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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
安達 研究室

IoTの実現に向けた無線通信ネットワークの研究開発

所属

先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター(AWCC)

メンバー

安達 宏一 准教授

所属学会

米電気電子学会(IEEE)、電子情報通信学会

研究室HP

http://www.awcc.uec.ac.jp/adachilab/

印刷用PDF

掲載情報は2022年6月現在

安達 宏一
Koichi ADACHI
キーワード

ワイヤレス通信、IoT、センサーネットワーク、無線リソース割当、周波数共用、エッジコンピューティング、機械学習、無線電力伝送

あらゆるモノがネットワークにつながるIoT(モノのインターネット)時代には、地球上にさまざまなセンサーが張り巡らされると言われています。それによって、例えば、川の水位などの環境モニタリングや、高齢者の徘徊・転倒などの見守り、農作物の管理、工場の稼働状況の把握といったさまざまなシーンにおいてセンサー情報の活用が見込まれています。

伝送するビット数を30%向上

このようなIoTシステムでは、多数の端末が少量のデータを周期的に送信します。端末をあらゆる場所に設置できるようにするにはバッテリー駆動が必須であり、そのためには低消費電力動作と長距離伝送が求められます。こうした条件を満たす通信規格に、省電力広域ネットワーク(LPWAN)があります。その中でも、自前で基地局を設置できる「LoRa変調方式」を採用したLoRaWANは、導入コストの安さなどから広く使われています。
IoTの実現に向けた無線通信ネットワークの研究を進める安達宏一准教授は、このLoRaWANにおいて、新たに「パケット型インデックス変調(PLIM)」技術を提案しました。PLIMは周波数チャネルと送信タイミングの組み合わせにより、従来のデータパケットに加えて追加の情報ビットを伝送できる手法です。
これによって、既存のLoRa WANの通信規格に変更を加えることなく、1パケットで伝送できる情報ビット数を30%以上増やすことができます。つまり「端末のバッテリー消費量を上げずに伝送可能なデータ量を増大できる」(安達准教授)手法であり、複雑な処理を行えない安価な端末を用いる場合でも、より多くのデータを伝送できるようになります。実装時の課題となる、端末とゲートウェイ間で生じるクロックの同期ずれを補償する技術も開発済みで、PLIMの実現可能性を実機で評価しました。

パケット型インデックス変調(PLIM)の送受信機構成

PLIMによる1パケットで送信可能な情報ビット数の増大効果

パケット型インデックス変調(PLIM)の実機実装

CO濃度から室内の換気状況を把握

また最近では、新型コロナウイルス対策として、室内に複数のセンサーを配置して二酸化炭素(CO)濃度などを観測する環境モニタリングの実証実験を行いました。CO濃度や気温、照度、騒音などの環境データを継続的に集約して解析することで、人の流れと室内の換気状況の相関関係が見いだせるそうです。
しかし、センサーの設置場所によっては、特定のネットワークに瞬間的にアクセスが集中してしまう輻輳が生じる問題がありました。そこで安達准教授らは、商用携帯網(LTE)や無線LAN網、省電力広域ネットワーク(LPWAN)などの複数の無線規格を各センサー端末に搭載し、必要に応じてこれを切り替えることによって、無線環境やネットワーク環境に依存しない安定したデータ収集を可能にしました。 一方、IoT通信では複数のシステムが同一の周波数を共用しますが、その際にシステム内外で干渉が起きたり、パケット衝突が頻繁に発生したりといった問題も起こります。安達准教授はLoRaWANに初めて深層強化学習を導入し、ゲートウエイで観測可能な情報のみを用いて、端末側に負荷をかけずに周波数資源を効率的に割り当てる手法を考案しました。シミュレーションの結果、周波数の利用効率を従来比2倍に高めることができました。併せてシステム内だけでなく、システム外の干渉を考慮した周波数資源の割り当て法も提案しています。

MECの処理時間を短縮

三つ目のテーマは、複雑な処理を短時間で行うモバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)に関する研究です。画像処理や拡張現実(AP)、音声認識、ビデオストリーム分析といったモバイルアプリケーションの処理には高い計算能力が必要です。そこで、モバイル端末の近くにMECを置いて適切に処理し、結果を送り返すことで、モバイルアプリケーションの高速な応答を実現するのです。
このMECの高速応答のためには、通信資源と計算資源の効果的な割り当てが不可欠です。安達准教授は最短経路を求めるジョンソンアルゴリズムを用いた新しいスケジューリング手法を提案し、これによって処理時間を従来比4分の1以下に短縮させることに成功しました。ユーザ数が増えた場合でも、適切な動作により処理時間の効率化が可能だといいます。

ドローンを使ったIoT通信も

安達准教授はこのほか、無人航空機(UAV、ドローン)を用いた低消費電力の無線通信ネットワークに関する研究なども手がけています。いずれのテーマもIoTの実現に欠かせない技術であり、「高速通信を目指さずに、より簡易な端末で低速でもいいから多くの機器を効率よくつなげることで、IoTは一気に普及するだろう」と見通しているのです。

【取材・文=藤木信穂】