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国立大学法人 電気通信大学

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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
早瀬 研究室

カーボンニュートラルに向けた未利用熱の効率回収と気液二相流の可視化

所属 i-パワードエネルギー・システム研究センター
メンバー 早瀬 修二 特任教授
所属学会 応用物理学会、日本化学会、電気化学会、高分子学会、アメリカ化学会(ACS)、アメリカ材料学会(MRS)、アメリカ電気化学会(ECS)
研究室HP http://www.hayase.lab.uec.ac.jp
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掲載情報は2022年6月現在

早瀬 修二
Shuji HAYASE
キーワード

高効率太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、円筒形太陽電池、鉛フリー、錫ペロブスカイト太陽電池、総発電量、フレキシブル、軽量、シースルー、分散発電、スマートグリッド

2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」が宣言され、温室効果ガスの排出量が極めて少ない再生可能エネルギーの一つである、太陽光発電の需要が一層高まっています。当初はかなり高かった発電コストも年々下がっており、2030年には太陽光発電が原子力発電のコストを下回り、すべてのエネルギーの中で最も安い「主力電源」になるとの予想もあります。
これに加えて、日本では大規模な太陽光発電システムを設置できる適地が限られているため、設置場所の制約を受けない、柔軟(フレキシブル)で軽量、かつ高効率の太陽電池の開発が求められています。エネルギーシステムも大規模発電による集中型システムから分散型システムへと移行しつつあり、居住地に近い場所で小規模の発電を行うといったニーズが増えています。

軽量で設置が簡単

こうした背景があり、早瀬修二特任教授は円筒形太陽電池の開発に取り組んでいます。円筒形太陽電池とは、市販のフレキシブル太陽電池の光電変換セル部分を、蛍光灯のような細長い円筒形のガラス内に挿入して完全封止したものです。長さは30センチメートルから120センチメートルまで4種類のサイズがあり、それぞれ数十本程度並べて幅1メートルくらいの大きさの太陽電池モジュールに作り込むのです。
現在最も普及しているシリコン太陽電池と円筒形太陽電池を比較してみましょう。シリコン太陽電池は平板型でかなり重いですが、円筒形太陽電池の重量はその3分の1以下と軽いため、運搬しやすく設置も簡単です。また、隙間があるので風や雪に強いというメリットもあります。狭い場所なら、モジュール型ではなく1本ずつ垂直に立てて設置することも可能です。既存のフレキシブル太陽電池と比べても、フィルムで大面積を封止する必要がないため、耐久性を向上できるなどの利点があります。

開発した円筒形太陽電池モジュール

発電量は平板型の1.5倍

太陽光のエネルギーを電力に変換するエネルギー変換効率は、シリコン太陽電池モジュールが20%程度、既存のフレキシブル太陽電池が10%程度です。しかし、円筒形太陽電池の最大の特徴は一日の総発電量が多いことです。平板型太陽電池は一方向からの光しか利用できません。一方、垂直に設置した円筒形太陽電池なら、朝方から夕方までの入射角の異なる光を有効に光電変換できるだけでなく、直接光に加えて散乱光もとらえられるため、平板型の約1.5倍の発電量が得られるといいます。さらに、後述するペロブスカイト太陽電池を円筒形モジュールに使えば、「一日の総発電量は変換効率が30%の平板型太陽電池と同等になる」(早瀬特任教授)そうです。
早瀬特任教授は、産学連携による国家プロジェクトでこの円筒形太陽電池モジュールを試作し、実証実験を行っています。円筒形太陽電池は一方向のみに曲げられるセミフレキシブルなため、ビルや集合住宅の壁面、工場の屋根などの曲面にも導入できます。電気自動車のルーフ部分に搭載すれば、車を走らせながら充電することも可能でしょう。また、農地に設置し、発電と農業を両立するソーラーシェアリング(農電併産)市場も今後、拡大が見込まれており、ここにも円筒形太陽電池の採用が進みそうです。「このような従来の太陽電池にはなかった幅広い用途に導入しながら、円筒形太陽電池を普及させたい」と早瀬特任教授は考えています。

円筒形太陽電池の作製方法

鉛をスズに置き換える

そのために、早瀬特任教授が円筒形太陽電池の実証実験と並行して進めているのが、塗布型のペロブスカイト光電変換層の開発です。前述したように市販のフレキシブル太陽電池でも円筒形太陽電池は作れますが、シリコン太陽電池並に効率が高く、さらに塗るだけで作製可能な光電変換膜が実現できれば、円筒形太陽電池において初めて低コスト化と高効率化、フレキシブル性を両立できるようになります。
ペロブスカイト結晶構造を持つペロブスカイト太陽電池は、フレキシブルで軽量、かつシリコン太陽電池に匹敵する25%以上の高い効率を持つ次世代太陽電池として実用化が期待されています。溶液を塗布するだけで作製でき、その際のプロセス温度は100度と、1500度の高温が必要なシリコン太陽電池と違って低温で作製できるのが特徴です。将来は「ロールtoロール」の印刷プロセスで大面積に製造できるため、コストを安くすることが可能です。
従来のペロブスカイト太陽電池はRoHS指令でも使用が禁止されている有害物質の鉛を含むことから、早瀬特任教授は鉛を毒性の少ないスズに置き換えた、鉛フリーのスズペロブスカイト太陽電池を提案しています。一般に鉛を使う方が効率は高くなり、スズを使った結晶は不純物によって欠陥が多くなるという課題がありますが、早瀬特任教授はスズに微量のゲルマニウムを混ぜるなど工夫し、これまでにスズペロブスカイト太陽電池として世界最高水準である14%近い効率を達成しました。早瀬特任教授は「いずれ鉛と同等の20%台の効率にまで高め、環境に優しい太陽電池として実用化を目指す」ことを目標に掲げています。

鉛を含有した従来のペロブスカイト太陽電池の課題と解決方法

タンデム型太陽電池にも採用

これに加えて、2種類の異なる太陽電池を重ね合わせるタンデム型太陽電池の研究も進めています。二つのセルで発電することで、単層太陽電池の理論限界を超える35%以上の高効率化が可能になるといわれています。特に小型で高効率の太陽電池が求められる電気自動車への導入が見込まれており、自動車メーカーはすでに実証実験も行っています。このタンデム型太陽電池にフレキシブルで軽量、高効率のペロブスカイト太陽電池を採用すれば、太陽電池の産業利用が一気に進むと期待されているのです。
このように、早瀬特任教授は円筒形太陽電池からスズペロブスカイト太陽電池、さらにこれを用いたタンデム型太陽電池まで、民間企業と協力しながら次世代太陽電池の基礎研究と実用化研究を幅広い角度から進めています。

動画

研究概要

実験風景

【取材・文=藤木信穂】