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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
須藤 研究室

AIによる新しい無線通信手法の提案

所属 大学院情報理工学研究科
情報・ネットワーク工学専攻
メンバー 須藤 克弥 助教
所属学会 米電気電子学会(IEEE)、電子情報通信学会
研究室HP http://www.ainet.lab.uec.ac.jp/
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掲載情報は2020年4月現在

須藤 克弥 Katsuya SUTO
キーワード

リソース割当方式、レイヤレス無線方式、エッジコンピューティング、エナジーハーベスティング、周波数共用、遠隔操作、対災害ネットワーク、分散ネットワーク、ディープラーニング

第5世代移動通信システム(5G)、さらにその先のBeyond 5Gに向けて、ユーザ端末(エッジ)側で計算処理するエッジコンピューティングの本格運用が望まれています。これまでユーザ端末は高性能化の方向で進化し、その結果、消費電力は増加の一途をたどってきました。
しかし、今後は身体に装着できるウェアラブル端末や環境エネルギーを利用して稼働するセンサ端末など、小型で低消費電力の機器の普及が見込まれるため、利用者付近で分散処理するエッジコンピュータの活用が一層求められているのです。

一人ひとりに基地局と計算機を

将来の無線システムのあり方について、須藤克弥助教は、一人当たり1無線基地局と1計算機を整備する構想を提唱しています。現在の4G基地局は、多いときには数百台規模の端末を同時に接続しています。また、インターネットを介して、離れた場所に設置されたサーバにその都度データを送って計算処理しているため、通信の遅延などが避けられない状況になっています。

私達が目指す次世代無線ネットワーク

こうした問題を解決するため、須藤助教は「いずれは計算機能付きの基地局を導入すべきだ」と考えています。一人ひとりに個別の安定した無線環境を与えることができれば、その人に合った最適な計算資源を提供できるようになります。人工知能(AI)を活用することによって、ネットワークの機能や構成を自律的に決定でき、各資源を柔軟に制御できるため、全体としても効率良く周波数を利用できるのです。

多数の計算機を備えた基地局を提案

次世代の無線基地局

須藤助教がエッジコンピュータの一つとして理論提案しているのは、ミリ波通信機を備え、かつ100個の小型サーバを敷き詰めた円柱型の無線システム(小型基地局)です。基地局と計算機の機能を一体化したこのシステムを利用すれば、1基地局において100個の端末と同時接続させられるだけでなく、大量の計算機で即時処理するため、ビックデータ解析や深層学習などの大規模な並列計算を遅延なく実行させることができます。

ユーザ指向型無線アクセス方式

これに付け加える形で提案するのが、AIを使って、ユーザの利用アプリに応じた必要な通信性能を提供する「ユーザ指向型」の無線アクセスの基盤技術です。過去のトラヒックパターンから未来に必要な通信品質を予測し、ユーザの個々のアプリを遅延なく実行させるための通信資源と計算資源を割り当てる新しいアクセス方法です。

電波環境をマッピング

ユーザ参加型電波環境センシング

一方、別のアプローチとして、周波数を有効利用して通信を高速化させるために、実際に電波が通信空間にどのくらいの強度で伝搬しているのかを調べる電波環境センシングの研究も進めています。AI技術の一つである深層学習を使い、少数の観測データから、観測エリア全体の電波環境のマップを構築する手法を開発しました。

ユーザが持っているスマートフォンをセンサとして活用し、通信時に得られる受信電力と位置情報から、統計処理によって空間上の電波強度を把握できるようにしました。現在は専用の高価な機器が使われていますが、AIによってユーザ端末から得られる数少ない情報からでもマッピングできるため、新たな機器を導入せずに低コストに運用できるのです。

自動運転にも応用

さらに須藤助教は、このセンシング技術を自動運転に応用する研究にも乗り出しました。現在の自動運転技術では、車載カメラを使って360度すべての方向を撮影し、撮影した高画質の仮想現実(VR)映像を遠隔地へ送り、その映像を見ながら遠隔操作することによって安全性を担保しています。しかし、その際に電波環境が悪いと、映像を送信できなかったり、送信できても遅れてしまったりという問題があり、最悪の場合は交通事故を引き起こしかねない状況でした。

遠隔操作のための無線環境適応型ストリーミング

そこで深層学習を使って、電波環境の良し悪しに関係なく、安定した画質の映像を送れるストリーミング技術を開発しました。自動運転車から低画質の映像を送ることで電波環境が悪くても安定的な送信を可能にし、いったんそれを基地局に送って超解像技術による畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によって高画質の映像に変換し、遠隔操作者に送信するという仕組みです。こうした工夫によって、将来、自動運転はより安全に運用できるようになるはずです。

「AIを駆使して、無線通信を今よりももっと使いやすい形に変えていきたい――」(須藤助教)。このような新しいアイデアを生み出すことが理論研究の醍醐味なのです。

【取材・文=藤木信穂】

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