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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
渡邉 研究室

光物理と最新のIT技術等を融合させた
光コンピュータと精密計測の研究

所属 大学院情報理工学研究科
基盤理工学専攻
メンバー 渡邉 恵理子 教授
所属学会 応用物理学会、日本光学会、社団法人レーザー学会、情報処理学会、画像センシング技術研究会、日本知財学会
研究室HP https://thetis.f-lab.tech.uec.ac.jp
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

渡邉 恵理子
Eriko WATANABE
キーワード

光情報処理、光相関、光干渉計測、ホログラフィ、デジタルホログラフィ、3次元計測、光メモリ、光コンピューティング、画像認識、ホログラフィックメモリ、マルチメディア検索、外観検査、病理検査、細胞情報解析

研究概要

光物理とIT技術を融合

コンピュータを取り巻くハードウェア環境は著しい高速・大容量化が進み、CPUは32ビットから64ビットへ、シングルコアからマルチコアへ、メモリもSDRAM時代には内部転送スピードが1GB/秒だったものが、最新のDDR3メモリでは17GB/秒まで高速化している。しかし、CPUやメモリを高速化してもハードディスクからのデータ読み出し時間の高速化が進んでいないことが、コンピュータの処理速度のボトルネックになっているのだ。
このボトルネックを解消するためには、旧態依然としたコンピュータの仕組みを打ち破る、まったく新しいコンピュータの仕組みが求められている。その1つが光コンピュータだ。この新しい光技術を利用することで、数100Gbps相当という超高速転送スピードと相関演算を同時に実現できる。
当研究室では、物理としての光技術と最新のIT技術や情報処理技術、制御技術とを結びつけて、光コンピューティングや新しい光計測システムを構築していくことを目的に、現在、3つのテーマで研究を進めている。

ナノオーダーで位相計測する新顕微鏡システム

高精度・高速位相計測装置

1つ目は、先端医療分野やデバイス検査等をターゲットにした、生体細胞等の透明な媒質をナノオーダーで位相計測する新しい顕微鏡システムの研究だ。ホログラフィーが3次元のものの形を一瞬でとらえることができるという特徴等を利用して、微小物体の特徴量を抽出できる機能を活かそうと考え、この研究を始めた。
具体的には、光波の複素振幅分布を光の干渉計測を利用して取得し、これを3次元化する。この手法を用いると、空間分解能は600nm程度が得られ、光路長(こうろちょう)分解能2nm程度から数波長3μmを超える変化までを可視化できる。これにより、従来の手法では得られなかった細胞の厚みに比例する情報を取得できることも大きなメリットだ。この超高精度・高速位相計測装置は、再生医療での生きている細胞の品質管理や癌検査など最先端医療分野での利用や、タッチパネル等のガラスや樹脂などの透明基板の検査への応用が考えられている。

光コンピューティングを使った超高速・大容量画像検索エンジン処理システム

2つ目は、光の演算機能を使った超高速・大容量画像検索エンジンの研究だ。巨大データベースの全件検索や、大規模な動画データファイルとの照合など大容量のデータを対象とした照合を高速に行うことが可能である。特に近年ターゲットにしている応用として、インターネット上の高速動画検索がある。インターネット上には法整備されていないままの動画コンテンツが大量にアップロードされている。
それを調べるために、光の超高速・大容量の画像検索技術を使って、大量の画像を短時間に検索するというものだ。具体的には、動画の中から特徴画像の重要な部分のみを独自のアルゴリズムにより抽出して白黒画像に符号化する。一方、あらかじめ符号化した画像データをデータベースに光データとして登録しておき、この2つを重ね合わせて光を透過させた時に特徴が一致すれば強い光が検出される。
この特性を使って動画を検索する。この作業を光コンピューティングを使って高速に行えることが、当研究室の画像処理システムの大きな特徴だ。

光機能デバイスの設計や計測

ホログラフィック光ディスク型光コンピュータの内部

3つ目は、この光コンピューティングに関する光機能デバイスの計測や設計を行う研究だ。その成果は、後に述べるように当研究室のアドバンテージにもなっている。

アドバンテージ

位相計測技術により非接触・非侵襲で透明物体を解析

当研究室の光技術を使った計測技術の特徴は、従来にない新しい光技術の手法を利用しており、前処理も不必要で、非接触・非侵襲で作業が行えることだ。そのため、たとえば移植する細胞そのものを検査することが可能で、生きている細胞の品質管理に革新を起こすと自負している。
自分の細胞を培養してそれを活用する再生医療の現場では、培養細胞は染色すると移植できなくなる。現在は非接触・非侵襲で検査できる技術が確立されておらず、移植用と検査用の細胞を別々に培養し、移植する細胞には検査していない細胞を使わざるを得ず、多少のリスクが伴う。

画像検索エンジン、ホログラフィックメモリ、光コンピューティング

渡邉の超高速大容量画像検索エンジンは、すべて光で記録し、光で演算と照合が非常に高速にできることが特徴だ。このシステムにはハードディスクは存在せず、ホログラフィックメモリと呼ばれる、記録媒体の厚さ方向まで記録できる3次元記録媒体に対応した専用メモリを利用している。
渡邉が考案したシステムでは、CDと同様の形状のディスクにホログラフィック材料を利用して、データディスク上でダイレクトにレーザー光線を干渉させることで、1秒間に数100Gbps相当のデータと照合できる。既存のコンピュータとはまったく違う光技術を利用して、既存のコンピュータのボトルネックを解消できることが大きなポイントだ。
このような光コンピューティングを使った研究では、渡邉は世界のトップを走っている。

小型の第4世代マウントサーバ、クラウドサービス

この技術をベンチャー事業化し、渡邉の設計したものを制作し、関連するソフトウェアを開発する仕組みができ上がり、現在では、小型の第4世代マウントサーバの画像検索システムが完成しているので、よりコンパクトで低価格・高性能の装置を今後も研究開発していく予定だ。
また、この研究開発から派生したソフトウェアの完成度が高いことから、現在数社にクラウド環境でサービスを提供している。将来的には、現在開発中の光コンピュータにその画像検索装置を組み込むことで、より短時間で大量の画像を処理できるようにしていきたい。

産学官の連携と支援

FARCO (Fast Recognition Optical Correlator) IV

これらの研究は、いくつかのプロジェクトの採択を受け、精力的に進められている。「高精度位相計測による細胞情報解析と細胞識別」は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」の採択を受け、2012年度から支援が開始された。2013年度には、公益財団法人JKAにおけるRing Ringプロジェクトの機械振興事業の助成金に採択され「位相計測システムの研究開発補助事業」に関する研究開発を行っている。
また、画像検索エンジンの応用研究としては、映像、ゲーム、静止画、音楽コンテンツに関する16以上の企業と協力し、2010年度、2011年度の2年連続で、知的財産権侵害対策ワーキング・グループ等侵害対策強化事業として自動検索技術を用いた、知的財産権侵害対策の調査を行っている。

今後の展開

キラーアプリケーションを見つけたい

渡邉は、光の研究者、サイエンティストとして、軸足を光物理に置きながら、エンジニアとしてその応用方法をいつも考えている。これからも、光物理の専門家ならではのキラーアプリケーションを1つでも多く見つけられればと思っている。
また、現在研究中のナノサイズの位相計測技術や、画像処理、光コンピューティングを使った超高速・大容量画像検索システムの製品化についてもさらに発展させたいと考えている。