題を進化計算で扱えるようになれば、「進化計算の適用範囲が広がり、社会への波及効果も大きくなる」と佐藤准教授は期待しています。
その手法の一つは、従来あった「解の支配」という解の比較基準を、多数目的最適化問題向けに一般化したもので、解の優劣を決定しやすい形に制御する「解の支配領域制御」と呼ぶアイデアです。これにより、複数の指標を勘案した精緻なランク付けが行えるようになり、最適化できる目的の数を2個から10個程度へ増やすことができました。

これに加えて、佐藤准教授の研究室では、問題に制約がある状況下でも、進化計算を効果的に適用できるアルゴリズムも開発しています。従来は制約条件を満たさないデータはほとんど排除していましたが、有用なデータについては条件外でも考慮した上で進化計算を行い、最適化させることで、従来は埋もれていたデータも活用できるようになりました。問題によっては、計算時間を従来の半分に短縮することも可能だそうです。すでに実応用への展開も進めています。

問題と解法とを対応づける

新しいアルゴリズムを開発するだけでなく、日々、世の中に提案されている大量の進化計算のアルゴリズムを比較し、整理する課題にも取り組んでいます。最終的には、「どの問題にどのようなアルゴリズムが適しているかといった、最適化問題とその解法の対応関係を明らかにしたい」と考えています。

進化計算は、人工知能(AI)技術の一つである「計算知能」の枠組みとしてとらえることも可能です。生物の仕組みを生かし、環境に適応させて情報をどんどん進化させていくことができる進化計算は、産業界のモノづくりから社会問題の解決、さらに我々の日常生活に至るまで、あらゆる領域で大きな指針となるに違いありません。進化の過程では、常に“最新の姿”が最も適した形なのです―。

 

【取材・文=藤木信穂】


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