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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
千葉 研究室

航空宇宙システムの最適な設計法を考案

所属 大学院情報理工学研究科
機械知能システム学専攻
メンバー 千葉 一永 准教授
所属学会 電気電子学会、米航空宇宙学会、日本航空宇宙学会、日本機械学会、進化計算学会
研究室HP http://www.di.mi.uec.ac.jp
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掲載情報は2017年3月現在

千葉 一永 Kazuhisa CHIBA
キーワード

航空宇宙工学、設計情報学、進化計算、データマイニング、情報可視化

国産初のジェット旅客機「ミツビシ・リージョナル・ジェット(MRJ)」は2015年、初飛行に成功しました。“日の丸ジェット”が大空を舞ったのは半世紀ぶりのことで、日本の航空機産業の新時代の幕開けと言われました。MRJの開発は三菱重工業グループが手がけていますが、千葉一永准教授は学生時代からその主翼の設計に貢献しています。

複数の設計要素を考慮

設計情報学の概念

千葉准教授は、複数の設計要素を考慮した上で最適化できる、計算機を使った新しい設計手法を高度化しました。例えば、航空機なら流体や構造、機体の安定性、騒音などのさまざまな要素を満たした設計が計算機上で行うことができます。従来は、熟練の技術者が経験と勘によってそれぞれの要素を検討し、試作を繰り返していました。
多分野融合最適化(MDO)と呼ばれるこの設計法を導入すれば、モノづくりの工程を10分の1程度に短縮できます。最適化と言っても、ベストな単一解を導くというより、「すべてのパターンを網羅した最適解の集合が求められる」と千葉准教授は説明します。いわば最適解のデータベースであり、ここからデータマイニング(マイニング:発掘)の手法を使って、設計要求に合致する解を抽出できるのです。

それだけでなく、潜在的な設計情報をすべて計算機上で明文化できるため、要素間の相関関係からより良い設計指針を引き出せる可能性もあります。「膨大な設計パターンから新たな情報を発掘できれば、イノベーションが生まれるきっかけになる」と千葉准教授は考えています。こうした分野を千葉准教授は「設計情報学」と名付けて提唱しています。

JAXAの実機にも適用

特筆すべきは、この手法が学術研究にとどまらず、実機にいち早く適用されたことです。東北大学の博士課程のころ、千葉准教授は三菱重工のMRJ開発プロジェクトチームの一員として、同大のスーパーコンピューターを使って約8カ月間、設計最適化のための計算を行い、その成果がMRJの主翼の形状設計に生かされました。これは当時、大規模なMDOを適用した世界初の試みでした。
さらに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とは、音速を超える次世代航空機の「静粛超音速研究機」の開発を進め、主翼の形状を最適設計した結果、課題だった騒音を低減できることを2015年に実証しました。現在は、JAXA宇宙科学研究所が研究を進める、液体酸化剤と固体燃料からなる低コストで安全なハイブリッド(複合型)ロケットシステムの設計などに関わっています。
また、JAXA航空技術部門と共同で、航空機の飛行時に発生するバフェット(衝撃波振動)の発生メカニズムの研究も行っています。

小型リージョナル機主翼MDOのための空力・構造モデル
鳥の風切羽を模した複数枚フラップ

流体力学が出発点

JAXA静粛超音速研究機MDOで得られた1形態の圧力分布

千葉准教授は東北大の流体力学の研究室の出身で、もともと航空機やロケットなどの宇宙輸送機が飛行する際の空気の流れを、数式によってモデル化する研究を行っていました。しかし、研究を深めていくうちに、単に計算機の中で流体を扱うだけでなく、この手法を道具として実際の機体の形状設計に生かしたいと思うようになったそうです。
そのころ、米航空宇宙局(NASA)が遺伝的アルゴリズムを用いた「進化計算」を応用した最適化の手法を検討しており、千葉准教授はこれを高度化した忠実度の高い(high-fidelity)MDOを考案し、世界で初めてこれを航空宇宙分野に適用しました。現在では、米ボーイングが航空機の設計に採用しているほか、米スタンフォード大学を中心に欧米の大学も活発に研究しています。

鳥のように翔ぶ、航空宇宙機の開発へ

研究室内にある計算機室の一部

航空機の形状は、50年ほど前からほとんど発展していないそうです。今後、千葉准教授は「ちょっとした工夫で、性能をガラッと変えられるようなアイデアを生み出したい」と考えています。発想の原点はやはり「鳥」で、飛行に最も重要な役割を果たす鳥の風切羽かざきりばねの仕組みを、航空機に応用できないかと思いをめぐらせているそうです。
将来の数十年先に向けては、現在、別々に開発されている航空機と宇宙輸送機とを一体化した、シンプルで効率的な「革新的な航空宇宙機」の設計に挑戦したいそうです。飛行機でそのまま宇宙に向かう――そんな時代が、いつの日かやって来るのでしょうか。

【取材・文=藤木信穂】

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